All Chapters of ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文): Chapter 381

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3-113.真六道園の庭師(3/3)

 あたしの後ろにいたのはゼンアミさんではなく、小柄な体形はしていたけど、シルエットではなかった。頭はツルツルで茶人のような和装をして顔はおじいさんだかおばあさんだかわからない人。人相がめっちゃ悪いんだけど。「トラギク!」 トラギクは築山に飛んで言った。「藤野姉妹、お久しゅうございます。御覧ください。見事な石の立ち姿を。これもみな、辻沢の神、志野婦のおかげでございます」 そう言いながら池水の上を歩き出す。あたしたちは植栽に隠れながら、相手の出方を伺う。トラギクはあたしたちから目を離さないで、クルクルと水面を滑っている。「ところで、藤野姉妹はどうやってここに来たのですか?」 トラギクが懐に手を入れて何かを取り出した。「そもそも、これがなければここへは来られないはずですが」 握った拳を差し出して上に向けそれを開いて見せた。その小さな掌には肌色の枝のようなものが乗っていた。右手の薬指がチクリとした。あれはあたしの薬指なのだ。「それに、どうしてクチナシ衆などと一緒なのです?」 その黄色い瞳で鈴風のことを睨みつける。鈴風も最大限の警戒をしているようで、植栽に隠れる場所を探している。「なるほど、道理で西の果てで石が立たぬという報告があったのか。貴様ら大殿の贄に一体何をした?」 そう言い放つとトラギクは両腕を大きく広げ、それを前後にゆすって呪を唱えだした。「出よ、地獄の亡者よ。閻魔の斗卒よ。この者どもを奈落へ連れて行け」 地鳴りがして植栽が揺れ、湿った風が吹き土埃が舞い、六道園の地水が沸き立ち、真っ赤な色に染まっていく。すると、その血の池の中から、ひだるさまが現れて来たのだった。それも一匹でなく、数限りなく。「これは無理でしょ。逃げるよ」 あたしが先頭で走り出す。鈴風と冬凪がそれについて来る。「逃げるってどこへ?」「あそこに、響先生の高級車ある」
last updateLast Updated : 2025-11-11
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