All Chapters of 地味男はイケメン元総長: Chapter 81 - Chapter 90

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想いを伝える②

「じゃあ言うけど……。な、倉木。俺の彼女にならねぇ?」「………………は?」 理解出来なくて間を開けて、それでも理解出来なくて聞き返した。「だから、俺の彼女」「あ、俺でも良いぜ?」 と、もう一人も自分を指差して言う。「丁度夏休み前に彼女欲しかったし、メイクすればこんなに可愛くなるなら隣歩いてても自慢になるし」「それな!」 あはは、と笑う彼らをあたしは冷めた目で見る。 つまり、あたしの事は好きでもなんでもないけどアクセサリーとしての彼女として丁度良いと。 バカだろう。 ふざけるなとか、侮辱するなとか。 腹が立つのさえ通り越して呆れしかない。 第一、それを言われてあたしが本当に彼女になるとでも思っているんだろうか? 普通に考えてありえないよね? せめて本音は隠さないと……。「いや、なる訳ないでしょ。良いから放して」 最早会話するだけ無駄なので、とにかく放してもらおうと顎を掴んでいる腕を両手で掴んだ。 でも腐っても男子。力では敵わないのかビクともしない。「はは、そういうとこは小動物みたいでちょっと可愛いな」「なあ、別に良いだろ? 倉木だって彼氏欲しくねぇ?」 アクセサリーの次は小動物扱いか!?「欲しかったとしてもあんたたちは選ばないよ! 大体あたし好きな人いるし!」 いっそ股間を蹴り上げてやろうかと思いながら言うと、軽く驚いた声が降ってくる。「へー、いるんだ?」「でも片思いだろ?」「ちなみに誰? まさか日高とか言わねぇよな?」 まさか言い当てられるとは思わなかったから一瞬言葉に詰まる。
last updateLast Updated : 2025-09-05
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想いを伝える③

「返事、聞いても良いか?」「え?」「いつまででも待つつもりだったけど、やっぱ無理だ。もう我慢出来ねぇ……。俺の告白の返事、今聞かせてくれよ」「あ……」 伝えるのにタイミングが掴めなかった。 そんなの、言い訳にしかならない。 美智留ちゃんにも早く伝えた方が良いって言われていたのに、心のどこかで陸斗くんならちゃんと待っていてくれると甘えていた。 バカだ、あたし。 告白して、答えが無い状態なんて不安でしかないに決まっているのに……。 陸斗くんなら大丈夫って、根拠のないことを思って甘えてただけだ。 自分の不甲斐なさに悔しさがあふれて来る。 あたしは陸斗くんの制服の襟を小さくキュッと掴み口を開いた。「ごめんね」「っ!」「ずっと待たせて、ごめんね」「灯里……?」 謝罪から入った言葉に、陸斗くんは一瞬傷ついた様な表情を見せる。 ああ、本当にあたしって駄目だな。 ちゃんと言葉も選べないなんて。 後悔ばかりだけれど、それでも伝えなくちゃいけない。 伝えたい、あたしの想いを。「あたし、陸斗くんが好き。遊園地のお化け屋敷で、本当の陸斗くんを見た時から、きっとずっと好きだった」 それに気付くのも遅くて「ごめんね」、とまた謝る。「……じゃあ、先に惚れたのは俺じゃなくてお前だったってことかよ」「うん、そうなるね」 答えると、軽く目を閉じた陸斗くんが絞り出すようなため息をついた。「はああぁぁぁ……。ま、どっちにしても振り回されるのは俺な気がする……」 半ば諦めたような言葉と口調。
last updateLast Updated : 2025-09-06
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閑話 田中 美智留

 時は少し戻りーー。 灯里にメイク道具を見ててもらう様に頼まれたあたしは、少し考えていた。 灯里が空き教室に忘れ物を取りに行って数分経つ。 走って急いで行けばもう戻っていても良い時間。 ゆっくり歩いていてもそろそろ来る頃だ。 それでもまだ来ないという事は忘れ物が中々見つからないって事か……。 でも、あたしにはそれ以外に懸念事項があった。 灯里が教室を出て行くのを見て、後を追う様に同じく教室を出て行った三人組。 確かあいつらは、校外学習のとき灯里の事を『地味で男慣れしてないだろうから、告ったらすぐに付き合ってくれるんじゃねー?』とか言っていた奴らだ。 嫌な予感しかしない。 いくらなんでも学校で変な事はしないだろうけど……。 それでも、少しばかり焦りが出てくる。 もし本当に告られてるとしたら、灯里は当然断る。 でももし、断らないと思っていたのに断られたらあの三人はどう出るだろう? 想像してみて、眉間にシワが寄る。 変な事はしないとは思うけど、それでも素直に引くとは到底思えない。 絶対に面倒なことになるに決まってる。 頼まれた事はさくらにでもお願いして、あたしが助けに行っても良いんだけど……。 そう考えながら日高に目を向ける。 女子に囲まれて無愛想に対応している日高。 内心うんざりしていそう。 そっちにも助けが必要そうだし、何よりヒロインを助けるのはヒーローの役目だしね。 そう思って、彼に声を掛けた。「ねぇ日高。灯里が空き教室に行って戻って来ないんだけど、ちょっと見に行ってくれない?」 言うと、日高では無く周りの女子達が拒否をする。「何で日高くんが行かなきゃ無いの?」
last updateLast Updated : 2025-09-07
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テスト勉強①

 両想いになって、恋人同士になったあたしと陸斗。 恥ずかしいけれど嬉しくて。 胸がキュウッとなって幸せに満たされる。 そんなあたし達だけれど、早々に反省点が二つも出来た。 一つは。 キスはほどほどに……。 陸斗は今まで我慢していたからかなかなか止めなかったし、あたしはあたしでそれを受け入れた。 だから何度も唇を重ねたんだけれど……。 初めて知った。 キスって、しすぎると唇腫れるんだね。 後で気付いたけれど、赤くなってヒリヒリと痛かった。 思わずキスは一日一回まで、と制限を掛けてしまったくらいだ。 陸斗も腫れて痛かったのか、少し文句を言っただけでその制限は受け入れられた。 そしてもう一つの反省点は、二人の世界に入りすぎて人を待たせているのを忘れない事。 ……いや、美智留ちゃんを待たせていたことを忘れてたわけじゃないよ? ただその……。 あんなに時間が経ってるとは思わなかっただけで……。 美智留ちゃんは呆れつつも許してくれたから良かったけれど、またこんなことが無いように気をつけなきゃ。 そんな風に反省していたら、逆に美智留ちゃんに謝られてしまった。「ごめん!」「え?」 何に対して謝られているのか分からず、瞬きをして首を傾げる。 美智留ちゃんは申し訳なさそうな顔で一つ一つ説明してくれた。 あたしと陸斗が教室からいなくなってから、一部の女子と美智留ちゃん達があたしの事でぶつかったこと。 彼女達が納得できるように、皆のメイクをすることになったってこと。「ごめんね、こんなこと勝手に決めちゃって……」 謝る美智留ちゃんに、あたしは何て返せばいいか迷っていた。 どんな理由であれ、色んな人にメイク出来るのは嬉しい。 あたしの事をよく思っていない人にっていうのは少し気まずいけれど、多分メイクを始めてしまえば気にならないだろう。 問題があるとすれば労力より金銭面。 それなりの人数にメイクをするとなると、メイク用品の消費が激しくなる。 それを自腹でとなると、流石にちょっと……。 でも、それを話すと美智留ちゃんは。「それに関しては少しは何とかなるかも」 と説明してくれる。 何と、その女子達の話を聞いた他の子達もそれなら自分達もやってみて欲しいと言い出して……。 さらに陸斗のメイクを見たからか、男子も何人か興味を持ったん
last updateLast Updated : 2025-09-08
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テスト勉強②

「そう言えば勉強教えるって前約束したよな? 明日、俺ん家来るか?」 地味男を止めて似合わないメガネを取った陸斗にそう言われたのは、金曜日の帰りの事だった。 メガネは取ったけれど、やっぱり目立ちたくはないのか前髪は長いまま顔を隠すようにしている。 対するあたしは、せいぜい黒縁メガネからお年玉で買っていた可愛いフレームのものに変えた程度だ。 流石に毎日メイクはしていけないからね。 でも、それでも美智留ちゃん達には印象が変わったとか、こっちの方が良いよとか言われたので買っておいて良かったと思う。「え? 良いの?」 勉強を教えて貰えることと、休みの日も陸斗と会えることが嬉しくて喜色を顕わにして聞き返す。 あたしが犬だったら、きっと尻尾をブンブン振ってただろう。「ああ、それに思えば俺はお前の家行ったことあるけど、お前が俺の家来た事ねぇしな」 場所くらい知っておいてもいいだろ、と何故か少し遠慮がちな言い方をする陸斗。 どうしてかは分からないけれど、何だか珍しい。 いつもの陸斗ならもっとハッキリ言うのに。「そうだね、じゃあ明日どこで待ち合せる?」 分からないけれど、嫌々誘っている訳じゃないのだし、と話を進めると。「はぁ……。お前はやっぱり鈍感だよな」 何やら小声で言われた。 ハッキリとは聞こえなかったけれど、鈍感だと言われたのは気付いた。「うー。鈍感はもう否定しないけど、それならそれでちゃんと教えてよ」 ふくれっ面をすると頭をポンと軽く叩かれる。「お前、その顔可愛いから止めろ。襲いたくなる……」「なっ!?」 突然の頭ポンポンとその言葉にドキドキと心臓がうるさくなる。 でも、同時に普段の陸斗の感じに戻ったので、少し安心した。「まあ、明日来れば分か
last updateLast Updated : 2025-09-09
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テスト勉強③

 ピンポーン 固まってしまった陸斗に、早く出てこいとばかりに呼び鈴がまた鳴る。 仕方なく離れて行った陸斗。 彼の熱が離れて、冷静になったあたしはただただ恥ずかしい。 ある意味来訪者があって良かったのかもしれない。 あのままだと本当に勉強にならなそうだったから。「は? 工藤? って、田中まで」 玄関先で声を上げた陸斗。 発された言葉にあたしも立ち上がって玄関の方を見た。 陸斗の横から開け放たれたドアの向こう側を見る。 そこには笑顔の工藤くんと、頭を抱えて溜息をついている美智留ちゃんの姿があった。 空気を読めていないのか、あえて読んでいないのか。 工藤くんは笑顔のままこう言った。「悪いな、日高。勉強教えてくれ」「……断った気がするが?」「そこを何とか!!」 と、両手を合わせて懇願する工藤くん。 我関せずと地蔵の様に成り行きを見ている美智留ちゃん。 美智留ちゃんがこんな感じだと、この場を収める人がいない。 あたしは取りあえず提案した。「取りあえず入ってもらった方が良いんじゃない? 近所迷惑になっちゃうよ」 そうして部屋に四人が座ると、結構狭く感じる。 中間テストのときここで勉強したらとか言ってた人いたけど、確かにこれ以上入るのは無理だなぁ。 人口密度も増えて暑さが増した気がするし。「ごめんね、灯里。邪魔だったでしょう?」 真っ先に口を開いたのは美智留ちゃんだ。「っへ! じゃ、まって程でもないけど!?」 美智留ちゃんの言葉に他意はなかったと思うけれど、ついさっきキスをしていて邪魔をされたことを思い出してし
last updateLast Updated : 2025-09-10
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再来①

「うぉーーー! 日高、ありがとう! これで小遣い減らされずに済む!」 大袈裟だろうと思えるほどに喜び叫ぶ工藤くん。 今回の期末テストは苦手だった数学も五十点台まで上がり、平均も上がったらしい。「うっせーな。邪魔してまで教えてもらいに来といて五十点台って何だよ。せめて八十点台取れっつーの」 お礼を言われた陸斗は不満そうだ。「ただでさえ苦手な教科を八十点台!? 鬼か日高!?」「鬼で結構。二学期の期末には取れよ?」「マジだ……。マジの鬼がいる……」 そんなやり取りを見てクスッと笑う。 二学期の中間って言わない辺りは陸斗の優しさなのかな? それに取ってもらうなんて言うってことは、次も教えてあげる気でいるってことだ。 やっぱり何だかんだ陸斗は優しい。 あたしは手元のテストを見て何度目とも知れない喜びを噛みしめる。 教えるのも、上手だしね。 手元の英語のテスト。 合計点数が書かれる場所には八十二の数字。 英語のテストで六十点台より上になったことがなかったから、結構……いや、物凄く嬉しい。 あたしは陸斗と工藤くんの話が一段落したところで陸斗に近付いた。「あたしもありがとう。おかげで初めて八十点台取れたよ」 お礼を言うと優しい笑顔が返って来る。「どういたしまして」 そうして頭をポンポンしてくれると、陸斗はまた工藤くんに呼ばれて行ってしまった。 あたしは陸斗が触れた頭に手を添えて、ポンポンの余韻に浸る。 ああ、幸せだなぁ……。 あたしが陸斗と付き合ってる事を良く思ってない女子も数人いて、その子達とはちょっとギスギスしているけれど……。 でも美智留ちゃん達にメイクして貰えば分かるとか言われたからか、それまでは表立って何か
last updateLast Updated : 2025-09-11
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再来②

「あたしだけ楽しくていいのかなぁ?」 生徒玄関で靴を履き替えながら、一緒にいた陸斗に聞いてみる。「それを楽しいと思えるのは多分お前だけだから、良いんじゃねぇの?」 と、褒めているのか貶しているのか分からない言葉が返ってきた。 まあ、何にせよそれで良いと言われたんだから良いってことにしよう。 そう自分を納得させて外に出ると、校門の辺りに少し人だかりが出来ていたのが見えた。 主に女子が多い。というか、女子ばかりだ。「カッコイイね。誰を待ってるんだろう?」 少し遠巻きにそれを見ている女生徒のそんな言葉が聞こえて来る。 校門に近付くと、人だかりの中心人物の姿が見えて来た。「あ」 思わず一文字だけ声を出して足を止める。 口も“あ”の形のまま止まってしまう。 知っているその人の姿を見てあたしは思った。 忘れてた! そうだ、この人がいたよ! 何かを忘れていた様な気がした。 何かが引っかかっている気がした。 それはこの人のことだったんだ。「あ、灯里ちゃん。やっと会えたね」 そうあたしに声を掛け、胡散臭いほどのイイ笑顔をこちらに向ける彼。 獲物を狙う蛇の様な目を向けながら、爽やかに笑う彼――杉沢さんに、あたしはヒィ!? という叫びが喉元まで出かかった。「ごめん、ちょっと失礼」 そう言って人だかりをかき分けこちらに歩いて来る杉沢さん。 あたしは思わず側にいる陸斗の腕にしがみ付いた。 それを見た杉沢さんは足を止め、笑顔のまま威圧して来る。「あれぇ? 日高もいたんだ? いなくて良かったんだけど?」 あからさまな程の敵意だったけれど、総長までやって
last updateLast Updated : 2025-09-12
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再来③

「……あんた達、こんなところで何やってるの?」 聞き覚えのある声に頭を動かしてその人物を見る。 そこには呆れた眼差しであたし達三人を見る美智留ちゃんがいた。「あれ? 美智留ちゃん、早かったね?」 用事があるからとまだ学校にいたはずだ。 どんな用事かは分からないけれど、それほど時間は経っていないと思う。「そこまで時間かかることでもなかったから。……で、あたしの家の前で何口論してんの?」 言われて初めてすぐ近くに美智留ちゃんの家兼店があることに気付いた。 あたしは中に入ったことは無いけれど、場所だけは聞いていたので知っている。「ええっと……見ての通り?」 疑問形で答えたけれど、そうとしか言えない。 見ての通り、杉沢さんが来たせいで陸斗があたしの番犬状態だ。 しかもまだ抱きしめられているのであたしは動けない。 改めてあたし達三人を見た美智留ちゃんは、大きく溜息をついた。「ちょっと待ってて。あたしも行くわ」「え?」 行くって、一緒に? どうして? あたし達帰るだけだよ? 疑問が浮かぶけれど、美智留ちゃんは返事も聞かずに一度家の方に歩いて行く。 そしてほんの数分で出て来る。「じゃ、行こっか」 そう言って歩き出した美智留ちゃんに、あたし達も一緒に歩き出した。「それで? どうして杉沢さんがいるの?」 やっぱりまずはそこからだよね。 美智留ちゃんの疑問にまずは答えつつ、さっきのことを軽く話した。 一通り話し終えると彼女は引いているのか呆れているのか……何とも微妙な表情をする。「引っ越してきたの? それに灯里を諦める様子無いとか……」 そう呟いた美智留ちゃんは胡乱な目で杉沢さんを見て言っ
last updateLast Updated : 2025-09-13
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夏休みメイク 女子①

 杉沢さんがこっちに引っ越してきて、頻繁に顔を合わせることになるかもしれないと身構えていたのだけれど、案外そんなことは無かった。 美智留ちゃんがあの後で色々聞いた話によると、杉沢さんは今バイトをしながら職探し中らしい。 だからそんなに頻繁には会いに来ないだろう、だそうだ。 もしかしたら次に顔を合わせるのは夏休み中か、もしくは文化祭まで会わないかもしれない。 それならもうその方が良いなぁと思う。 会う度にあの蛇に獲物認定されるような感覚を味わうので、出来れば遠慮したいところだ。 そうして杉沢さんの事を考えることもなくなって来た頃には夏休みが始まった。  メイクは、夏休み初日から始める。 初めは女子。 今日はメイクをすることになった切っ掛けでもある、あたしをあまり良く思っていない子達の日だ。 そのためか、今日の付き添い兼お手伝いは陸斗以外に美智留ちゃんとさくらちゃんもいる。「メイクしてもらったからって何が変わるとも思えないけど。終わっても納得出来なければあたしはいつまででも倉木さんを認めないから」 あたしを睨み付けてそう言った彼女は、憤然と向かい側の椅子に座った。 初っ端から敵意丸出しである。 こんな態度の人にメイクなんてして本当に良いのかな? と思わなくも無いが、ちゃんと目の前に座っているんだから一応本人も了承しているって事で良いんだろう。 それに、どうせここまで嫌われてるならと思ってあたしも好きにやろうと開き直っている部分もある。 どんなメイクをしてもこれ以上嫌われる事は無いだろう。 そう思って、この子と次の子のメイクは思う存分やり切ってやろうと画策していた。「じゃあ、始めるね」 そう告げていつものルーティン。 瞼の裏に映るのは今日まで考えていた彼女のメイク。 今からこれを施す
last updateLast Updated : 2025-09-14
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