Semua Bab 元夫の初恋の人が帰国した日、私は彼の兄嫁になった: Bab 421 - Bab 430

スタジオに入る前には不安そうな顔をしていた要だが、出てきた今は、顔から笑みがこぼれ落ちて止まらない。彼は歩きながらも何度も振り返ってスタジオの方を見て、名残惜しそうにしていた。月子は少し驚いた。さっき人里離れた場所で途方に暮れていた要は、まるで飼い主を見つけた迷子の子犬ようだった。今は、満面の笑みで幸せそうだったから。まるで別人みたいだ。「もしかして、役をもらえたんじゃないのですか？」隼人はチラッと彼を見て言った。「そんな感じだな」「顔も良くて実力もあるなんて、すごいですね」月子は自信を深め、彼のために喜んだ。彼をここに連れてきたのは、ダメ元で試してみるくらいの気持ちだったのに、まさか本当にうまくいくなんて。隼人はもう一度、月子をじっと見つめた。一体あの要のために何度笑ったことか……月子が要に電話をかけると、遠くから要が電話に出ながらキョロキョロと辺りを見回しているのが見えた。そして月子の車を見つけると、電話を切ると同時に、急いで駆け寄ってきた。要は車の窓のそばに立ち止まり、満面の笑みで、嬉しそうに言った。「月子さん、役をもらえました！」その嬉しさのあまり隼人がいても、怖がるのを忘れてしまったようだった。要の喜びは見ているこっちまで伝わる明るいものだった。瞳もキラキラ輝いていて、演技にもそれが活かされるだろう。ますます期待できそうだ。月子も嬉しくなって言った。「そう、じゃあご飯に連れて行ってあげるから、お祝いも兼ねてね」要はこの時の気持ちを言葉では言い表せなかった。何もない場所に放り出されて、これから先、役を奪われ続けるんじゃないかと不安で、絶望感に苛まれていた。なのに、まさかの展開だ。しかも、もっといい役をもらえたんだ。要には予感があった。今日の午後2時21分、スマホの電池残量が1％の時に送ったあのメッセージが、自分の運命を変えることになったのだろう。芸能界は実力だけじゃなく、人脈や資源、後ろ盾も重要で、公平さなんてほとんどない。ただ、常に準備をして、運命の女神が微笑んでくれるのを待つしかない。しかし、運命に恵まれることは本当に難しい。でも、もし本当にこれで運が回ってきたとしたら？要は興奮して、胸がドキドキと高鳴っていた。そう思った彼はもう遠慮するのをやめて、素

天音はひどく衝撃を受け、ただ唖然としていた。月子を見下していたとはいえ、三年間、義理の姉だったのだ。少なくとも、兄の周りに他の女はいなかったし、女遊びをしていたわけでもない。それなのに、月子は最近隼人に取り繕ったからって、自分を次々と追い詰めた。それは考えただけでも、爆発しそうだ。だけど隼人という男は、冷酷で融通の利かない、まるでロボットみたいな神経質な奴だ。おまけに、自分にまであれこれと指図をしてくるのだ。まっそれはそれで怖いから逆らえないと思って、月子にも何もできなかったから、せいぜい悪口を言って憂さ晴らしをするくらいだった。それがまさか二人が恋人同士になるなんて、考えたこともなかった。これじゃあ、話がややこしくなる一方じゃない。もし月子と隼人が付き合うとなると、まだ義理の姉のままなのか？別に損はないような……いやいや、そんな風に考えてはいけない。そもそも自分は隼人を兄なんて思ってない。「お兄さん、どういうことなの？知ってるの？」ズキズキと痛む頭を手で押さえながら、天音は尋ねた。前は月子を好き放題いじめてきたが、隼人と付き合っているなら、そんなことはもうできない。静真はスマホを手に、冷淡に言った。「ああ、知っている」「知ってるの？なんで教えてくれなかったの！」天音はますます混乱した。兄と隼人は犬猿の仲だ。だから、月子のことを嫌っていなくても、隼人と付き合うのを許すはずがないのだ。それを聞いて、静真の目は冷たく光っていた。隼人は彼をわざわざ海外に追いやったくらいだから、ここで何も手を打たないほうが、それこそ無駄骨になってしまうのだ。だから、彼が国内にいない間に、月子と親密になる機会を、あの手この手で作り出そうとしているのだろう。「二人は親密な様子だったか？」静真は尋ねた。天音は少し考えてから答えた。「いや、特にそういうのはなかったと思う。ただ、ペアシートで映画を見てたみたいだけど」「放っておけ」静真は離婚したばかりの頃、月子の存在が当たり前になっていた生活に慣れず、戸惑っていた。だから、感情をコントロールできなかったのだ。しかし、今は自分が本当に求めているものが何なのか、分かっている。目標が決まったのなら、あとは実行するだけだ。隼人が月子にどんなに近づこうと、静真は恐れていない。月子が自分を愛して

月子がこの言葉を耳にした時、ちょうど秘書の高木明日香（たかき あすか）がドアをノックした。オフィスのドアは閉まっていなかった。月子が顔を上げると、明日香は美しい花束を抱えていた。月子は明日香に中に入るよう合図すると、彼女は入ってきて花束を机の上に置いた。花束にはカードが添えられており、そこには大きくお祝いの言葉が書かれていた。【千里エンターテインメントの門出を祝して】そして、静真のサインがあった。明日香は彩乃の紹介で入社した、優秀な秘書だ。明日香は雑務を担当していたが、ここ数日、千里エンターテインメントの開業祝いの花をたくさん受け取っていた。送り主は、いずれもそうそうたる顔ぶれだった。明日香は徐々に事の重大さに気づき始めた。千里エンターテインメントは小さな会社だと思っていたが、全く違っていた。社長の人脈はとてつもなく広かったのだ。例えば、吉田グループの吉田社長、J市社交界の人々、さらにはSグループの社長や副社長からも祝いの品が届いていた……もうこれ以上はないだろうと思っていた矢先、入江グループの社長からも届いたのだ。そう感じた明日香は月子に強い興味を抱いていた。月子は眉をひそめ、カードの文字を冷たく見つめ、明日香に退出するように指示した。静真はやり手だ。月子が何をしたのか、調べればすぐに分かるだろう。なのに、花束を送り、祝いの言葉まで添えてくるなんて、彼の真意が分からなかった。まるで今までとは別人のようだった。月子はこれまでずっと、彼の無関心な態度に慣れていたので、その変貌をなんだかぎこちなく感じいた。「会社の前にいる。降りてくるか、それとも俺が上がろうか」いつもの命令口調に、月子はその言葉に軽蔑感を覚えた。「じゃあ、上がってくれば！」静真は冷たく言った。「本当に上がっていいのか？月子」もちろん、月子は上がって来て欲しくなかった。静真とは関わり合いになりたくなかったのに、彼はいつも付きまとってくるから、鬱陶しくて堪らなかった。しかし、月子はもう以前の月子ではなかった。静真が何をしようと恐れていなかったので、彼女は単刀直入に尋ねた。「何の用？」今までのながれだと、きっとロクな用事じゃないだろう。ところが意外にも、静真はこう言った。「この時間なんだなから、お前を食事に誘おうと思って。ちょっと

月子は悟った。正雄のこととなると、静真は真剣に話ができるのだ。以前と変わらない。だけど、こんなに優しくしてくれたことはなかった。「結構よ。プレゼントは自分で用意したし、服もあるから」彼女は静真を見つめながら言った。「前はこんなことしてくれなかったのに、今更気遣う必要もないと思うよ。そんなの、もう必要としてないから」静真は尋ねた。「必要ない？じゃあ、何が必要なんだ？」月子は彼の目をじっと見つめた。「離婚届を出した日に言ったはずよ。静かに元夫でいてくれるだけでいい。お互いに関わらないのが一番だって。今更優しくされても、余計なお世話よ」静真は皮肉っぽく言った。「余計なお世話？相手によって態度が違うってことか？」月子は黙っていた。静真は続けた。「隼人と映画を見に行ったことは知っているぞ。どうして、俺の頼みは断るのに、彼の言うことは何でも聞くんだ？」彼は気にしないつもりだったのに、話しているうちに、抑えきれなくなってしまった。月子は数秒間沈黙した。静真は彼女の行動を監視し、問い詰め、急に優しくしてきている……月子はその変化に気づいた。「もしかして、嫉妬してるの？」そう感じた月子は静真の目を見つめた。だが頭に浮かぶのは、かつての彼の冷淡な態度ばかりで、愛情のかけらも感じられない思い出ばかりだった。それを聞いた静真は、テーブルの下でぎゅっと拳を握りしめた。その言葉に強い嫌悪感を覚え、冷笑しながら、そして皮肉っぽく言った。「してない」「本当に？」かつては常に優位に立っていた静真だったが、今は月子に言い負かされてしまうことが多くなった。そして、彼は自分の怒りを抑えるのに必死だった。月子はもう以前のように彼をなだめることはしなくなった。それどころか、彼が一度でも声を荒げれば、すぐに逃げ出してしまうだろう。だが、今回彼の目的はただ一つ、月子を連れ戻すこと。内心は怒りで煮えくり返り、彼女を縛り上げてしまいたい衝動に駆られていた。感情は爆発寸前だった……しかし、静真はそれを必死に抑え込んだ。テーブルに手を置き、少し体を前にかがめ、問いただすような視線で彼女を見つめた。「月子」低い声で彼女の名前を呼んだ。「離婚してから、あることに気づいたんだ。お前と離婚したくない。やり直そう」そう言うと、静真の胸は激しく鼓動し

静真が今日わざわざここまで来て、プライドを捨ててまで月子に頭を下げ、連れ戻そうとしたのに、無駄だったというのか？突き返された指輪を睨みつけ、静真の表情は一層険しくなった。静真が望んでいたのは、自分の言うことを聞く月子、自分をちやほやしてくれる月子で、今の、反抗的で命令に従わない月子ではないのだ。しかし、月子はまだ怒っている。時間さえ与えれば、きっと以前のように自分のことを想ってくれるだろうと、静真は考えていた。自分が本当に求めているものが何か分かって良かった、と静真は胸を撫で下ろした。そうでなければ、今頃は月子の態度に激怒していたかもしれない。もう少し我慢すれば、月子と復縁できる。そして、形だけでも夫婦の振りをすれば、彼女ももうきっと自分から離れていくことはないだろう。静真は指輪をしまい、冷淡な表情の月子に言った。「わかった。一日だけ時間をやる」月子はスマホに隼人からのメッセージが届いたことに気づいたが、今はそれよりも静真のことが気になっていた。以前は、静真を好きだったから、彼の全てが良く見えて、そばにいるだけで幸せで、喜びを感じていた。今、好きという気持ちを取り除くと、見えるのは静真の傲慢さと冷淡さだけだ。復縁を迫っていると言うけれど、心から頭を下げているようには見えない。むしろ施しを与えているようにさえ感じる。さらに、復縁したい理由は、自分が楽できるからであって、後悔や愛情からではないとまで認めたのだ。普通、ヨリを戻したいと思うのは、未練があるからだろう。だから月子はむしろ静真に感心した。普通なら、こういう状況は誰でももう少しは取り繕うだろうに。静真は全くそれをしようとしないのだ。彼女にそこまで労力を使う価値がないと思っているのだろう。もしかしたら、彼の言う通り、彼から復縁を切り出したこと自体が、大きな譲歩だと本気で思っているのかもしれない。だけど、そんなんでより戻せると本気で思っているなんて。誠意のかけらもない。まるで相手を物乞い扱いにしているようだ。友達との仲直りでさえ通用しない方法で、結婚生活をやり直そうなんて、なんて虫がいいんだ。傲慢で、自分勝手。月子には、それ以外の言葉が見つからなかった。でも、静真が演技しないおかげで、月子は彼の本心を見抜くことができた。月子は静真と一緒にいるとき