未明、小夜はほとんど眠れなかった。熱が下がったばかりだというのに、車内は狭く、翌朝起きると体中が痛み、偏頭痛もしていた。対照的に、航は元気いっぱいだった。十九歳の男子大学生のエネルギーは、まさに火山の噴火のようだと言わざるを得ない。もちろん、初めての長距離ロードトリップというのもあって、冒険心旺盛な青年は興奮状態で、早起きしてサービスエリアでファストフードを買い込み、魔法瓶にお湯を補充していた。二人は食事を済ませ、薬を飲み、再び車を走らせた。道中、小夜はスマホでルートを検索し、時間を計算してみた。順調にいけば、午後か夕方には「西の都」に到着するだろう。そこが、聖地へと続く国道317号線の入り口だ。このルートは「天に続く道」と称され、荒々しくも険しく、スリルに満ち、同時に壮大で美しい……道の果てには、数多の寺院が立ち並び、高僧たちが集う「陽光の都」がある。その道に足を踏み入れてこそ、本当の旅の始まりだ。彼らは「西の都」で、聖地へ入るための装備を揃える必要もあった。正午まで走り続け、沿道のサービスエリアで昼食をとった後、少年の疲労運転を心配した小夜は、自分が代わると申し出た。航は、遠慮のかけらもなく断った。「お義姉さん、昨日の夜ろくに寝てないだろ?さっきも舟漕いでたし。そんな状態で運転なんかしたら、側溝に突っ込んで二人まとめてあの世行きだぜ。大人しく休んでてくれって」小夜は黙り込んだ。確かに、昨夜はよく眠れなかった。より正確に言えば、眠るのが怖かったのだ。目を閉じれば、あの四面楚歌で、絶望に満ちた過去を夢に見そうで。もう何年も前のことなのに。あの大雨の夜まで、彼女は知らなかったのだ。自分の過去が壮大な嘘の上に成り立ち、四方を高い壁に囲まれた檻の中で生きていたということを。車は再びサービスエリアを出て、「西の都」へと向かった。午後の日差しがフロントガラス越しに差し込み、助手席でまぶたを重くしている女性を照らし、夢幻的な光の層を作り出していた。全身が暖かく包まれる。薬の効果も相まって、ついに抗うことができず、彼女の意識は枯れ葉のように暗い夢の中へと落ちていった。……奨学金と経済支援金を失った。その年の夏休み、小夜は例年以上に忙しく働いた。主に家庭教師のアルバイトだ。彼女は帝都大学
Read more