拓海はいつもこのように軽い感じだった。玲奈がすでに結婚して子供もいる女性であるのに、誘うような言葉をかけてくるのだ。彼なら雌であれば他の動物にでも、思わず口笛を吹いて声をかけるかもしれない。このようなタイプの男だから、その口から出てくる言葉など信じられるだろうか。しかし、今は拓海の人となりがどうであれ、昔彼女を助けてくれた事実には嘘偽りなどないのだ。その恩を玲奈はずっと忘れていない。彼女の車の隅のほうに縮こまり、拓海が山のように彼女の体に覆いかぶさっていた。彼の容姿はかなり良いのに、道徳的にどうかと思うようなことをしてくるのだ。この頼りない男を前にして玲奈は思った。完全に無視してしまえば、この男は萎えてしまうのだろうか。いっそ、彼女は目を閉じて、拓海の話など聞こえないふりをした。田舎の街灯はとても薄暗く、ほのかな光が車の窓から玲奈の美しい顔に降り注いだ。彼女が目を閉じた時、その長く艶やかなまつ毛がふるふると小刻みに震えていて、怖がっているのは明らかだった。拓海はそれを見て、突然優しい笑みを浮かべた。彼は手を伸ばし、優しく鳥肌の立っている玲奈の顔に触れた。しかし、玲奈が自分に対して恐れを抱いているのを思い、我慢できずに笑い声をあげた。本気でそこまで怖がっているのか?女性に対して、拓海は昔から優しく聞こえのよいセリフばかり吐いているというのに。容姿がイマイチな女性の場合は、スタイルが良いと褒め、あまりスタイルが良くない女性には、瞳が綺麗だと褒めた。目の小さい女性には笑うととても優しいと褒め、あまり笑わない女性にはクールでカッコイイ女性だと……だから、多くの女性たちは、彼のことをイケメンで格好良く、ユーモアがあって面白い人だと褒めていた。そんな彼のことを怖がる女性は、玲奈がはじめてだった。それを考え、拓海はやはり体を起こして姿勢を正し、玲奈に触るのはやめておいた。しかし、この時、車の外に突然人影が現れ、助手席のドアが瞬時に外から開けられた。「玲奈、降りて」昂輝が来たのだ。その声を聞いて、玲奈は目を開け、昂輝の手を掴んで素早く車の外へ降りた。彼女は、のこのこと拓海の車に乗り込んだわけではなく、拓海が田舎には蚊が多いから、車の中で話そうと言ったからだった。それで玲奈は車に乗った
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