異世界に転生しているのは、小さい頃から何となく気づいていた。 前世の私は、特に波乱もない普通の人生を送っていた。平凡な学生時代を経て、小さな会社に就職し、淡々と日々をこなしていた。しかし、その記憶はある時ぷつりと途切れている。 たぶん、事故か何かで命を落としたのだろう。 前世の記憶はあるものの、だいぶふんわりとしていて思い出せないことも多かった。 だから私は取り立てて異世界転生者だと意識することもなく、普通にこの世界で生きていた。 エリー・コーマ。それが今の私の名前。 この世界は前世風に言えばファンタジーな世界観で、魔法があったり、神様や魔物がいる。 特にこのサンクトゥア神皇国は女神信仰の国。 数百年に一度女神が地上に降臨して、聖騎士たちを引き連れ、この世の闇を払うという伝説があった。 私は魔力の才能があり、魔法に興味があったので、魔術アカデミーに入学して勉強に励んだ。 聖騎士ほどじゃないが、上級魔術士になれば出世コースである。「エリーは努力家だね。父さんの自慢の娘だよ」「母さんの自慢でもあるわ。でもエリー、出世ばかりじゃなく恋やおしゃれもしっかり楽しむのよ」 両親はそう言って私のことをいつも褒めてくれる。「エリー、兄さんを忘れるなよ。アカデミーでいじめられたらすぐに言うんだ。いじめっ子を消してやるから」 準聖騎士である兄まで揃って、うちの家族は末っ子の私を過保護に溺愛気味なのである。 ちょっと困る時もあるが、私も家族が大好きだ。 前世では早死してしまった。もう覚えていないけれど、きっと家族は悲しんだと思う。 だから今生ではしっかり長生きして、出世して、恋もして? 幸せをいっぱい手に入れて、みんなで笑いあって生きていきたいと思っている。 そんなわけでとりあえず魔法の勉強に励んだ私は、それなりに優秀な成績でアカデミーを卒業。十七歳で下級魔術士としてキャリアのスタートを切った。 順風満帆な異世界人生だった。 ――と、思っていた時期が私にもありました。 荘厳な神殿の祭壇の前に、二人の少年が跪いている。 年の頃は、少年らしさが残る十代半ば。彼らは対照的な容姿をしていた。 一人は太陽の光を凝縮したような金の髪。少しだけ癖のある金髪が、神殿のステンドグラスから差し込む光を反射して、美しくきらきらと光っている。 もう一人は夜闇
Terakhir Diperbarui : 2025-06-10 Baca selengkapnya