「もちろん」私はうなづいて、キッチンに行こうとした。「いいよ、自分で入れるから。良かったら結姉も一緒に飲もうよ。いいでしょ?」颯君の人懐っこいその一言に癒され、何だかホッとした。「……そうね。じゃあ、私ももらおうかな」確かにまだ胸の辺りがモヤモヤする。だけど、今は颯君の優しい気持ちに甘えようと思った。キッチンの中で、颯君はコーヒーメーカーを使った。「はい、結姉。どうぞ」「ありがとう。いただきます」「きっと美味しいよ、俺がいれたコーヒー」「……うん、そうだね」温かいコーヒーに口をつける。「どう?」「美味しい。とっても」「良かった」「誰かにいれてもらうコーヒーって、久しぶりかも。いつも自分でいれてたから」「そうなんだ」「うん。颯君のコーヒー、すごく美味しいし、身も心も癒される」「当たり前だよ、だって……」「……?」「結姉に美味しいって言ってもらいたくて、心を込めていれたんだから。他の誰でもない、結姉に」いいのだろうか、私なんかがこんなに優しい言葉をもらっても……そんな気持ちが胸に押し寄せる。「あ、ありがとう……」私達は、今、広いダイニングテーブルにたった2人。向かい合って座っている颯君は、あまりにもオシャレでカッコ良い。何日一緒にいても、まだまだこの状況には慣れない。でも……さっき見た旦那と智華ちゃんは、もうすっかり慣れた感じだった。私には見せない笑顔。あんな雰囲気で話せる関係って……「あのさ、この前の話しだけど……」颯君の声で我に返った。旦那のことなんて、今は考えたくないのに……「えっ、ん?この前の話……って、何の話だった?」「忘れた?」「えっ……」「俺さ、やっぱり結姉に絵のモデルになってもらいたいんだ」「あ……モデルの話……」「そう」私は、そのことに対してすぐに返事ができなかった。戸惑ってる私を、颯君がずっと見ている。整った眉にキラキラした瞳。色白で、少しハーフモデルのような……とっても綺麗な顔をしている。そんな颯君にこの私が絵のモデルを頼まれているなんて、やっぱり信じられない。「俺、結姉のことキャンバスに描きたい。絶対に……描きたいんだ」颯君は、まるでわがままな子どもみたいに言った。どうしてここまで真剣に、こんな私なんかを描きたいと言ってくれるのか……私には理解できなかっ
Terakhir Diperbarui : 2025-06-29 Baca selengkapnya