青山はタブレットを小夜の前に押しやった。 「構わないさ。君と僕の仲だろう。君を信じられなくて、他に誰を信じるって言うんだ」 確かに、その通りではある。 青山の会社が公安に納入している中核アルゴリズムですら、小夜はその仕組みを知っているし、開発にも携わっていた。青山は昔から、彼女に対して一切の壁を作らない。 だが、その信頼は今の彼女にはあまりに重かった。ためらいはしたが、重ねて頼み込まれ、小夜はとうとう画面をタップした。 そして、息を呑んで固まった。 国内のプロジェクトだけではない。 海外の案件までリストアップされている。 瞬時に察した。これは純粋に意見を求めているわけではない。この男の本当の狙いは――別のところにあるのだ。 …… 「あなた、これ……」 呆然と顔を上げたまま、小夜は絶句した。 青山はまるで動じた様子もなく、気楽に笑って言った。「そう構えなくていい。君の意見を参考にしたいだけだよ。最後に決めるのは僕だからね」 そうは言われても、小夜は静かにタブレットをテーブルに置いた。長い沈黙のあと、ようやく重い口を開く。 「青山。もし私の思い違いなら、ただの自惚れだと思って聞き流して……もう、私を待たないで。あなたはこんなに優秀な人なんだから、もっといい人にいくらでも出会えるわ。あなたの大切な時間を、私なんかに使わないで」 「ささよ」 小夜が正面から切り込んできたのを見て、青山もついに覚悟を決めた。 「僕にそんな資格がないのはわかっている。一年前、君を海外へ送り出したのは僕だ。そのせいで、君はあんな酷い目に遭った。それなのに僕は国内で身動きが取れず、君を助けに行くことすらできなかった……だから、ずっと怖くて訊けなかったんだ。でも今は、お互いを縛るものがなくなって、新しい人生が始まっている。だから、訊かせてほしい。あの日の言葉を、まだ信じていてもいいかな」 小夜の表情が凍りついた。 あの日の言葉。覚えていないはずがない。一年前、青山の助けで海外へ逃れる日、搭乗の直前に、彼女は確かに彼と約束を交わしたのだ。 けれど、今は…… 「違うの」 長い間うつむいてから、小夜は絞り出すように声を出した。「海外へ行くと決めたのは私自身の意志よ。あなたはただ、手を貸してくれただけ。
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