落ち目女優の誤算／再会

　よく考えたらその番号は、過去に嫌というほど頭の中で記憶していた番号だった。

　心臓が、壊れたような音を出す。

　もうすっかり忘れたと思っていた。声。

　もうすっかり記憶から消したはずの————

　「………聖………？」

　そう言えば私に害を与えるような人間は連絡先から消したって昴生は言っていた。だから番号が消えていたのに。

　聖、あなたも私の連絡先を……

　私を記憶から消したはずでしょ？

　「侑……話があるんだ。

　まだあのマンションに住んでる？

　もしできるなら、そこに来て欲しいんだ。

　待ってる……」

　「え、ちょ……聖？」

　一方的に切られた電話。その画面をしばらく眺める。

　私の元々住んでるマンションに来て欲しい？

　一体なぜ。ううん……今さら、なぜ？

　今の私は間違いなく昴生が好きだ。

　だから彼を裏切るような真似だけはしたくない。

　だけどあの内容だと、聖はあの場所でずっと待っている気がする。

　私は昴生に持たされたキーとお財布、スマホを手にしてマンションを出た。

　とにかく聖に会おう。

　会って……それから、もう私は何も話すことはないんだとはっきり言うんだ。

　もう私は聖がいなくても大丈夫だからと。

　だから彼女と、どうかお幸せにと。

　なのに。

　久しぶりに見た聖は、いつもの聖とはかけ離れていた。

　何だか痩せていて顔色もあまり良くなかった。

　幸せに……なったんじゃなかったの？

　私みたいに、あなたにすぐ会えないような女ではなく、すぐ近くにいてくれて、家庭的な人を選んだのではなかったの？

　「侑。俺、今から凄く馬鹿なこと言うな…」

　玄関前だから、同じマンションの住人が何事かと見ていく。

　最近やっとマスコミが落ち着いてきたばかりなのに。

　なのに聖はそんなこと全く考えてもない様子で、前髪をくしゃっと握って言った。

　どうしていいか分からない。

　かと言って、こんな状態の聖を冷たく突き放すことも……だけど。

　伝えるべき事はちゃんと伝えると決めた。

　「聖……あの。

　私達、別れたんだよね？」

　「……ああ。そうだ。」

　「だから、もう私達が話すことはないはずでしょ？」

　「侑どうして——————

　どうしてそんな風に俺を突き放すの？

　もう俺のこと、嫌いになった？」

　「……そんな話しじゃないわ……

　だって聖。

　私