冬凪とあたしを乗せたリアカーを引いて、鈴風の自転車は枯れ葉の水面へ向かってジェイコブス・ラダーを駆け上がって行く。降り注ぐキラキラの光の粒は、鈴風の真紅の制服に金のスパンコールを添え、冬凪の全身を洗ってリアカーの床を滑り落ちてゆく。「突っ込みます!」 鈴風が叫ぶ。衝撃に備えようして冬凪の腰に手を回しただけなのに、「夏波。くすぐったいよ」 それ今言う?「衝撃、来ます!」 鈴風の言葉が終わらないうちに自転車は枯れ葉の水面に突っ込んだ。 衝撃は光の爆発だった。目に入った純白の光が後頭部まで突き抜けた感じがした。頭がクラクラする。目が開けられない。地面に着地したらしく、リアカーがタイヤからの振動で上下に激しく揺れた。鈴風がブレーキをかけて自転車を止める。つんのめってようやく目を開ける。「みなさん、大丈夫ですか?」 振り向いた鈴風は瞳の色も口も元に戻っていつもの可愛らしい顔になっていた。口の周りにちょっと血がついてる。それを仕草で教えてあげると、鈴風は真紅のスカートのポケットからハンカチを取り出して口の周りを拭った。そしてあたしに向かって口を突き出し取れてるか見せきた。 それであたしは、十六夜のことを思い出した。十六夜は10円アイスを食べた後、必ず口を見せてきた。知り合ったばかりのころ、口の周りをベタベタにしてアイスを食べてるので教えてあげてたら、いつからかアイスを食べ終わると口を拭って、「ん」 と突き出してくるようになったのだった。「取れてるよ」 十六夜の時のように鈴風に教えてあげると満足そうに頷いた。その表情もなんだか十六夜っぽくてなごむ。エニシを結んだからなのか、鈴風との距離が縮まった感じある。「ここは?」 あたりはほの明るく少し肌寒くて夜明け前といった感じだった。景色も来た時とは全く違っていた。枯れ葉の海はなく、坂道のよ
Huling Na-update : 2025-10-30 Magbasa pa