All Chapters of あなたと紡ぐ永遠の愛は奇跡でした。: Chapter 31 - Chapter 40

58 Chapters

chapter31

✱ ✱ ✱「お疲れ様でした。お先に失礼します」 今日一日の仕事を終えた私は、帰る準備をした。「……ふう」 今日は、なんだか疲れた。 仕事が大変だったっていうのもあるけど、一番は藤堂さんのことを考えてしまっていたから。  藤堂さんは、私に想いの丈をぶつけてきた。 だから私も、想いの丈を自分なりにぶつけた。  藤堂さんはとても冷たい目で私を見ていたけど、私は課長が好きだから。だから自分なりに気持ちを伝えたつもりだ。 私課長を好きな気持ちは誰にも負けないし、誰よりも課長のことを理解しているつもりだ。  だからこそ、課長を藤堂さんには取られたくないって思った。「……はぁ、帰ろうっと」 私は複雑な気持ちを抱えながら家に帰った。「ただいま」 誰もいないリビングには、静けさだけが残る。「疲れた……」 そのままベッドに直行した私は、疲れていたせいか、いつの間にか眠りに落ちていた。 その日私は、夢を見た。 その夢の内容は、課長と私が結婚していて、かわいい子供もいて、その子供と三人で仲良く暮らしてる夢だった。  その夢の中にいる私はとても幸せそうで、課長も幸せそうだった。 みんな幸せそうに笑っていて、本当に幸せな家庭なんだって思った。  そんな夢を見ていたからか、いつか課長とこんな幸せな家庭を築けていければいいな……なんて思っていた。「……んん……?」 何時間寝ていたかなんて、全く分からない。 ただ覚えているのは、キッチンからいいニオイがしてきたことだけだ。「……んっ」 ふと目を覚まして時計を見ると、時計の針は八時過ぎを示していた。「八時……か」 ……ん? 八時……?  えっ……! やばっ!完全に遅刻だ! 急いでベッドから飛び起きて、リビングに向かうと、そこにはーーー。「えっ……?」 えーっ!? な、なんで……!?「な、なななっ……」 ど、どうして……?!「おはよう、瑞紀。起きたか?」 朝からニコッと爽やかな笑みを浮かべる、目の前の男性は、課長だった。「え?……な、なんで?」    なんで課長がここにいるの!? えっ、ちょっと待って! 一体、何がどうなってんの!?  確かに目の前にいるのは課長で、しかも呑気にコーヒーなんて飲んでいるし。「まあまあ、座ってコーヒーでも飲もう、瑞紀」「はい……じゃなくて! なんで
last updateLast Updated : 2025-06-26
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chapter32

 課長って、運転する時こんな表情するんだ……。なんだか、素敵すぎる。  課長の新たな一面を見つけたけど、課長と二人きりの中で、会話もなくただゆったりとしたクラシックだけが流れていた。「……あの、課長?」「ん?」「これから、どこに行くんですか?」 私がそう聞くと、課長は「秘密って言ってんだろ。着いてからのお楽しみだ」と言ってはぐらかす。「ええ……気になります」「わかった、わかったよ」「ええ。教えてくださいよ」  わざわざ仕事休んでまで、どこに行くんだろう……?「ダメだ。着いてからのお楽しみだ」「……課長って、意外と意地悪なんですね」 「そんな訳じゃないよ。ただびっくりさせたいだけだ」「びっくり……?」 え?どういうこと……? びっくりって?「ま、気楽に待ってて」「……は、はい」 その後は車内では、ただ音楽だけが流れていた。「ん、着いたぞ」「え? あ、はい……」 車のドアを降りると、そこには……。「うわあ……。キレイ……!」 畑一面のキレイなヒマワリ畑があった。「だろ? ここ、私の秘密基地なんだ」 ヒマワリ畑を眺めながら、課長が私に視線を向ける。「秘密基地……ですか?」「ああ。小さい頃、よく家族とここに来たんだ」「そうなんですか?」 なぜ私に、ここを?「ここさ……いつか本当に大事な人が出来た時、その人を連れてこようって思ってたんだ」「……え?」 課長は、ヒマワリ畑の中を静かに歩き出していく。「え?課長?」「瑞紀も来いよ」「あ、はい」 私は課長の後を着ていくように、歩き出す。「……なあ、瑞紀」「はい?」「俺は、まだまだ未熟だ。……でも瑞紀を想う気持ちだけは、誰にも負けないつもりだ」 繋がれた手の温もりを感じていると、そのまま課長と目が合う。「俺もすごく強い人間じゃない。でも瑞紀を幸せにしたいと思ってる。……だから、ずっとそばにいてほしい」 課長は、私をギュっと抱きしめてくれる。「……誰にでも、弱いところはあります」「え?」「私にだって、弱いところはあります。……だからそれも含めて、私はずっと課長のそばにいたいです」 私の気持ちは、やはり同じだ。 「私は課長の弱いところも含めて、全部受け入れます。……私はそんな課長の全てが、好きなんですか?」 課長の全てを受け入れて、私はずっと
last updateLast Updated : 2025-06-27
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chapter33

* * *「みーずき」「あ、沙織、おはよう」「おはよう。今日は朝から元気そうね」 沙織はそう言ってデスクに座る。「そうかな? いつも通りだよ」 そう答える私に、沙織は「アンタ、昨日仕事休んでたよね? 有給だっけ?」と、私を見る。「うん、そうだよ。有給だよ」「しかも昨日、課長は仕事で出張でいなかったみたいだし……ね?」「あ、そ、そうなんだ……」 課長は、昨日出張してたってことにしてたんだ。 でも沙織にはバレてないみたいだから、よかった。 なんか、バレたら色々問い詰められそうだし……。「アンタたち、何を隠してんの?」 沙織にそう言われて、「えっ!? な、なにが!?」と動揺してしまった。「とぼけてもムダよ? ごまかしてもダメだからね?」「えっ……!」 う、ウソッ! もしかして昨日のこと……バレてる!?「もう白状しなさい。 アンタ、昨日課長と一緒にいたんでしょ?」「えっ。な、なんで……?」「アンタが仕事休んで、課長が出張なんておかしいと思ったのよ。 で、私気になって部長に聞いたのよ。そしたら部長、課長は出張になんて行ってないって、言ってたわよ?」 えっ……? き、聞いたの!?「それで確信したの。アンタと課長は、一緒にいるんだなって」 沙織ってそこまで行動しちゃうの……。なんか沙織が怖くなってきた……。「やっぱ一緒だったんだ。アンタたち」「……はい」 沙織にウソはつけないと実感した私は、全てを正直に話すことにした。「……なるほどねぇ」 沙織は課長にチラッと視線を向けると、ニヤリと笑った。「なるほどって……?」 沙織は私を見ながら、「それはずばり、"プロポーズ"じゃない?」と言ってきた。 「……え?」 ええっ!? ぷ、プロポーズ……!?「つまり課長は、アンタにプロポーズしたのよ」「……プロポーズって、そんなんじゃないって」  まさか、本当に……? あれ本当に、プロポーズだったのかな……? でも"結婚しよう"なんて言葉は、一言も言われなかったけどな。「そうよ。アンタ前、私に言ったでしょ。いずれ一緒になるつもりだって言われたって」 私はそう言われて「うん……言ったけど」と頷いた。 それがどうかしたの……?「それって簡単に言うと、アンタと結婚したいってことでしょ?」「……そうなのかな」「そうよ。 
last updateLast Updated : 2025-06-27
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chapter34

「私はアンタの幸せを願って、そう言っただけ。……アンタのことを、本当に愛してくれる人が見つかったってだけで、私は嬉しいんだからね」「……沙織は、幸せじゃないの?」 私がそう聞くと、沙織は「幸せよ。でも私より、アンタの幸せの方が大事だって、前にも言ったでしょ」と言ってくれる。「……沙織、本当にありがとうね」 私が沙織に微笑むと、沙織は「私はね、アンタに幸せになってほしいのよ。確かに結婚することも大事かもしれないけど。 一番大事なのは、アンタを心から愛してくれる人がいることなのよ」と笑ってくれていた。「……え?」「私はね、アンタのことをずーっと見てきたから分かるのよ。……アンタはたくさん泣いて、たくさん傷ついてきたから、恋に臆病になってるのよ」 臆病……。そうだ、私はずっと臆病だった。 恋愛で傷付いては泣いて、そんな恋愛を何回もしてきたけど、今回は違う。 私は課長に出会って、強くなった気がする。「……私ね、本当はね」「ん?」「私本当は、課長を好きになるのが怖かったんだ。課長と一緒にいるうちに惹かれてる自分がいて、でも日に日に課長を好きになっていく自分が、すごく怖くなって……。ずっと一緒にいたいのに、辛くなりそうで……不安だったんだ」 沙織に思いの丈を話すと、なんかスッキリした気がした。 ためてたものが吐き出されて、楽になった気がする。「……そんなの、当たり前じゃないの」「え……?」「人間誰しも、恋に傷つかない人なんていないのよ。……それぞれが、それぞれの悩みを抱えて生きてるんだから」 そうだよね……。それぞれの悩みがあって、当然だよね。「沙織もあるの?悩みとか」「当たり前じゃない。私だってたくさん傷ついてきたし、たくさん泣いたもの。……言ったでしょ?恋に傷つかない人なんて、いないって」「……うん、そうだよね」「私だって辛い恋、してたし。……それでも好きな人とだったら、一緒にいたいと思うのよ」 私だって課長と、一緒にいたい。「アンタが課長を好きなように、私も彼が好きなのよ。……私も彼の全てを受け入れたいって、思ってるし」「そっか。 そうだよね」 沙織だって私と同じ人間であって、同じ一人の女性なんだもん。 沙織にだって辛い恋の一つや二つ、あるよね……。「アンタと私って、本当に似た者同士ね」「え?」「実は私さ、今気にな
last updateLast Updated : 2025-06-28
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chapter35

「瑞紀、悪いんだけど、コンビニ行って適当になんか買ってきて欲しいんだけど」「え?」「ね、お願い。 今日営業部の人たちと、これから会議があるの。お昼食べる時間がなくて」 沙織にコンビニに行ってきてほしいとお願いされたので、私は「分かった。行ってくるね」と席を立った。「ありがとう。簡単に食べれるおにぎりかサンドイッチでお願い」「わかった」 私はお財布を手に、コンビニへと向かった。「……あれ?」 コンビニに向かう途中、営業部の村木さんの姿を見かけた。「村木さん……?」「ん? やあ、佐倉さんか。こんな所で何してるんだい?」「えっと……おつかいです。友人に今から会議だから、コンビニで何か買ってきてと頼まれまして」「そうなんだ。僕もこれから、コンビニ行く所なんだ」 村木さんは優しい微笑みを浮かべている。「そうだ。佐倉さん、よかったら一緒に行かない?」「え?」 どうしよう? でも今なら、沙織のことを聞き出すチャンスかもしれない。「せっかくだし。どう?」「はい。ぜひ」 私と村木さんは、コンビニまでの道のりを二人で歩きだした。「あの、村木さん」「ん?」 私は気になってることを、村木さんに聞いてみることにした。「村木さんは……その、倉本沙織のことどう思ってますか?」「え? 倉本さんのこと?」「はい。……仲がいいと、聞いたので」 私がそう言うと、村木さんは「倉本さんことは、僕ももちろん好きだよ」と答えた。「……え?」 まさか、それって……!?「でもそれは、いい"仕事仲間"としてだけどね」「……え?」 仕事仲間って……? え?村木さんは、沙織のことが好きなんじゃないの?「倉本さんのことは、仕事仲間としては好きなんだけどね」「……けど?」 けど、なんだろう……? なんか気になるな……。「僕の恋愛対象には、見れないかな」 私は村木さんを見ながら、「どうしてですか?」と問いかける。「あ、いや。見れないっていうか……確かに好きではあるんだけど、それは恋愛としてじゃなくて"仕事仲間"としてってことだから。 恋愛はまた別だよ」「つまりそれって……沙織は村木さんの恋愛対象にはならないってこと、ですか?」 私がそう聞くと、村木さんは「……まあ、そんなところかな」と濁すように答える。「……そうですか」 これを沙織に言ったら、
last updateLast Updated : 2025-06-28
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chapter36

  村木さんは「……まあ、そうだね」と口にした。「だから、少しでいいんです。……沙織の気持ちも、察してあげていただけませんか?」「分かってるよ。 僕ももう少し、考えてみるつもりだから」「……そうですか。ありがとうございます」 村木さんだって沙織だって、本当は色んな想いを抱えてるんだな……。それは私だけじゃない、みたいだし……。「そういう佐倉さんはさ、恭平とどうなの?」「え……?」 村木さん今、課長のこと"恭平"って言ったよね? もしかして村木さん、課長と知り合いなの……?「もしかして恭平と、上手くいってないの?」「あ、いえ……そういう訳では」 上手くいってない訳じゃないと思う。「恭平はね、僕の高校時代からの親友なんだ」「えっ、そうなんですか!?」 まさか村木さんが、課長と親友だったなんて……。ビックリだよ。「ああ。恭平とはもう、十五年くらいの付き合いになるのかな。 だからアイツのことなら、何でも分かるんだよ」「……そうだったんですか」 課長と村木さんが、親友同士とは……。「佐倉さん、恭平は今すごく幸せなんだと思うよ」「え?」 課長が幸せ……?「恭平ね、僕に言ったんだよ」「……言ったって、何をですか?」 そう聞くと、村木さんは私を見て「佐倉さんが、俺の最後の恋になるかもって言ってたんだよ」と微笑んだ。「……え?」 課長が、そんなことを……? 嬉しいな。 でも私だって、同じ気持ちだ。課長との恋を、私の最後の恋にしたい。「恭平は本当に、佐倉さんのことが好きなんだろうね。今まで以上にあんなに誰かを好きになってるのって、佐倉さんが初めてだからね」「……そうなんですか?」「恭平を見てれば分かるよ。恭平は佐倉さんのことが、本当に大切なんだろうね。……だから最後の恋に、しようと思ってるんだよ」 そんな話をしている内にコンビニに到着した私たちは、店内に入り買い物をしていく。 沙織のためにツナマヨのおにぎりやミックスサンド、お茶などを購入し、再び村木さんと合流した。「買えた?」「はい」 再び歩き出すと、村木さんは「恭平はさ、藤堂と上手くやっていけなかったから。……多分まだ、少しだけ根に持ってるんだと思うよ」と私に言った。「藤堂さんのこと……ですか?」「ああ。藤堂との結婚生活、結局上手くいかなかったからね」 村木
last updateLast Updated : 2025-06-29
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chapter37

「じゃあね、佐倉さん。 またね」「はい。お疲れ様です」  村木さんは私に手を軽く振って、エレベーターに乗り込んでいった。 私も次に来たエレベーターに乗り込み、六階のボタンを押した。 誰もが辛い思いをして、たくさん傷ついてきたととしても。 もしそれが叶わない恋だったとしても、それをバネにして真っ直ぐに生きている私たち。 好きだから笑って、好きだから泣いて。好きだからたくさん傷ついて。 好きだから辛くなって、好きだから一緒にいたいと思って。 その気持ちの一つ一つが、私にとって大切なもので、その気持ちを絶対に今度も忘れちゃいけないと思った。 誰かを愛する気持ちは、その人だけの特権だ。* * *「んんっ……」 その日の夜、私はとある夢を見た。 それは課長と私が結婚式を挙げてる様子で、二人で幸せそうに笑っていた夢だった。「んっ……」 その後、私はゆっくりと目が覚めた。 なんだ……やっぱり夢だ……。 これが夢じゃなきゃいいのに……なんて贅沢なことを思う。「おはよう瑞紀。起きたか?」 そう声をかけられて、「あ……はい」と返事をした。 え……。ええっ……?「お、おはようございます……課長」 ちょっと待って……。なんで課長がここにいるの!? なんで?どうして……!? 慌てる私に、課長は「どうした?」と顔をのぞき込んでくる。 「……な、なぜ課長がここにいるんですか」  だってここは、私の家だよね!?  ちゃんとカギだって掛けてるし、部屋になんか入れる訳がないのに……! なのにどうして、課長がここにいるの!? もしかして私、玄関のカギ閉めるの忘れちゃった……!?「……おい、何を言ってるんだ、瑞紀」「はい?」 課長から「ここは俺の部屋だ。よく見てみろよ」と言われ、慌てて周りの景色を見渡すと、周りにはグレーのと白い天井が見えている。 そして白いソファーが置いてあるのが見える。「……あれっ」 本当だ……。ここは私の家じゃない……。「やっと気がついたか。 お前は一体ここで何時間寝るつもりなんだ」「……すいません」 そ、そんなつもりじゃなかったんだけど……。「ったく……昨日はどれだけ飲んだんだ。 しかもあんなになるまで」「は、はい……?」 え?どういうこと……? あんなになるまでって……何? そんな私に、課長は「お前…
last updateLast Updated : 2025-06-29
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chapter38

 課長が私の顔を覗き込んでいる。「……迷惑じゃない、かなって」「迷惑だと思ってるなら、そんなこと言わないさ」「……課長」「瑞紀、俺の前では、遠慮なんてしなくていい。もちろん遠慮する必要もない。……せめて俺の前では、素直になっていいんだ」 課長に抱きしめられるだけで、ドキドキする。「……本当に、いいんですか?」「いいんだよ。 ありのままの瑞紀が好きなんだ」「ありがとうございます。……でももう少しだけ、考えさせてください」 今すぐには、答えなんて出せない気がした。「ああ。いつまでも待ってるよ」「ありがとうございます」「遠慮する必要なんて本当にないからな。瑞紀がそうしたいと思う答えを、俺はちゃんと受け止める」「……はい」 課長は本当に優しすぎる。課長がこんなに優しいから、私はいつも課長に甘えてしまう。「そうだ。これ俺の部屋の鍵」「……え?」 課長から、家の鍵を渡される。「それ渡しておくよ。もし答えが決まったら、俺の部屋に来い。……そこで歓迎してやる」「はい。 分かりました」 課長と同棲って、なんかすごいな。「大丈夫。俺は瑞紀を信じてる」 私も、課長のことを信じてる。 信じたいし、信じようと思った。「愛してる」 言葉を発する前に塞がれた唇は、甘くも優しく、情熱的だった。「あの……課長は私のこと、どのくらい好きですか?」「ん?」「やっぱり、なんでもないです」 私は何を変なことを聞いてるんだろう……。「そんなに気になるなら、教えてやるよ」「え? きゃっ……!」 課長は私を、ベッドに押し倒した。 ソファーの上に押し倒された私は、そのままジィーッと課長を見つめていた。「……あの、課長?」「ん?」「なんなんでしょうか……この状況は」 課長を見つめていると、課長から「見て分かるだろ?」と聞かれる。「いや、分かります。 分かりますけど……」「けど?」「なぜこの状況に、なるんでしょうか……?」 こうなるなんて全く思ってなくて……。なぜこうなってるのか……。「だってさっき、聞いただろ?どのくらい好きですか?って」「いや、それはそうなんですけど……」 聞いただけなのに、なんでこの状況に……?「だから、身体で教えてやる。 言葉じゃ伝わりにくいしな」「えっ!?あ、あのっ……!」 か、身体で教えてやるって…
last updateLast Updated : 2025-06-30
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chapter39

✱ ✱ ✱「瑞紀、そろそろ仕事に行くぞ」「はい」 課長とこんな風に一緒にいられるのは、私たちが"運命"って証拠なのかな? 私は課長に出会えたこと自体が"運命"だって信じてる。 きっと課長に出会えなければ、私は絶対仕事にばかり集中して、周りが見えなくなっていたかもしれない。 今だって課長と一緒にいると、周りが見えなくなってしまうけど、それでも会社ではちゃんと公私分けているつもりだ。 確かに課長はカッコイイし、誰にでも優しくて。 本当に頼りになるし、仕事だって誰よりも出来る人だ。 課長は紳士って感じだから、自然とモテてしまうだろうけど。それでも今、課長のそばにいるの私。 他の誰でもなく、課長に愛さているのは、紛れもなくこの私だ。 だから自分に、自信を持ちたい。 課長はなにも心配しなくていいと言うけど、本当は私だって不安なんだ。 課長といられるのは嬉しいけど、会社ではただ上司だし、それだけで不安になってしまう。  それに私より美人で、キレイな人なんてたくさんいるし。 不安にならない方がおかしいよね。 会社では会社の上司だから、仕方ないけれど……。 本当は私だって、課長の彼女であることを内緒になんてしたくない。 むしろ社内恋愛として、みんなの前で堂々としたいなんて、小さな願いもあるのだけど。 課長だってそれは分かってると思うけど、公私を分けようって最初に言ったのは私だから。  だからそんなわがままを受け入れてほしいだなんていうのは、やっぱり私のエゴなのかもしれない。 それに私は課長に、いつもたくさん迷惑ばかりかけてきてる。  だからこれ以上、課長に迷惑はかけられない。  それで課長に嫌われたら、怖いし。  まあ課長は優しいから、私のことを嫌いにならないと言ってくれる気がするけど……。 もし万が一課長になにかあった時、私はきっと声を上げて泣くだろうな。 好きな人が、大事な人が傷ついていく姿を見たくないと思うのは、当然のことだと思うから。 私だって分かってる。 課長が会社で私と接しているのは、あくまでも仕事場での付き合いだ。 会社での私たちは、ただの上司と部下。きっとそれ以上でも以下でもない。 私たちは恋人同士なのに、なぜ上司と部下なのだろうか……と思うけど、もし公私を分けなかったら、私たちは一体どうなっていたのだろうか。 課長
last updateLast Updated : 2025-06-30
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chapter40

 そう言われると難しいけど、何か不安が拭えないのは確かなんだ。 「んー……なんていうか、課長には課長の生活がある訳だし……」「なによ。課長がいいって言ってるなら、そうすればいいじゃないの」  沙織にそう言われたけど、なんだか心のモヤモヤが取れない気がしている。「……そんなんじゃ、なくてね」「え? じゃあ何よ?」 「ほら課長は、誰にでも優しいから。だから私以外の人と話してたり、仲良かったりとかするとさ。ちょっと悲しいっていうか……寂しくなるっていうか……」 なんて言ったらいいのか分からないけど、なんだかもどかしくて……。 チラッと沙織を見ていると、沙織は私の話を聞きながら、黙々とスパゲティを口に運んでいる。「もちろん仕事上、それは仕方のないことだって分かってるの。……でもやっぱり、寂しいんだ。そういう時やっぱり、他の人に優しくしてたりすると、私なんかより、その人の方がいいのかなって思ったりするし……」「……ふーん」「もう、私って本当にイヤな女だよね。 もう自分が嫌いになりそうだよ……」 私が「はあ……」とため息をこぼすと、沙織は真剣な顔で口を開いた。「瑞紀、アンタさ」「ん?」「もしかして、嫉妬してる?」「えっ……?」 し、嫉妬……!? 私がっ!?「アンタ、さっきから私に愚痴ってるけどさ。……それって単純に、アンタが嫉妬してるってことじゃないの?」「そ、それは……」 ちょっと待ってよ……。沙織はなんで私のこと、分かるの……? そんな私を見かねたのか、沙織から「ほら、やっぱりそうなんじゃない。 まあアンタのことだから、最近膨れてるのはそれが原因なんだろうなとは、思ってたけどね」 と言われてしまう。  やっぱり沙織は私のお母さんだ。私の考えてること、なんでも分かるんだもん。 「言っとくけど、アンタは自分が思ってるよりも、かなり分かりやすいからね?」「えっ!?」 ウソッ! ま、まあ、しょうがないよね……。それは昔からよく言われることだし。「今のアンタ、ちょっと課長に対して嫉妬しすぎかも。 周りに見え見えよ」 沙織にそう言われて、私は思わず「えっ……ウソ?」と沙織を見る。「本当よ。分かりやす過ぎるわ」 「はあ……。よく言われる」  と言葉を口にすると、沙織は私に「アンタがそんなんだと、アンタが課長のことを好きだっ
last updateLast Updated : 2025-07-01
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