「ゼノン様。ちょっといいですか」 そんなわけである日、俺はゼノンに話しかけた。 場所は聖騎士詰め所の片隅。アレクと並んで歩いていたゼノンは、俺の声に振り向いた。「はい。あなたはユリアン・コーマさんですね。何のご用でしょうか」 名前を把握されている。 俺とゼノンは特に関わりがなかったのに、ちょっとこわい。 ゼノンはアレクと別れて俺についてきた。 訓練場まで移動して、俺は彼に向き直った。 周囲には聖騎士や準聖騎士が何人かいるが、俺たちは特に注目されているわけではない。「単刀直入に言う。あなたはエリーをどう思っているんだ」 聖騎士相手だったが、敬語を使う余裕をなくしていた。 ゼノンは少年らしからぬ穏やかな笑みで答えた。「とても素敵な人です」「当然だ。エリーはこの世で一番素敵な子なんだ。気が合うな」 言ってしまって、いやそうじゃないと気づく。「……そうではなく、付き合いたいと思っているのか? だったら兄として見過ごせない」 ゼノンは少し驚いたように目を見開いて、それから考え込んだ。 考え込む時間は意外に長くて、俺は不安になった。 あいつはエリーをどう扱いたいんだ。答えが出ないのは、やましい気持ちがあるからではないか。例えばポイ捨て予定の遊び相手とか……!!「僕はエリーさんと、付き合いたいわけではありません」 ようやく返ってきた答えに、俺は目を吊り上げる。やはりただ遊ぶためか!?「結婚して、生涯をともに歩みたいと思っています」「……へ」 思わぬセリフに、間抜けな声が出た。 ゼノンは生真面目な顔で続ける。「結婚の前提に恋人としてのお付き合いが必要というのであれば、やぶさかではありませんが。僕はもっとしっかりした絆で、エリーさんと結ばれたいです。ただの恋人など別れてしまえば終わりではありませんか。そんなの嫌です」 俺はシスコンの自覚がある。エリーを溺愛している自覚も。 でも今回はドン引
Terakhir Diperbarui : 2025-07-18 Baca selengkapnya