「なあ、頼むよ。結菜と会って話したい。顔を見て話そう」その時、ずっとズルズル引き伸ばしているより、1度きちんと話した方がいいかも知れないと思った。「……そうね。わかった。私もちゃんと話がしたい」「まさか……」「え?」「もしかして……別れ話じゃないよな?」「……」「別れ話なのか?俺達、別れるのか?そんなこと、嘘だろ」「ちょっと、冷静になって」「冷静だよ、俺は。結菜が変な感じにするからだろ。別れ話だったら俺、絶対聞かないからな」川崎君はとてもイライラしているようだった。言い方が怖い。「あのね、川崎君。私、よく考えてみたの。旦那といろいろあって、私は心を病んでつい川崎君に甘えてしまった。でも、それが間違いだったってこと、今頃になって気づいたの。もちろん、相談に乗ってもらったことには感謝してるの。でも……」「結菜は、俺と不倫関係を解消したいってこと?俺と一緒にいたくないのか?」「ごめん。これ以上は続けられない。私、これからの人生は明るい道を歩きたい。新しい気持ちで心機一転やり直したいの」「は?俺は?俺はどうしたらいいんだよ。お前だけまともな道を歩くのか?いまさらだろ?お前は不倫したんだぞ」「……」悲しいけれど、何も言い返せない。「結菜、俺にはお前が必要なんだ。別れるとか言わないでくれ。ずっと一緒にいよう」川崎君……どうしたっていうの?今までそんなに自分の気持ちを全面に押し出す人じゃなかったのに。「本当にごめんなさい。川崎君とはもう終わりにしたいの。会っていろいろ話し合ったところで、私の気持ちは変わらないから……。だから、この電話でさよならしたい」「嫌だ!結菜と別れるなんて。嫌だよ、俺。俺はこんなに結菜のことを」「お願い、それ以上は言わないで」「結菜!あんまり俺を怒らせない方がいいぞ!調子に乗るな!」私のセリフに被せるように怒鳴った川崎君の言葉が胸に突き刺さる。背筋がぞぉっとする感覚に襲われた。「ね、ねぇ、どうしちゃったの?」川崎君のこんな声を、私は初めて聞いた。「結菜がその気なら俺にも考えがある」「か、考え?」「ああ。俺がお前を救ってやったのに、お前は俺を捨てるのか?お前にそんな権利あるのか?」「……権利とか言われても」「結菜には俺を捨てる権利はない。俺がいなかったら、お前は……」そう言って、電話が切れ
Last Updated : 2025-07-10 Read more