女神降臨からほどなく、各地で魔物の活動が活発になったと報告が上がっている。 私のような下級魔術士にさえ漏れ聞こえてくるのだがら、相当な規模なのだろう。 そんな中で、十六歳になったゼノンとの共同任務の話が持ち上がった。 私が呼び出されて聖騎士の詰め所へ行くと、アレクとゼノンが立っていた。「エリーさん、どうぞこちらへ」 ゼノンに促されて奥の部屋に入る。 部隊長である上級聖騎士が状況を説明してくれた。「皇都から馬で三日ほどの距離にある山で、魔物の目撃情報が相次いでいる」「どのような魔物ですか?」「それがはっきりしないのだ。住民の何人かが毒を受けているので、有毒の魔物であるのは確かだが」 上級聖騎士は私に視線を向けた。「エリー殿は魔術士の中でも薬草と解毒に精通していると聞いている。アレクとゼノンに同行し、毒で苦しむ人々を救ってやってほしい」「は、はい」 責任重大だ。「アレクとゼノンは魔物の正体を探りながら、これを討滅すべし。エリー殿は後方の村で治療にあたってくれ。基本指針は以上だ」「承知しました」「分かったぜ」 上司に対して軽い口調を返したアレクだが、苦笑されただけで咎められなかった。憎めないやつである。 人員は聖騎士のアレクとゼノン、準聖騎士の人が一人(もちろん兄ではない)、それに私。 私以外の人はみんな馬に乗れるので、ゼノンの馬に相乗りさせてもらうことにした。「エリーさんはゼノンが乗せるのか? 俺でもいいけど?」 アレクが言うと、ゼノンは微笑んだ。穏やかな笑みなのにぞっとするような冷気を放っていた。「僕に任せてくれ。彼女とは長い付き合いだからね。気心が知れているんだ」 私は怖くてぷるぷる震えたが、私の方に視線を戻したゼノンはいつもどおりの彼に戻っていた。 何だったんだ……。 急いで準備を整えて、次の日には出発した。毒で苦しんでいる人がいる以上、のんびりはしていられな
Last Updated : 2025-06-21 Read more