玲奈は家を出ると、足早にマンション入口の薬局へ向かった。アフターピルを買い、会計を済ませて外へ出ようとした。出口を一歩踏み出した瞬間、目の前に立つ智也が目に入った。出口のすぐ前に立っていたので、玲奈が咄嗟に反応しなければ、きっとぶつかっていた。玲奈は急ぎ足のまま、智也を一瞥しただけで脇をすり抜けようとした。だが智也は無言のまま進路を塞ぎ、声を低くして言った。「俺と家に帰れ。じいちゃんが待ってる」その言葉が、以前の玲奈なら多少は耳に入っただろう。けれど今の彼女は、他人の感情を最優先にはしない。いちばん大切なのは、いつだって自分自身だ。玲奈は顔を上げ、冷えた眼差しで言い放った。「小燕邸は、私の家じゃないわ」智也はさらに声を落とし、低く告げる。「無理に追い詰めたくはない。だが、俺の我慢を試すのはやめろ」玲奈は少しも怯まず、逆に鋭く怒鳴り返した。「どいて」そう言うと、智也が道を空けるかどうかなど構わず、心晴の部屋へ戻ろうとした。だが一歩踏み出した途端、智也が乱暴に彼女の腕を掴んだ。力が違う。玲奈はあっけなく引き戻された。その拍子に、手に持っていた薬が地面に落ちた。智也もそれに気づき、玲奈を一度見てから、興味を抑えきれない様子で落ちた箱を拾い上げた。玲奈は奪い返そうとしたが、片手は怪我をしていて、結局取り返せない。智也は箱を手に取り、表記された正式名称を読み終えた瞬間、すべてを悟った。薬を握る手に力がこもり、目つきが一気に冷える。玲奈を見る視線は氷のように鋭く、掠れた声で問い詰めた。「......これ、飲むのか?」その表情を見て、玲奈は彼が勘違いしているとすぐ分かった。けれど余計な説明をする気にはなれず、短く答える。「そうよ」智也は目を細め、声が不意に荒くなる。「誰のために飲む?」玲奈は顔を上げ、容赦なく挑発した。「あなたに関係ある?」智也の黒い瞳が、瞬きもせず玲奈に据わる。一歩、また一歩と迫ってきて、玲奈は後ろへ下がるしかない。そして背中が壁に当たり、退路が消えたところで、智也はぴたりと足を止めた。俯いた彼の影が大きく落ち、玲奈を飲み込む。掠れた声で、冷たく詰問した。「拓海か?それとも昂輝?......ま
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