All Chapters of 夫と子を捨てた妻が、世界を魅了するデザイナーになった: Chapter 461 - Chapter 462

462 Chapters

第461話

青山はタブレットを小夜の前に押しやった。 「構わないさ。君と僕の仲だろう。君を信じられなくて、他に誰を信じるって言うんだ」 確かに、その通りではある。 青山の会社が公安に納入している中核アルゴリズムですら、小夜はその仕組みを知っているし、開発にも携わっていた。青山は昔から、彼女に対して一切の壁を作らない。 だが、その信頼は今の彼女にはあまりに重かった。ためらいはしたが、重ねて頼み込まれ、小夜はとうとう画面をタップした。 そして、息を呑んで固まった。 国内のプロジェクトだけではない。 海外の案件までリストアップされている。 瞬時に察した。これは純粋に意見を求めているわけではない。この男の本当の狙いは――別のところにあるのだ。 …… 「あなた、これ……」 呆然と顔を上げたまま、小夜は絶句した。 青山はまるで動じた様子もなく、気楽に笑って言った。「そう構えなくていい。君の意見を参考にしたいだけだよ。最後に決めるのは僕だからね」 そうは言われても、小夜は静かにタブレットをテーブルに置いた。長い沈黙のあと、ようやく重い口を開く。 「青山。もし私の思い違いなら、ただの自惚れだと思って聞き流して……もう、私を待たないで。あなたはこんなに優秀な人なんだから、もっといい人にいくらでも出会えるわ。あなたの大切な時間を、私なんかに使わないで」 「ささよ」 小夜が正面から切り込んできたのを見て、青山もついに覚悟を決めた。 「僕にそんな資格がないのはわかっている。一年前、君を海外へ送り出したのは僕だ。そのせいで、君はあんな酷い目に遭った。それなのに僕は国内で身動きが取れず、君を助けに行くことすらできなかった……だから、ずっと怖くて訊けなかったんだ。でも今は、お互いを縛るものがなくなって、新しい人生が始まっている。だから、訊かせてほしい。あの日の言葉を、まだ信じていてもいいかな」 小夜の表情が凍りついた。 あの日の言葉。覚えていないはずがない。一年前、青山の助けで海外へ逃れる日、搭乗の直前に、彼女は確かに彼と約束を交わしたのだ。 けれど、今は…… 「違うの」 長い間うつむいてから、小夜は絞り出すように声を出した。「海外へ行くと決めたのは私自身の意志よ。あなたはただ、手を貸してくれただけ。
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第462話

茶室の前で二時間近く待ち続けた彰が、いい加減しびれを切らして中に踏み込もうとした矢先、小夜が自ら出てきた。 「あいつが、何かしたのですか」 目の縁が赤く、鼻先もほんのりと紅い。明らかに泣いた後だった。彰の目の奥が、すっと冷たく沈む。口調こそ落ち着いていたが、体はすでに大股で茶室に向かっていた。青山に落とし前をつけに行く気だ。 「違うわ!」 小夜は慌てて彼の腕を掴み、強引に外へ引っ張った。「栄知様に今夜来るよう呼ばれているの。これ以上遅れられないわ。それに、あなたには関係ないでしょう!」 いつもこうだ。 この一年、小夜が青山と会うたびに、彰は異常なほどぴったりと張りついてくる。最初の頃は部屋の中にまで同席しようとしたほどだ。きつく叱っても、返ってくるのは決まって同じ言葉だった。 ――旦那様の遺命です。社長をお守りしろと。 青山が自分を傷つけるわけがないのに。 何度か本気で怒って、ようやく外で待たせるようになったが、それでも時間制限つきだ。小夜には彰に対する命令権があるとはいえ、相手は長谷川本家が育て上げた筆頭の腹心であり、単に気に入らないからと切り捨てるわけにはいかない。 せいぜい、専属秘書の奈々をそばに置いて、彰との接触を物理的に減らすくらいしかできなかった。 だが国内にいる限り、どうしても彼を完全に振り切ることはできない。 本当にやっかいだ。 彰を車に押し込み、走り出す。道中、運転席の彰がバックミラー越しにやはり一言挟んできた。「奥……社長、小林青山という男は危険です。見た目ほど単純な人間ではありません。今後は、少し距離を置かれたほうがよろしいかと」 「……」 小夜は呆れたように言った。「それ、本当に青山のことを言ってるの?自分のことじゃなくて?」 「……私は、決して社長を傷つけません」 「ふん」 小夜は取り合う気にもなれなかった。それに、まだ心も落ち着いていない。目を閉じ、指先で眉間を揉みながら、波立つ感情をやり過ごそうとした。 …… 茶室の二階。 オレンジ色のベントレーが視界から消えるのを見届けた青山が、席を立とうとした時、テーブル上のスマホが震えた。画面に表示された番号を見た瞬間、彼の唇から穏やかな笑みがすっと消え失せた。 「何の用だ」 何度か無視した
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