Semua Bab 転生モブは推しの闇落ちを阻止したい: Bab 41 - Bab 50

52 Bab

41:対決

 冥府の神は、長い黒髪の美しい青年の姿をしていた。 ゼノンが二十代の大人になったら、こんな見た目になるかもしれない。 ただ、目の色が漆黒だった。彼の双眸はまるで真っ暗な闇のようで、何も映してはいない。 虚ろな瞳に穏やかな微笑み。何とも不釣り合いで恐ろしかった。「愛し子よ」 彼は言った。低く耳に心地よい、聞く者の魂を揺さぶるような声で。「闇と氷の申し子よ。死と眠りの使い手よ。よくぞここまで育ち、我が呪いに打ち勝った」「何を……!」 私は唸った。必死に心を奮い立たせなければ、この強大な存在の前に折れてしまいそうだった。「勝手に罠を仕掛けておいて、よく言う! ゼノンは絶対に渡さないんだから!」「黙れ、小娘。私はゼノンと話をしている」 その言葉だけで重圧がかかり、口が閉じてしまった。「お前こそ我がしもべにふさわしい。窮屈な生命と肉体を捨て、今こそ我が冥府へ来るがいい。永遠で完璧な幸福がお前を待っている」「…………」 ゼノンは顔を上げた。ひどく憔悴しきった目に、奇妙な熱が浮いている。「永遠に、完璧に。そんな幸福が本当に、あるのですか」「ゼノン!?」 私は悲鳴を上げる。「もちろん、あるとも。我が冥府の神の名にかけて、お前に与えると約束しよう」「僕の幸せは、永遠にエリーさんと共にあること。互いの死で引き裂かれないこと。もしそれが可能であるならば……」 そんな。そんな、待ってと声を上げたいのに、喉はひゅうひゅうと息を吐き出すだけ。「その小娘か。お前の幸福にソレが必要であるならば、受け入れよう。共に死者の国の住人となり、永遠の存在となる――」 冥府の神の声音は優しげで、本当にゼノンを思い遣っているかのようだった。 あの人の言う通りにすれば幸せになれる。苦しみから解き放たれる。 そんな気持ちが私の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-08
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42:真なる帰還

「や、やった……!?」 ゼノンが大地に膝をつく。緑と生命が芽吹く大地に。 私も彼の隣で座り込んでしまった。 除草剤代わりに魔力を使って、ゼノンの復活にも手を貸した。人より少々多い程度の私の魔力は、そろそろ限界だった。 ぜえぜえと息が上がる。 ここは魔力の世界で生身ではないはずなんだけど。こんなところは体の感覚に引っ張られてしまう。「エリーさん。また、助けられてしまいましたね」 少し振り返れば、ゼノンがすぐ近くにいる。 もう黒い紋様もツタもない。いつものきれいな肌、黒い髪と冬の空の瞳。 それが嬉しくて私は笑った。「お互い様でしょ。私だけの力では、冥府の神に勝てなかった」「それでもです。ありがとう、エリーさん」 そっと抱きしめられた。魔力の世界ではあるけれど、彼の存在を確かに感じる。「……冥府の神は」 抱きしめられたままの格好で、ゼノンの声が聞こえる。「歪んでいたし、間違っていたけれど。彼なりの慈愛があるようでした」「…………」「呪いが芽吹くきっかけになった闇騎士がいるんです。彼の犯した罪は許されるものではないけれど……とても悲しい人でした」 何と答えていいか分からず、私はただ彼の言葉を聞いている。 けれど確かに、冥府の神から慈しみのようなものを感じた。 永遠の幸福というのも、彼にとっては本物なのだろう。 ゼノンを誘惑して人形と呼んだけれど。 憎しみとか、蔑みとか。そういった感情は感じられなかった。 女神様は地上の生命を愛している。だから冥府の神と対立して、神代の時代から戦いを続けている。 けれども冥府の神もまた、生命を愛しているのかもしれない。愛しているからこそ、苦しみを見過ごせなかったのかもしれない……。「それでもやっぱり、受け入れら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-09
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43:甘い時

 ゼノンは十八歳になり、アレクとともに成人を迎えた。 本来ならば成人のお祝いがあるのだけど、今は冥府の神との戦いを控えた時期。あまり大きなお祝いは行わず、身内だけで行った。 ゼノンの希望もあって、私と両親、兄が出席した。 私たち家族がひいきにしているちょっといいレストランで食事をして、実家に行ってデザートを食べて。 私はこの日のために、腕によりをかけてブルーベリーのタルトを作った。 ブルーベリーは薬草園の裏手に自生しているもので、時々手入れをしていたのだ。「おいしいです。エリーさんは料理もお菓子も上手なんですね」 ゼノンがしみじみと言うと、なぜか兄が胸を張って答えた。「そうだろう。エリーみたいにできた子はそうそういない」「分かっていますとも」 妙に息ぴったりな二人に両親は笑っていて、私は気恥ずかしくなった。 デザートとお茶をすっかり片付けてから、ゼノンが立ち上がる。「エリーさんを少しお借りします」「うん。行っておいで」 家族に見送られて、私たちは夜の町に出た。 去年までよく待ち合わせをした広場まで行く。 ゼノンはさらに歩いて、少し高台の見晴らしのいい場所へ私を連れて行ってくれた。「僕もやっと、名実ともに成人の資格を得ました」 星空と町の夜景を背景に、ゼノンが微笑んでいる。 彼はもう何年も前から聖騎士として義務を果たしてきた。大人以上の重圧に耐えてやり遂げてきた。 だから今さらなんだけど、彼にとっては区切りであるようだった。 私は彼の横に立って星空を見上げる。 真っ暗な夜の闇。けれど星ぼしが美しく瞬く空を。「だからエリーさん。改めて、結婚の申込みをさせてください。僕と生涯を共に歩むと、約束してもらえますか?」 私の答えはとうに決まっている。「ええ、喜んで」 彼の手を握って答えれば、抱き寄せられた。「僕の全ての力であなたを守ります。たとえ神を相手にしても、あなたは渡さない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-10
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44:新婚初夜1

 ついばむような優しいキスは、少しずつ深くなっていく。 私たちはお互いの髪を撫でながら、感触を確かめるように舌を絡めた。 彼の舌の裏を舐めて舌先を突いて遊んでいたら、捕まってしまった。強く吸われる。 間近に見える彼の青い瞳は、チェシャ猫みたいに細められていた。 二人でベッドに倒れ込んで、服を脱がせあう。 やがて一糸まとわぬ姿にされてしまって、ゼノンはため息をついた。「エリーさん……なんて可愛らしいんだ」 見つめられて体が熱い。 ゼノンの視線は情熱的で、溶かされてしまいそうだ。「あまり見ないでね」 恥ずかしくて手足を縮めたら、手首を掴まれてしまった。「いいえ。エリーさんの生まれたままの姿を見るのは、僕の権利ですから。僕だけの権利です」 意地悪な笑みに私は口を尖らせて、もう一度キスした。 唇を重ねながら、お互いの体の線を確かめ合う。 ゼノンはすっかり大人の男性に成長していた。 少年の儚げな細さはもう消え去って、引き締まりながらもしっかりと筋肉がついた体をしている。 私が何度も背中を撫でていると、ゼノンはくすくすと笑った。「くすぐったいですよ。背中がそんなに気になります?」「たくましいなぁと思って。私の旦那様はきれいでたくましくて、本当に素敵な人」「きれいなのはエリーさんです。あなたのその夕焼けの髪、若草の瞳。可愛らしい顔立ちと生き生きした姿。ほっそりした体ときめ細かい肌。世界で一番きれいで可愛いです」 さすがにそれは言いすぎだろうが、今ここで指摘するのは野暮ってものである。 愛のなせるわざとして受け流しておこう。 すぐ近くで微笑むゼノンこそ、本当にきれいな顔をしている。 体はしっかり引き締まっているのに、顔立ちだけは少年の面影が少しだけ残っている。 漆黒の髪は絹糸のようで、両の瞳は冬の空。 長いまつ毛が目に影を落として、人形と見間違えるほど美しい。 でも彼は、決して人形な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-11
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45:新婚初夜2

 ゼノンは私を後ろから抱えるように座って、両手で愛撫を始めた。 花芯の皮を剥いてぷっくりと露出させ、くりくりとこねる。 その刺激に合わせて穴に指を抜き差しして、時々不意打ちのように深く突き入れる。「あぁっ……!」 外とナカとを同時に攻められて、もう声が止まらない。 肉の花びらを撫でられ、ズボズボと抜き差しされる。 指を二本三本と増やして、ばらばらと動く。 あそこはもう大洪水で、ぬるぬるとした感触が恥ずかしくて気持ちよくて、腰がくねるのを止められない。 逃げ出そうにも背後からしっかりと押さえつけられていて、ろくに身動きも取れない。 彼の腕の中でただただ繰り返し快感を与えられる。 なんて甘い拷問。苦しくて気持ちよくて声が止められない。「エリーさん」 時折耳元で囁かれる声とともに耳朶を食まれた。 低い声はどこまでも甘くて、それだけで脳がかき回されるようだ。 大事な場所はヒクヒクとうごめいて、ゼノンの指に絡みついている。もっともっとと飲み込もうとしている。 脳がとろける快楽ともどかしさで、どうにかなってしまいそうだ。「ゼノン、ゼノン、もういいから! もう私、我慢できないよぉ」 何度目かの絶頂を経て、息も絶え絶えになりながら言った。 気持ちいいけれど足りない。指とか舌とか、本当に欲しいのはそれじゃない。 泣きべそをかきながら言ったのに、彼はそれでも手を止めない。「何が我慢できないんです? 僕、頑張ってるのになぁ」 笑みを含んだ声で囁かれた。脳に突き刺さる深い声で。 セリフと同時にイイところを擦っていって、私は悶えた。「そうじゃなくて! 意地悪っ!」「ちゃんと言ってくれないと、分かりません」 彼はとても意地の悪い声で言って、私の中に指を突き入れた。 イッたばかりの体は敏感で、ぷるぷると震えが止まらない。「ひんっ、あぁっ、指じゃやだあっ」「指じゃなければ、どこです?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-12
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46:新婚初夜3

「おかしくなってください。僕以外の何も見ないで、溺れていて」「あっぁ、あんっ、ゼノンっ、愛してる。私には、あなただけ……ああぁん!」「僕も愛しています。エリーさんでなければ、駄目なんだ」 私たちは必死にお互いを求め合った。いくら求めても足りなくて、満たされているのにもっと欲しい。 体が溶けてしまいそうなほど熱い。彼と私との境目を見失うほどに。 このまま一つに溶け合えばどれほど幸せだろうと、蕩けた思考で思う。 すぐ近くには欲情に濡れた彼の美しい瞳。食らいつきそうな熱に浮かされて、私だけを見つめている。 きっと私も同じ目をしている。彼だけを見つめている。「エリーさん……っ、どうか受け止めて」 耳元で彼が囁く。同時にお腹に熱いものが注がれた。 彼の子種。前は抜いてから出していたのに。 そっか、私たち夫婦になったから。赤ちゃんができたっていいんだ。 そう思ったらじわじわと幸せが心を満たした。「ゼノン……。もう少しこのままでいて。抜かないで。あなたの赤ちゃん、私も欲しい」 囁くように言えば、彼は美しい青い目を見開いた。 無言で抱きしめられる。 イッたばかりの体じゃろくに抵抗もできず、私は息も絶え絶えになった。「ちょっとゼノン、苦しいよ。急に何?」「エリーさんがあんまり可愛いから。あぁ、まだまだ収まりそうにない」 額と額とこつんと合わせ、彼は微笑む。熱と欲にまみれた目で。「夜はまだ長い。一緒に気持ちよくなりましょうね、エリーさん」  深い交わりの余韻でぼんやりしている私をゼノンが抱え上げる。 ベッドの縁に腰掛けた彼は、向かい合うようにして私を膝に乗せた。「…………!」 ゼノンの男根は硬さを失っておらず、ずぶずぶと私の中に入っていく。 深く突き刺さった感触に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-13
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47:新婚初夜4

 ぐいと押されたお腹の内側に、確かに彼の存在を感じる。 手で押されながら奥を穿たれ、今までにない刺激に私は悲鳴を上げた。「この感覚、よく覚えておいてくださいね。僕の形です。奥の奥まで僕の形。エリーさんは体の中まで僕のもの」 陶然とした表情にちょっとだけ引いた。いくら何でも執着強すぎじゃない? けれどそんな考えは、すぐに始まった杭打ちに吹き飛んでしまった。 四つん這いにさせられて後ろからガツガツと打ち付けられる。 パンパンと肉同士がぶつかり合う音、ずぶずぶ、ぐちゃぐちゃと粘液が混ざり合う音。 首筋と耳を甘噛みされ、胸を揉みしだかれ、先端をつねられながら。 耳元で聞こえる彼の吐息、囁く愛の言葉。 もう限界だと思っていたはずなのに、どこまでも押し上げられていくよう。「愛してします、エリーさん。僕だけのエリーさん」「ああっ、んああっ、あひ……っ! ゼノン……っ!」 気持ちいい。もっと欲しい。それしか考えられなくなっていく。 意識がどろどろに熱く溶けていく。 体はどこまでも熱を持って、彼と私の境目を曖昧にした。 溶け合う肌、混じり合う粘液。どこからが私でどこからが彼なのかもう分からない。 気が狂いそうなほどの愛と快楽の嵐に飲まれて、私の理性はとっくに吹き飛んでしまった。 私たちは獣のようにお互いを求めて貪りあった……。   というわけで。宣言通りめちゃくちゃにされて、どろどろに溶かされた。 彼以外の何も見えなくなってすがりついたら、とても満足そうな顔をしていてちょっと引いた。 愛し合うのは幸せだし気持ちいいけれど、この人の愛は少しばかり重いようだ。   結婚したばかりだからと、女神様は気を利かせて五日間のお休みをゼノンと私に下さっていた。 まだ戦いが行われている最中の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-14
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番外編:原作ゼノン1

 ゼノンは薄暗い場所を歩いている。 ここが幼い頃住んでいた貧民街だと気づくのに、そう時間はかからなかった。 彼が歩みを進めれば、時間も流れていく。 貧民街を出て聖騎士候補生の学校へ。 アレクとの出会い。 いつも一歩及ばない相手に、友情が濁っていく。 以前の自分と同じようで、何かが違うとゼノンは思った。 アレクに抱くコンプレックスは深まる一方。 聖騎士に叙任されてもそれは変わらなかった。 やがて始まった魔力訓練で、違和感は決定的になった。 担当訓練官はベテランの中級魔術士。 成人男性である彼は、エリーと一つも共通点がない。(……どうして) ゼノンは必死の思いでエリーを探した。けれど彼女はどこにもいない。 薬草園におらず、訪ねた実家にすらいなかった。エリーの家は、息子が一人きりだったのだ。 食い下がって聞けば、妹の女の子は赤ん坊の頃に死んでしまったのだという。(どうして!) ゼノンの中で、エリーの面影がだんだん遠くなる。 本当にそんな女性がいたのか、自信がなくなってしまう。(…………) やがて彼女が誰かも分からなくなってしまって、ゼノンは探すのを諦めた。 それからは坂道を転げ落ちるようだった。 同格だったはずのアレクは常に一歩を先に行く。 光属性を使いこなし、剣術をめざましく上達させて、いつしかゼノンのはるか先に行く。 対するゼノンは立ち止まったまま。氷属性は暴走しがちで、闇属性に至っては糸口すら掴めない。 訓練官は途中でさじを投げてしまった。「ゼノン様、氷はまだしも闇は本来人間の扱う属性ではありません。闇は女神様の敵、冥府の神の属性。なかったことにして、諦めましょう」「……分かりました」 訓練官の言葉をゼノンは黙って飲み込んだ。 聖騎士は気高くあること
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-15
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番外編:原作ゼノン2

 ゼノンは暗闇の底で眠っている。 自分の中に芽吹いた闇が、彼をすっかり覆ってしまうのを感じながら。(アレク。僕のために泣いてくれるのか) はるか遠い地上から、かつての親友の嘆きが聞こえる。(僕にはもう、何も残っていない。心も体も魂さえも冥府の神に奪われてしまった) けれどたった一つ、残ったものがある。 それは心臓に突き刺さった黄金の短剣。神殺しであるために、冥府の神も手を出しかねている。 冥府の神は本来であれば、ゼノンを依り代に復活するつもりだった。 闇と氷と地の属性を持つゼノンは、冥府ととても相性が良い。幼い頃に目をつけて、種子を植えておいた。 少し目を離した隙に女神の神託が下り、聖騎士になっていたのは誤算だったが。 そして誤算はさらに重なる。 黄金の短剣が突き刺さったままでは、依り代としての役目を果たせない。 そこで冥府の神は、ゼノンを闇騎士に仕立て上げた。 女神の秘宝である短剣で、女神自身を殺すよう仕向けよう。そんな筋書きを考えていた。(この短剣が、短剣を突き刺したアレクとの絆が。僕に残された最後のもの) ほとんど全てを冥府の神に支配されながら、ゼノンは僅かに残った意識で思う。(であれば、僕は……)   女神と冥府の神の対決の日がやって来た。 冥府の神の地上の拠点で、二柱の神は対峙する。 女神の傍らにはアレクがいる。彼はかつての闊達さを失い、憂いある大人びた表情をしている。 そして冥府の神の隣には、闇騎士と化したゼノンがいた。 体中に黒い紋様を浮かび上がらせ、虚ろな瞳でアレクを見ている。「……ゼノン」「アレク、これが最後だ。決着をつけよう」 再び始まる戦いに、ゼノンの心が浮上する。懐かしい友の剣筋、泣きそうな顔。 打ち込めば防がれる。踏み込みは受け流してかわす。 遠い
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-16
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番外編:兄の奮闘1

 俺はエリーの兄。名をユリアン・コーマという。 だがまあ、俺の名前など何でもいい。エリーの兄だと覚えておいてもらえればいい。 エリーと俺とは五歳離れた兄妹である。 エリーは出産時、息が止まった状態で生まれてきた。 産室に出入りする医師と助産師が、青ざめた顔で行き来していたのを覚えている。そしてその様子を泣きそうになりながら見ていたことを。 けれどエリーは奇跡的に息を吹き返した。 諦めかけていた両親と俺は、どれほど喜んだことか。 でも赤ん坊の頃のエリーは体が弱くて、何度も熱を出したり意識を失ったりした。 俺たち家族はそのたびにオロオロとして、病院に駆け込む羽目になった。 だからエリーは大事に大事に育てられた。 熱を出して苦しんでいるエリーはかわいそうで、その後に元気を取り戻した笑顔が可愛くて。 彼女の一挙一動に心を奪われ、夢中になる。「エリーはかわいいなあ!」「ばぶー」 エリーはとても可愛らしい子だ。 母とおそろいの赤い髪は、まるで夕焼け空のよう。 父と同じ緑の目は、春の野原の芽吹きのよう。 俺はエリーを守ろうと決意した。 この子が大きくなって、大人になるまで。いいや大人になってもだ。 エリーのそばで兄としてこの子を守るんだ。嫁になんていかせるものか。 エリーは少しずつ成長し、幼児期を終える頃には体が丈夫になっていた。 熱を出すのもほとんどなくなり、元気に学校に通っている。 エリーはすごく賢くて、時々大人のような言葉を言う。 子どもなんて勉強嫌いで当たり前なのに、エリーは自分から勉学に励んだ。 特に魔法に興味があったようで、どんどんと知識を吸収していった。「ねえ、兄さん。魔法があるって不思議ね。とっても面白いの」「そうかい? 魔力と魔法は神々に連なる力。自然の力だよ」 そして十歳の魔力鑑定で、地と水属性を持っていると判明した。属性は普通は一つなのに、二つもあるとは。 魔力量もかなり多く、将
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-17
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