「うん、それでいいよ。でもね、アレク様に勝てないってまだ決まったわけじゃない。いつだって挑んでいいし、勝ったり負けたりするのもいいと思う。諦めなければ、何度でも挑戦できるのだから」「ふふっ、エリーさんには敵わないなあ。僕も諦めるつもりはありませんよ。そのうちアレクに勝って、その勝利をあなたに捧げます」 ゼノンは笑顔でサンドイッチを口に入れた。「ん、このサンドイッチもおいしい! エリーさんは料理の天才ですね」「そんな、まさか。そんなもので良ければまた作るよ。聖騎士の立場じゃあまり息抜きもできないかもだけど、たまにはのんびり楽しくやろう?」「ええ、もちろん。また機会があったら誘ってください」 彼は微笑んで少し体を寄せた。「……いえ、次は僕が誘いますね」 近い距離で囁くような声で言われて、私の心臓は飛び跳ねた。 耳が幸せになる声が! こんなに近くで!「う、うん、お手柔らかに頼みます」 しどろもどろで答えた私に、ゼノンは楽しそうな笑い声を上げた。 背後で袋の中のニジイロカエルがケロケロと鳴いて、私も笑ってしまった。 楽しかったカエル採集ピクニックは終わって、あとは帰るだけになった。 森を出て街道まで戻ってくる頃には、西の空が赤く染まり始めている。 暮れなずむ空の複雑な色合いはとても美しくて、思わず目を奪われた。「夕方が終われば夜、闇の時間、か……」 ゼノンの呟きに、横を歩いている彼を見る。「闇とは何なのでしょうね。夜、眠り、死、冥府。こんな力がどうして人間に、僕に備わっているのでしょうか」「そうだねえ……」 彼の問いに対する答えは、私も持っていない。 けれども夜も闇もこの世界に確かに存在して、必要なものだということだけは分かる。「生き物は本能で死を恐れるから、闇にいいイメージがないのは仕方ない
Terakhir Diperbarui : 2025-06-14 Baca selengkapnya