Share

想いを伝える②

Author: 緋村燐
last update Last Updated: 2025-09-05 17:31:48

「じゃあ言うけど……。な、倉木。俺の彼女にならねぇ?」

「………………は?」

 理解出来なくて間を開けて、それでも理解出来なくて聞き返した。

「だから、俺の彼女」

「あ、俺でも良いぜ?」

 と、もう一人も自分を指差して言う。

「丁度夏休み前に彼女欲しかったし、メイクすればこんなに可愛くなるなら隣歩いてても自慢になるし」

「それな!」

 あはは、と笑う彼らをあたしは冷めた目で見る。

 つまり、あたしの事は好きでもなんでもないけどアクセサリーとしての彼女として丁度良いと。

 バカだろう。

 ふざけるなとか、侮辱するなとか。

 腹が立つのさえ通り越して呆れしかない。

 第一、それを言われてあたしが本当に彼女になるとでも思っているんだろうか?

 普通に考えてありえないよね?

 せめて本音は隠さないと……。

「いや、なる訳ないでしょ。良いから放して」

 最早会話するだけ無駄なので、とにかく放してもらおうと顎を掴んでいる腕を両手で掴んだ。

 でも腐っても男子。力では敵わないのかビクともしない。

「はは、そういうとこは小動物みたいでちょっと可愛いな」

「なあ、別に良いだろ? 倉木だって彼氏欲しくねぇ?」

 アクセサリーの次は小動物扱いか!?

「欲しかったとしてもあんたたちは選ばないよ! 大体あたし好きな人いるし!」

 いっそ股間を蹴り上げてやろうかと思いながら言うと、軽く驚いた声が降ってくる。

「へー、いるんだ?」

「でも片思いだろ?」

「ちなみに誰? まさか日高とか言わねぇよな?」

 まさか言い当てられるとは思わなかったから一瞬言葉に詰まる。

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 地味男はイケメン元総長   テスト勉強③

     ピンポーン 固まってしまった陸斗に、早く出てこいとばかりに呼び鈴がまた鳴る。 仕方なく離れて行った陸斗。 彼の熱が離れて、冷静になったあたしはただただ恥ずかしい。 ある意味来訪者があって良かったのかもしれない。 あのままだと本当に勉強にならなそうだったから。「は? 工藤? って、田中まで」 玄関先で声を上げた陸斗。 発された言葉にあたしも立ち上がって玄関の方を見た。 陸斗の横から開け放たれたドアの向こう側を見る。 そこには笑顔の工藤くんと、頭を抱えて溜息をついている美智留ちゃんの姿があった。 空気を読めていないのか、あえて読んでいないのか。 工藤くんは笑顔のままこう言った。「悪いな、日高。勉強教えてくれ」「……断った気がするが?」「そこを何とか!!」 と、両手を合わせて懇願する工藤くん。 我関せずと地蔵の様に成り行きを見ている美智留ちゃん。 美智留ちゃんがこんな感じだと、この場を収める人がいない。 あたしは取りあえず提案した。「取りあえず入ってもらった方が良いんじゃない? 近所迷惑になっちゃうよ」 そうして部屋に四人が座ると、結構狭く感じる。 中間テストのときここで勉強したらとか言ってた人いたけど、確かにこれ以上入るのは無理だなぁ。 人口密度も増えて暑さが増した気がするし。「ごめんね、灯里。邪魔だったでしょう?」 真っ先に口を開いたのは美智留ちゃんだ。「っへ! じゃ、まって程でもないけど!?」 美智留ちゃんの言葉に他意はなかったと思うけれど、ついさっきキスをしていて邪魔をされたことを思い出してし

  • 地味男はイケメン元総長   テスト勉強②

    「そう言えば勉強教えるって前約束したよな? 明日、俺ん家来るか?」 地味男を止めて似合わないメガネを取った陸斗にそう言われたのは、金曜日の帰りの事だった。 メガネは取ったけれど、やっぱり目立ちたくはないのか前髪は長いまま顔を隠すようにしている。 対するあたしは、せいぜい黒縁メガネからお年玉で買っていた可愛いフレームのものに変えた程度だ。 流石に毎日メイクはしていけないからね。 でも、それでも美智留ちゃん達には印象が変わったとか、こっちの方が良いよとか言われたので買っておいて良かったと思う。「え? 良いの?」 勉強を教えて貰えることと、休みの日も陸斗と会えることが嬉しくて喜色を顕わにして聞き返す。 あたしが犬だったら、きっと尻尾をブンブン振ってただろう。「ああ、それに思えば俺はお前の家行ったことあるけど、お前が俺の家来た事ねぇしな」 場所くらい知っておいてもいいだろ、と何故か少し遠慮がちな言い方をする陸斗。 どうしてかは分からないけれど、何だか珍しい。 いつもの陸斗ならもっとハッキリ言うのに。「そうだね、じゃあ明日どこで待ち合せる?」 分からないけれど、嫌々誘っている訳じゃないのだし、と話を進めると。「はぁ……。お前はやっぱり鈍感だよな」 何やら小声で言われた。 ハッキリとは聞こえなかったけれど、鈍感だと言われたのは気付いた。「うー。鈍感はもう否定しないけど、それならそれでちゃんと教えてよ」 ふくれっ面をすると頭をポンと軽く叩かれる。「お前、その顔可愛いから止めろ。襲いたくなる……」「なっ!?」 突然の頭ポンポンとその言葉にドキドキと心臓がうるさくなる。 でも、同時に普段の陸斗の感じに戻ったので、少し安心した。「まあ、明日来れば分か

  • 地味男はイケメン元総長   テスト勉強①

     両想いになって、恋人同士になったあたしと陸斗。 恥ずかしいけれど嬉しくて。 胸がキュウッとなって幸せに満たされる。 そんなあたし達だけれど、早々に反省点が二つも出来た。 一つは。 キスはほどほどに……。 陸斗は今まで我慢していたからかなかなか止めなかったし、あたしはあたしでそれを受け入れた。 だから何度も唇を重ねたんだけれど……。 初めて知った。 キスって、しすぎると唇腫れるんだね。 後で気付いたけれど、赤くなってヒリヒリと痛かった。 思わずキスは一日一回まで、と制限を掛けてしまったくらいだ。 陸斗も腫れて痛かったのか、少し文句を言っただけでその制限は受け入れられた。 そしてもう一つの反省点は、二人の世界に入りすぎて人を待たせているのを忘れない事。 ……いや、美智留ちゃんを待たせていたことを忘れてたわけじゃないよ? ただその……。 あんなに時間が経ってるとは思わなかっただけで……。 美智留ちゃんは呆れつつも許してくれたから良かったけれど、またこんなことが無いように気をつけなきゃ。 そんな風に反省していたら、逆に美智留ちゃんに謝られてしまった。「ごめん!」「え?」 何に対して謝られているのか分からず、瞬きをして首を傾げる。 美智留ちゃんは申し訳なさそうな顔で一つ一つ説明してくれた。 あたしと陸斗が教室からいなくなってから、一部の女子と美智留ちゃん達があたしの事でぶつかったこと。 彼女達が納得できるように、皆のメイクをすることになったってこと。「ごめんね、こんなこと勝手に決めちゃって……」 謝る美智留ちゃんに、あたしは何て返せばいいか迷っていた。 どんな理由であれ、色んな人にメイク出来るのは嬉しい。 あたしの事をよく思っていない人にっていうのは少し気まずいけれど、多分メイクを始めてしまえば気にならないだろう。 問題があるとすれば労力より金銭面。 それなりの人数にメイクをするとなると、メイク用品の消費が激しくなる。 それを自腹でとなると、流石にちょっと……。 でも、それを話すと美智留ちゃんは。「それに関しては少しは何とかなるかも」 と説明してくれる。 何と、その女子達の話を聞いた他の子達もそれなら自分達もやってみて欲しいと言い出して……。 さらに陸斗のメイクを見たからか、男子も何人か興味を持ったん

  • 地味男はイケメン元総長   閑話 田中 美智留

     時は少し戻りーー。 灯里にメイク道具を見ててもらう様に頼まれたあたしは、少し考えていた。 灯里が空き教室に忘れ物を取りに行って数分経つ。 走って急いで行けばもう戻っていても良い時間。 ゆっくり歩いていてもそろそろ来る頃だ。 それでもまだ来ないという事は忘れ物が中々見つからないって事か……。 でも、あたしにはそれ以外に懸念事項があった。 灯里が教室を出て行くのを見て、後を追う様に同じく教室を出て行った三人組。 確かあいつらは、校外学習のとき灯里の事を『地味で男慣れしてないだろうから、告ったらすぐに付き合ってくれるんじゃねー?』とか言っていた奴らだ。 嫌な予感しかしない。 いくらなんでも学校で変な事はしないだろうけど……。 それでも、少しばかり焦りが出てくる。 もし本当に告られてるとしたら、灯里は当然断る。 でももし、断らないと思っていたのに断られたらあの三人はどう出るだろう? 想像してみて、眉間にシワが寄る。 変な事はしないとは思うけど、それでも素直に引くとは到底思えない。 絶対に面倒なことになるに決まってる。 頼まれた事はさくらにでもお願いして、あたしが助けに行っても良いんだけど……。 そう考えながら日高に目を向ける。 女子に囲まれて無愛想に対応している日高。 内心うんざりしていそう。 そっちにも助けが必要そうだし、何よりヒロインを助けるのはヒーローの役目だしね。 そう思って、彼に声を掛けた。「ねぇ日高。灯里が空き教室に行って戻って来ないんだけど、ちょっと見に行ってくれない?」 言うと、日高では無く周りの女子達が拒否をする。「何で日高くんが行かなきゃ無いの?」

  • 地味男はイケメン元総長   想いを伝える③

    「返事、聞いても良いか?」「え?」「いつまででも待つつもりだったけど、やっぱ無理だ。もう我慢出来ねぇ……。俺の告白の返事、今聞かせてくれよ」「あ……」 伝えるのにタイミングが掴めなかった。 そんなの、言い訳にしかならない。 美智留ちゃんにも早く伝えた方が良いって言われていたのに、心のどこかで陸斗くんならちゃんと待っていてくれると甘えていた。 バカだ、あたし。 告白して、答えが無い状態なんて不安でしかないに決まっているのに……。 陸斗くんなら大丈夫って、根拠のないことを思って甘えてただけだ。 自分の不甲斐なさに悔しさがあふれて来る。 あたしは陸斗くんの制服の襟を小さくキュッと掴み口を開いた。「ごめんね」「っ!」「ずっと待たせて、ごめんね」「灯里……?」 謝罪から入った言葉に、陸斗くんは一瞬傷ついた様な表情を見せる。 ああ、本当にあたしって駄目だな。 ちゃんと言葉も選べないなんて。 後悔ばかりだけれど、それでも伝えなくちゃいけない。 伝えたい、あたしの想いを。「あたし、陸斗くんが好き。遊園地のお化け屋敷で、本当の陸斗くんを見た時から、きっとずっと好きだった」 それに気付くのも遅くて「ごめんね」、とまた謝る。「……じゃあ、先に惚れたのは俺じゃなくてお前だったってことかよ」「うん、そうなるね」 答えると、軽く目を閉じた陸斗くんが絞り出すようなため息をついた。「はああぁぁぁ……。ま、どっちにしても振り回されるのは俺な気がする……」 半ば諦めたような言葉と口調。

  • 地味男はイケメン元総長   想いを伝える②

    「じゃあ言うけど……。な、倉木。俺の彼女にならねぇ?」「………………は?」 理解出来なくて間を開けて、それでも理解出来なくて聞き返した。「だから、俺の彼女」「あ、俺でも良いぜ?」 と、もう一人も自分を指差して言う。「丁度夏休み前に彼女欲しかったし、メイクすればこんなに可愛くなるなら隣歩いてても自慢になるし」「それな!」 あはは、と笑う彼らをあたしは冷めた目で見る。 つまり、あたしの事は好きでもなんでもないけどアクセサリーとしての彼女として丁度良いと。 バカだろう。 ふざけるなとか、侮辱するなとか。 腹が立つのさえ通り越して呆れしかない。 第一、それを言われてあたしが本当に彼女になるとでも思っているんだろうか? 普通に考えてありえないよね? せめて本音は隠さないと……。「いや、なる訳ないでしょ。良いから放して」 最早会話するだけ無駄なので、とにかく放してもらおうと顎を掴んでいる腕を両手で掴んだ。 でも腐っても男子。力では敵わないのかビクともしない。「はは、そういうとこは小動物みたいでちょっと可愛いな」「なあ、別に良いだろ? 倉木だって彼氏欲しくねぇ?」 アクセサリーの次は小動物扱いか!?「欲しかったとしてもあんたたちは選ばないよ! 大体あたし好きな人いるし!」 いっそ股間を蹴り上げてやろうかと思いながら言うと、軽く驚いた声が降ってくる。「へー、いるんだ?」「でも片思いだろ?」「ちなみに誰? まさか日高とか言わねぇよな?」 まさか言い当てられるとは思わなかったから一瞬言葉に詰まる。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status