再び視界が閉ざされ目の前に壁とドアが現れエレベーターが止まった。〈♪ゴリゴリーン〉 ドアが開いて、「最上階でございます。案内の者がお部屋までお連れします」 箱に外はふかふかの深紅の絨毯で、そこに新しい黒服サングラスが立っていた。「こちらでございます」 と正面の巨大な鋼色の扉に向って歩き出し、冬凪とあたしはそのすぐ後に、鈴風は少し遅れて付いてきた。廊下全面の扉は観音開きになっていてそこに辻沢の町章が彫刻してある。「ここって公舎なの?」 独り言のつもりだったのを黒服サングラスが受けて、「いいえ、辻川町長の私邸になります」 と答えた。そして胸のピンマイクに向って何やら言った。「少々お待ちください」 その場に佇立する。 応答を待っている間に重厚な扉の脇に牛乳瓶が数本並べてあるのに気がついた。こんな高級マンションに牛乳配達が来るんだろうか?そう思ったけれどその瓶は、20年前の辻沢でミワさんに頼まれてV化した調レイカに投げつけたものと同じだった。今も青墓のどこかにいる辻沢ヴァンパイアの母、遊女宮木野の乳、辻沢醍醐だ。人の生き血の代わりにもなるという辻沢ヴァンパイアの命の源。辻川町長もヴァンパイアだからな。でもこの牛乳配達って誰がしてるんだろう?「どうぞお入りください」 観音開きの扉が重々しく開いた。恐る恐る中に入る。暗い室内の正面にスポットライトが落ちていて、その下にゴスロリファッションの少女がお辞儀をしていた。「「「こんにちは」」」 ゴスロリ少女は無言で頭を上げる。その顔色は透き通るようで青い血管が浮いている。伏目で見にくかったけど瞳が金色で口元に銀色の牙が覗いるのは分かった。それは明らかに屍人の顔だった。突然背後で、「ヒッ!」 と短い叫び声がした。振り返ると鈴風が口元を両手を覆い目を見開いていた。恐怖に我を忘れ
Last Updated : 2025-10-07 Read more