若葉が車から降りた瞬間、周囲から感嘆の声が次々と上がった。ゴールドのアイシャドウが、若葉の美しい切れ長の瞳をきらびやかに縁取っている。床まで届く同色のドレスは、照明を浴びて比類なき華やかさを放っていた。これほど優美な美人が、非の打ち所がないほど端正な容姿で、漆黒の高級スーツから妖艶な気品を漂わせる圭介と並び立つ姿は、まるで一枚の絵画のようだ。これほど見事な二人を前にして、人々が感嘆の声を上げるのも無理はなかった。陽介もまた若葉の姿にすっかり見惚れ、その視線は釘付けになっていた。当の若葉は、切れ長の目尻を微かに上げ、瞳の奥に満足げな光を宿している。会場中の視線を一身に浴びるこの感覚が、彼女は好きだった。小夜は階段の上からその光景をすべて見下ろし、冷笑を一つ漏らして踵を返し会場に入ろうとしたが、またしても陽介に阻まれた。「まだ分かんねえのか。俺たち天野家だけじゃねえ、圭介だってお前なんか歓迎してねえんだよ。とっとと失せろ、目障りだ」小夜は心の中で大きくため息をついた。あれほど若葉に夢中なくせに、自分への嫌がらせは忘れないらしい。そもそも、この宴会に参加したかったわけではない。あの危険で底知れない宗介の誘いを断れなかっただけだ。好き好んで来たわけではない。この狂人と議論するのは無駄だ。理屈など一切通じない。小夜はスマホを取り出し、宗介に簡潔なメッセージを送る。あなたの弟に阻まれて、宴会には参加できそうにないと。あなたの実の弟が騒ぎを起こしているのだから、宴に参加できなくても自分のせいではない。もとより来たくはなかったのだから。メッセージを送り終え、小夜が立ち去ろうとした時、若葉が彼女に気づき、目を輝かせながらスカートの裾を持ち上げて小刻みに歩み寄ってきた。「小夜ちゃん、あなたも来ていたのね。早く言ってくれれば、圭介に迎えに行かせたのに」吐き気を覚えながら、小夜は眉をひそめて近づいてくる圭介を一瞥し、皮肉な笑みを浮かべた。「ちゃん付け? 確かに私はあなたより年下ですけれど、立場というものを考えれば、その呼び方はあまりに馴れ馴れしいのではなくて?」小夜は冷ややかに言い放つ。「あなたは私を誰だと思っているのかしら。相沢さん、あなたも名家の令嬢でしょう? 少しはご自分の立場を弁えることね」ここまであか
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