この動物園はそこまで有名な場所というわけでもない。 それなりに広さはあるけれど、キリンやライオンなどの大型な動物は少なく小動物の触れ合いコーナーがメインの動物園だ。 小学生が初めて来るにはピッタリ、といった感じの場所。 そんな中でも唯一の大型動物が象で、園の目玉とも言える。 さくらちゃんが行った方向にはその象舎(ぞうしゃ)があるので、取りあえずそこへ向かうことにした。 特に何も話さず歩いていたけれど、あたしは思い切って聞いてみることにした。「あのさ、花田くん。聞いてもいいかな?」「え? 何を?」 さくらちゃんは花田くんのプライベートなことだから話せないと言ったけれど、やっぱり気になるし、あんなことを言った理由を知らないとあたしが花田くんを許せない。 だから、聞くことにした。「昨日どうしてさくらちゃんにあんなことを言ったの? さくらちゃんは理由を知ってるって言ってたけど、花田くんのプライベートのことだから言えないって。……どうしても無理なら言わなくていいけど、出来れば教えて欲しいなと思って」「ああ……宮野さんは知ってるんだっけ……」 そう言って視線を落とした花田くんは、しばらく無言で足を進めたあとポツリポツリと話し出す。「そんな、大した話じゃないんだ。……ただ、俺がバカだっただけで」 中学の頃の話だよ、と苦みを抑えるような微笑みで語りだした。「中二のとき、俺のこと好きになってくれた女の子がいてさ。でも俺、その子はタイプじゃなかったし、友達以上には思えなかった。それでもずっと好意を向けられてたら気にもなってくるし、悪い子じゃなかったからね。多分、ほとんど好きになりかけてたんだ」 恋愛話にはうといあたしだけれど、何となくは分かる。 友達以上には思えなくても、嫌いじゃない。 多分、友達としては好きな方だったんだろう
Last Updated : 2025-08-06 Read more