Lahat ng Kabanata ng 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~: Kabanata 31 - Kabanata 40

71 Kabanata

2 真っ白なキャンバス

颯君は、まず、鉛筆でデッサンしているようだった。私を見て、キャンバスに向かって描いて……そして、また私を見る。しばらくはその繰り返し。鉛筆を動かす指がとてもしなやかで、なぜかその手に男性としての色気を感じずにはいられなかった。真剣な眼差しの颯君――今日はとても大人びて見える。きっと、この人の魅力は、絵を描いている時に最大限に引き出されるのかも知れない。「結姉。すごく……綺麗だよ」無防備な心に突然飛び込んできた言葉に驚く。目が合っている状況が恥ずかしい。「お、お世辞は言わなくていいよ」「お世辞なんか言わない。本当に綺麗だ……」今度は、キャンバスに描かれた私を見ながら言った。「大人を……からかわないで。私、綺麗なんかじゃないし。旦那も言ってたでしょ?私には魅力が無いって」思い出したくないことが勝手に頭に浮かんだ。「……」「それに、私にお世辞を言ってもお家賃は安くならないわよ~」思わず言い慣れない冗談を言って笑ってみせた。これは、完全なる照れ隠しだった。なのに、颯君は何も言わない。「ちょっと、颯君、何か言ってよ。バカなこと言って、恥ずかしいじゃない」「……ごめん」「ねえ、颯君。朝もだけど、今日はなんか変だよ。どうしたの?」「別に変じゃないよ、俺は。朝は、健太さんが結姉のことをバカにしたから」旦那は、私を女としては見ていない。若い時は、もう少し大事にされてたのに……今の私のことは、ただのおばさん扱い。「仕方ないのよ。本当のことだから。あの人は、智華ちゃんやひなこちゃんみたいな若くて可愛い子だけが女だと思ってるんだから」「仕方ないなんて……」「颯君が心配しなくても、私は大丈夫なの。実際、自分が若い子とは比べ物にならないって……ちゃんとわかってるから」「どうして?どうして結姉がそんなこと言われなくちゃならないんだ?」「……颯君、やっぱり変だよ。朝のことはもう……いいの。あっ、私が今言い出したから気にさせちゃったんだよね。ごめん、ごめん。冗談のつもりだったの。本当よ」「結姉……」突然、颯君が立ち上がった。「えっ?」次の瞬間、颯君は、座ったままの私を大きな腕で包むように優しく抱きしめた。嘘……ひざをつきながら、更に腕に力を込める颯君。「……やめて……ちょっとダメだよ。離して……」今のこの状況が理解でき
last updateHuling Na-update : 2025-07-01
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3 真っ白なキャンバス

ううん……違う、私、わざと逃げずにいるの?嘘でしょ?「俺のこと、嫌い?」「えっ?」「答えられないよね。結姉は、健太さんの奥さんだし、俺はただの同居人だから……」「ちょっと颯君、本当にどうしちゃたの?おかしいよ」「答えて。ねえ、結姉、答えてよ」必死に聞く颯君に動揺が隠せない。ドキドキして、心臓がおかしなことになっている。「そんなこと……。ごめん、私、何て言えばいいのかわからないよ……」颯君のことをただの同居人だと思っていたなら、きっと、この腕を無理やりほどこうとしたはず。でも、私はそうしなかった。もしかして私は颯君を好きになったの?本当に……この感情がわからない。胸がこんなに熱いのに、こんなにも苦しいのに、どんな言葉で表せばいいのか……「ごめんね。もう……離してくれるかな……」その言葉で、ようやく颯君はそっと私から離れた。「……ごめん」「……ううん。きょ、今日のモデルはこれで終わり。さあ、夕食の準備しないとね。カレー美味しくできたと思うから、みんなで食べましょ」「……」「後で降りてきてね」私は急いで颯君の部屋を出て、そのドアを閉めた。呼吸が上手くできない。この胸の高鳴り、このまま死んでしまうんじゃないかと思うほどだった。今日、私は、颯君と祥太君に抱きしめられた。同じ日に2人から……これは夢?だけど、2人の感覚がまだ体に残っている。だったら、夢じゃなくて現実なの?もしかして、私、みんなにからかわれてるの?みんなして私を?ダメ、もう……頭の整理ができない。とにかく、今日のことは一旦忘れよう。冷静になって、いつもの自分に戻らないと。私は、何も無かったかのように、2人とのことを無理やり胸の奥にしまい込み、階段を降りた。
last updateHuling Na-update : 2025-07-02
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1 夫婦って何だろう?

夜になって、智華ちゃんが帰ってきた。「おかえりなさい、智華ちゃん」「あの、健太さん知りませんか?」「え、ああ。あの人なら部屋にいると思うけど……」挨拶さえもなしに、旦那のことを私に訊ねるなんて……「ありがとうございます。今日は健太さんと食事に行くので夕食は要りません」「旦那と?」あまりに淡々と吐き出されたセリフに、思わず目が点になる。「はい。何か問題でもありますか?」智華ちゃんの高圧的な態度に驚いた。「ねえ、智華ちゃん。休日は一緒に食事しなくてもいいんだけど、食べないなら、もう少し早く知らせてくれるかな?連絡がなかったから、智華ちゃんの分も用意しちゃったの」「さっき健太さんから連絡もらって、食事に誘われたので」えっ……旦那が誘った?「……そ、そうなんだ。旦那の誘い、受けたんだね」「断る理由なんてないですから」「……で、でも」「ああ、おかえり。智華ちゃん」「あ、健太さん!すみません、遅くなりました」「全然いいよ。こっちも急に誘ったりしてごめんね。じゃあ、行こうか」旦那には私のことが見えていないのだろうか?あまりに無神経な会話に、私はたまらず旦那に声をかけた。「待って、あなた、智華ちゃんは大事な同居人よ。しかもお嫁入り前の若い娘さん。そんな女の子を誘うなんて……。あなたは仮にも既婚者なんだから」そう言いながらも思った。私も、祥太君と颯君に抱きしめられたんだ……私だって、既婚者なのに。「智華ちゃんとは気が合うから、ただ食事して話すだけだろ。変なこと考える方がおかしい」あなただから心配するの、と言ってやりたい。「私、健太さんと話してると楽しいです。もっといろんなことを教えてほしいって思ってます。だから……食事に誘ってもらって嬉しいんです」旦那を見るキラキラした目。本当に美人な智華ちゃん。こんな若くて綺麗な女の子に「好き」なんて言われたら、旦那はきっとイチコロだろう。間違いなく……そういう関係になるに違いない。万が一、そんなことになったら……智華ちゃんの親御さんになんて言い訳すればいいのだろうか。それに……旦那は、もう、私のことなんて1ミリも眼中にないんだろうか……1ミリさえも。今さら考えても仕方のないことだけど、どうしてこんなことになってしまったのだろうか――百貨店の時計売り場で働く旦那と出会ったのは7
last updateHuling Na-update : 2025-07-03
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2 夫婦って何だろう?

だからだろうか、こっそりその場で連絡先を聞かれ、すごく驚いたけれど、私はあっさり教えてしまった。そんな刺激的な出会いにワクワクしたのを今でも覚えている。今考えれば、旦那は……そういう軽い人だとわかるけれど、その時はまるでドラマみたいな展開に心が踊っていた。それから、時々2人で会うようになり、デートを重ね、告白されて……私はすごく幸せな日々を過ごしていた。毎日がバラ色で、彼氏、彼女として、明るい未来を想像できる関係になれた。優しくしてくれる彼との結婚を夢見るようになってからは、わりとすぐに結婚に向かって話が動き出し、1年後には籍を入れることができた。婚姻届を出した時、私達は夫婦になれたんだ――と、嬉しくて涙が溢れた。結婚式はしていない。ウエディングドレスを着ることはできなかったけれど、そんなことはどうでもよかった。これから先、お金が貯まれば……いつか、素敵なドレスを着て簡単な式を挙げられる。そう信じていた。私が製薬会社三井グループの娘だってことは知らなかったから、お金目当てでなかったことは間違いない。確かにお金目当てではなかったけれど……でも、旦那は、お金よりも女性が好きな人だったんだ。結婚してしばらくして、旦那の態度がだんだん変わっていくことに最初はとても戸惑いを感じていた。暴力があったわけではなく、私に冷たく当たるわけでもない。夫婦関係も……たまにはあった。だけど、明らかに女性の影がチラつき出し、私の心はいつも動揺していた。月日が経つにつれ、いよいよ私にもわかるような浮気が始まった。きっと相手は1人や2人じゃない――私にもバレているのが分かっていて、わざと遊んでいると思うと、とても悲しくて……つらかった。胸が張り裂けそうになり、思い切って私が問い詰めた時、開き直った態度で彼は言った。「魅力の無いお前が悪い」「結婚しているからといって、稼ぎの無いお前が俺を束縛するな」「女として終わってる」と。子どもの頃に母を亡くしている私には、相談する相手もいなくて、ただ我慢する毎日に心が折れそうだった。そんな私にパパは何となく気づいていたみたいで、「つらいことが多過ぎたら、いつでも帰ってきなさい」と、時々私に優しく声をかけてくれていた。でも、私は……帰らなかった。ううん、帰れなかった。だって、大好きなパパにこんなことで心配をかけ
last updateHuling Na-update : 2025-07-04
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3 夫婦って何だろう?

なのに……どうしてだろうか。川崎君には会いたいとは思わない。旦那に裏切られ、心を失くし、どうでもいい人生を送っていたはずなのに……私は、今、同居人のおかげでほんの少しだけ、明るい光の方に向かって歩き出している。確かに、まだ自分の感情がよくわからない。目の前にいる旦那と智華ちゃんに対する気持ちだって、嫉妬なのか……?私はこんな最低な男のためにヤキモチを妬いているの?いや、違う――そんなつまらないものじゃない。祥太君や颯君の言葉も胸に引っかかったままで……本当に何なんだろ……私。いろんな感情の中で、フラフラ気持ちが揺れている。自分が自分でこんなにもわからなくなるなんて――何だか少し、怖い。「わかった。でも次からは夕食が要らないなら早めに知らせてね。あまり遅くならないで。智華ちゃんは……ご家族からお預かりしている大事な人なんだから。行ってらっしゃい」私はそれだけ言って、2人を見送ることはせずにさっさとキッチンに引っ込んだ。「あの……」振り向くとそこには智華ちゃんがいた。「ど、どうしたの?」「あ、あの……」「あの人は?」「外で待っててもらってます」「何か……話たいことがあるの?」「……私……」「……?」「私、健太さんのこと好きかも知れません」「えっ?」「この2ヶ月健太さんと一緒にいてわかりました。すごく胸がドキドキするし、そばにいると何だか安心できるっていうか……」わざわざキッチンまで私を追いかけてきて、急にそんなことを言われても困る。私はいったい何と答えればいいの?「私、本気です。一応、ちゃんと言っておこうかと……」わざわざ奥さんに宣戦布告をするなんて……だけど、夢見心地の智華ちゃんが、まるで旦那と知り合った頃の自分のように思えた。何も理解しようとせずに、旦那の良い部分しか見ていなかった、あの頃の自分に――ただ、キラキラした恋愛物語のヒロインでいたかっただけなのに、私達は最悪なエンディングを迎えてしまった。「智華ちゃん。それ、よく考えた方がいいよ。今は良いかも知れない。だけどね、あの人は……」「お2人が上手くいってないのはわかります」「えっ」「健太さん、何だか可哀想です。奥さんに大事にされてなくて」大事にされていないのは、私の方だ。智華ちゃんは何もわかっていない。それとも、あの人は智華ちゃん
last updateHuling Na-update : 2025-07-05
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1 それぞれの思い

夕食の支度が整い、私は祥太君と颯君を呼んだ。今日はお義母さんも夕食はいらないし、文都君は帰りがいつになるかわからないと連絡があった。「文都君の分は取ってあるから、ハンバーグたくさん食べてね」祥太君と颯君との3人の食事。いつもなら楽しいはずなのに、何だか今日は妙に落ち着かない。なぜだろう、少し重い空気にドキドキしてしまう。「颯、結菜ちゃんの絵はどうなってるの?」食べ始めてすぐに祥太君が口を開いた。「……今日から描き始めてる。ね、結姉」「う、うん。そうだね」頭の中に、一瞬、颯君に抱きしめられた光景が浮かび、胸がキュンとなる。「そうなんだ。仕上がるまでにどれくらいかかるの?」「う~ん、それはちょっとわからない。きっと時間はかかるかな」「そっか……絵は大変そうだね。時間をかけて仕上げればきっと良いものが描けるんだろうね。俺にはそんな才能はないから……すごいと思う。尊敬だよ」「翔太君には素晴らしい才能があるじゃない。俺には……一瞬で人の心を虜にする演奏はできないから」「颯、それはどういう意味?なんか、トゲがある」一瞬で空気が張り詰める。せっかく和んだ雰囲気が、再び重くなった。「トゲ?別に何の意味もないし。そういう風にとる方が変だと思うけど」「……」「……」2人の沈黙がたまらなくて、私は立ち上がって言った。「ね、ねえ、ハンバーグおかわりいかが?今日のハンバーグは結構頑張って作ったから特別美味しいでしょ?」「……ありがとう。結姉、おかわりもらうよ。自分でやるから」そう言って、颯君は自分でハンバーグをお皿に盛り付けた。颯君は料理が好きみたいで、時々食事の支度を手伝ってくれる。惣菜コーナーでのバイトも、そういう理由があるんだろう。「結姉。このハンバーグ本当に美味しい。次、また作り方教えて」「う、うん、そうだね。手伝ってくれると助かるよ」「いつでも手伝うよ。結姉と一緒に料理できたら楽しいだろうな。いろいろ教えてよ、ハンバーグだけじゃなくてさ、カレーとか……煮物とかも。自分でも作れるようになりたいんだ」「すごいじゃない。自分で料理できると楽しいと思うよ。……あっ、翔太君もハンバーグのおかわりどう?まだたくさんあるから」「……いや、もう、いいよ。ごちそうさま。すごく美味しかったよ。結菜ちゃん、俺、明日は1日中楽団の練習で、それから
last updateHuling Na-update : 2025-07-06
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2 それぞれの思い

「ただいま、文都君。すぐご飯にするね」「ありがとうございます」「おかえり、文都君」「ただいま」祥太君と颯君は、文都君と言葉を交わし、お皿をさげてからそれぞれの部屋に戻った。私は、文都君の食事を急いで用意した。「結菜さん……あの2人、何かあったんですか?」「えっ?どうして?」「……何かいつもと違う空気を感じたので」文都君の鋭さ……というか、誰にでもわかるほど空気が沈んでいたのかも知れない。「ううん、何でもないよ。気にしなくて大丈夫。2人とも疲れたんだと思う」「そうですか……」「はい、どうぞ。ハンバーグおかわりしてね。頑張って作ったから食べてもらえると嬉しいな」2人とも……あまり食べなかったから、思ったより余ってしまった。たくさん食べてほしかったけれど……「ありがとうございます。お腹すきました。結菜さんはもう食べたんですか?」文都君が優しく聞いてくれた。「うん、食べたよ。お先にごめんね」「いえ、それは全然いいんです。僕が遅くなったんですから。でも、もし良かったら……もう少しここにいてくれませんか?一緒に話せたら嬉しいです」「うん。もちろん……ここにいるよ」文都君は、寂しがり屋さんなのかも知れない。私も、昔は誰かと食べるのが楽しかったのに、いつの間にか1人で食べることが増えていた。家族団欒で食事をすることに憧れていた私は、その状況が寂しくてすごく嫌だった。なのに、気づけばそういう環境に「慣れ」てしまった自分がいた。「ハンバーグいただきます」「はい、どうぞ。たくさんあるからゆっくり食べてね」「ありがとうございます」1口1口美味しそうに食べてくれる文都君。見ているだけで幸せな気分になれる。「これ、本当にすごく美味しいです」「嬉しい。遠慮なくいっぱい食べてね」「はい。母も、料理の中ではハンバーグが得意でした。でも、結菜さんのハンバーグの方が断然美味しいです」「やだ、そんな嬉しいこと言ってくれて。でも……お母さんのハンバーグの方が絶対美味しいはずよ。まあ、お世辞でも褒めてくれることは有難いけどね」「お世辞じゃないです。本当に美味しいから。今考えたら、母のハンバーグは……子ども向け……だったと思います」「お母様にとって、文都君は大事な子どもだから、そんなふうに感じたのかもね。……私の母もハンバーグ上手だったなぁ」懐
last updateHuling Na-update : 2025-07-07
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3 それぞれの思い

「これ……帰りに買いました。良かったら食べて下さい」私は、渡された紙袋の中を見た。「クッキーじゃない!これ、すごく美味しそう」「クッキー、好きですか?」「うん。好きよ、とっても」「そ、そうですか……。だったら、良かったです」「わざわざ買ってくれたんだね」「甘いものを食べたらホッとできるかなって……思いました」文都君は照れたように微笑んで、キッチンを出ようとした。「文都君、ありがとう。嬉しいよ。いただくね」私は、その後ろ姿に向かってお礼を言った。文都君は、何も言わず、コクっとうなづいて、振り向かずに出ていった。優しい3人――祥太君も、文都君も、颯君も……3人には最初からドキドキさせられっぱなしだ。この同居を始めて何だか毎日に張りが出て、趣味や家事が楽しいと思えるようになった。いろんなことに感謝したり、感情を表せたり、そんな当たり前のことも、また少しずつできるようになってきて、それは間違いなくみんなのおかげだと思っている。旦那の態度に凍りつき、閉ざしていた心がどんどん溶けていくのがわかる。本当に……みんな、ありがとう。夜になると、みんながバタバタと帰ってきて、順番にお風呂に入ったり、リビングにいたり、部屋にこもったり……それぞれが好きに過ごしていた。旦那と3人の男子達は、2階のバスルームを。女性陣は、1階のバスルームを使っている。ビールやワインセラーのワインを開けて飲んでもらうのも自由にしていた。未成年のひなこちゃんは、もちろんアルコールは無理だけれど。ただ、みんなはあまりアルコールは飲まないみたいで、ひたすら旦那が飲んでいた。今、リビングにはひなこちゃんがいる。食事を終えて帰ってきて、ソファでゆっくりくつろいでいた。声をかけようと思って近づいたら、何か食べていた。「えっ、ひなこちゃん……」それは、文都君からもらったクッキーだった。「あ、大家さん。このクッキーすごく美味しいですね」「……えっと、あの……」もうすでに半分以上は食べてしまっていた。「大家さん、どうしたんですか?驚いた顔してますけど」可愛い瞳で私を見つめるひなこちゃん。男子が見たらきっとみんなキュンとするだろう。「ごめんね、ひなこちゃん。これは私の……」「えっ?これって大家さんのクッキーなんですか?」そう言って、ひなこちゃんはクスクス
last updateHuling Na-update : 2025-07-09
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4 それぞれの思い

「えっ……。そうね、ごめんなさい。でもね、これはは人にもらったクッキーなの。だから、私も食べないと失礼かなって……」確かに大人気ないことを言ってしまっている。だけど……やっぱりこのクッキーは他の人には食べてほしくなかった。「もしかして颯君にもらいました?」「ち、違うよ」「そうですか……。まあ、でも、食べられたくなかったらどこかに隠せばいいじゃないですか?」ひなこちゃんは、少しあきれたように言った。その視線が冷たくて痛かった。「クッキーが食べたいわけじゃないの。他のクッキーなら食べてもらってもいいんだけど……」「いやだ、大家さん。そんな意地悪言わないでほしいです。私が泥棒みたいだし、悪いことしてるみたいで……悲しいです」「泥棒だなんて思ってないよ。気に障ったらごめんね」上手く気持ちが伝えられないことと、いつまでも大家さんと呼ばれてることが急に寂しくなった。私は……嫌われているのだろうか?こんな関係のままだと、ひなこちゃんには、私がお母さん代わりだとは認めてもらえない気がする。「そんなに食べたいなら、クッキー返します」ひなこちゃんは、私に食べかけのクッキーの袋を突き返した。「……」「おばさんになると意地汚くなるんですね。たかがクッキーくらいで。私、おばさんにはなりたくないです。……部屋に戻ります」胸に刺さる冷たい言葉。ひなこちゃんみたいな若くて可愛い女の子にしたら、私なんてただの卑しいおばさんにしか見えていないのだろうか。ますます悲しくなる。文都君にもらったクッキーを見て、確かにクッキーを置いていた私が悪いんだ……と、自分に言い聞かせるしかなかった。きっと、いつもの食事のお礼に買ってきてくれたのだろう。思いの詰まったクッキーに、何だかほろりとなった。私は大きなため息をついてから、自室に戻った。
last updateHuling Na-update : 2025-07-09
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1 つきまとう影

次の日の朝は、綺麗に晴れていた。今日は日曜日――私は、いつものようにみんなの予定を聞いて1日のスケジュールを組み立てた。祥太君は、1日中楽団の練習。文都君は、大学に行って先生に特別授業を受ける。颯君は、近くのスーパーで惣菜コーナーのバイト。智華ちゃんは、習い事の掛け持ち。ひなこちゃんは、カフェでバイト。旦那は、仕事のあと飲み会。旦那のお義母さんも相変わらず友達と出かけるようだ。今日は……夕方まで私1人だけ。誰もいない家の中、掃除もいつもより綺麗にしたい。食事の材料を買い出しにも行きたい。ガーデニングも……と、いろいろ考えてしまう。「結菜ちゃん、行ってくるね」「結菜さん、行ってきます」「結姉、行ってくるから」男子3人を送り出したあと、旦那、ひなこちゃんとお義母さんも出ていった。最後に「行ってきます」と、智華ちゃんが声をかけてくれた。気まづい雰囲気は特に出さず、私は智華ちゃんに向かって笑いかけた。昨日の智華ちゃんと旦那の談笑するシーン、智華ちゃんの告白……が、一瞬にして頭によぎった。あの2人、あれからどうなったんだろう?帰りが遅くなっていたようだったから、私は先に寝てしまったけれど……今朝もみんながいたから何も話せなかった。もしかしたら……ううん、いくらなんでも……旦那も、大事な同居人に手を出すほど、さすがにそこまでバカじゃない……と思うけれど……旦那を信じたいというより、大事な娘さんを預かっている立場として「何もなかった」ことを信じたかった。確かに不安ではあったけれど、そのことは聞けなかった。昨日、2人でホテルに行ったの?なんて――「気をつけてね。習い事、大変だけど頑張ってね」「……別に大変ではないです。自分のためですから」「そ、そうだよね。智華ちゃんは色んな習い事ができてうらやましいな」「それは……イヤミですか?私は遊んでるわけじゃないです。うらやましいと思うってことは、私がラクをしているって思ってるんですね」「ちょ、ちょっと待って。そんなことは思ってないよ。女性らしい習い事ばかりだから、私もやってみたい……っていう憧れだよ。今は無理だけど、いつかできたら私も何かしてみたいな」「……私は女性として輝いていたいです。健太さんに気に入ってもらえるような女性になりたいから」ドキっとした。それでも、
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