All Chapters of レティアの虹色の冒険: Chapter 61 - Chapter 70

75 Chapters

60話 ルーシー、ジェレミー、フィオの連携討伐

♢ルーシー、ジェレミー、フィオの連携討伐 森の奥深く、ルーシー、ジェレミー、そしてフィオの3人は順調に討伐を進めていた。魔物の群れが周囲に潜む中、剣士二人が前線で連携を取り合い、後方のフィオが魔術で支援をすることで見事なチームプレイを展開している。初めての連携にもかかわらず、その動きは手慣れているようで、見ている者には何度も共に戦ってきた仲間のように映った。 ルーシーは素早い身のこなしで魔物の攻撃をかわし、隙を見つけて剣を振り抜く。その剣は一閃で魔物の弱点を捉え、鮮やかに斬り裂いた。彼女はその動きの間もジェレミーの動きを観察し、互いにカバーし合う形で攻撃の隙を補っていた。 ジェレミーはしっかりと剣を構え、魔物の攻撃を受け止めるたびに力強く押し返す。その一撃一撃は訓練を重ねた結果であり、剣の軌跡は鮮やかで正確だ。魔物に囲まれた場面でも冷静に足場を確保し、ルーシーが動けるスペースを作り出していた。 後方のフィオは、魔物の動きを見極めながら身体強化の魔法を唱える。ルーシーとジェレミーの剣が力強く鋭さを増すのは彼女の支援があってこそだった。さらに、彼女は魔物の足元に氷の魔法を放ち、足止めをすることで剣士たちが安全に攻撃を仕掛けられる状況を作り出していた。「ジェレミー! 次、右側の魔物を頼むわ!」 ルーシーが剣を振り抜きながら声を掛ける。「了解です。私が押さえますので、その間に仕留めてください!」 ジェレミーはすぐに魔物の前に立ちはだかり、剣を構えた。 フィオはその様子を見ながら笑顔で声を掛ける。「ふたりとも、強化魔法をかけるよ! これで攻撃がもっと効くはず!」 ルーシーが笑いながら応じた。「頼りにしてるわよ、フィオ!」 ジェレミーも魔物を押さえ込みながら笑顔を浮かべて応じる。「感謝します、フィオさん。これで勝てますね!」♢遠吠えとレティアへの信頼 森の空気が静けさを取り戻し始めたその矢先、遠くの方から響き渡る魔物の雄叫びが聞こえた。それはまるで戦いが始まる合図のようであり、一行の注意を引き付けた。その音を
last updateLast Updated : 2025-08-11
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61話 「じゃま!」の一言とレティアの拗ね

 ジェレミーは驚きと感心が入り混じった声を漏らした。彼の表情には、畏敬の念が浮かんでいる。「これほどの魔物を……まるで子犬を追い払うように討伐するとは……。」 フィオも目を見開きながら笑みを浮かべ、少し皮肉を込めて言った。彼女の声には、諦めにも似た感情がにじんでいる。「やっぱり……わたしたちが駆けつけても、わたしたちが邪魔になっちゃいますねー。」 ルーシーは剣を収めながら一息つき、ホッとした顔で呟いた。彼女の肩の力が抜け、安堵の息を漏らす。「ちょっと、あんたねぇ……わたし達の獲物を横取りしないでよね!」 その言葉には若干の不満を含みつつも、心のどこかで助かった安堵感が滲み出ていた。 一方、フィオはルーシーの言葉に対して優しい笑みを浮かべ、そっとレティアの耳元で囁いた。彼女の指先が、レティアの髪を優しくなでる。「そんなに、機嫌を悪くしないで……レティーちゃん。ほんとはね……すごく助かったんだよ。ルーシーの顔を見ればわかるでしょ。ウフフ♪ ありがとね。」 その言葉に、レティアは少し顔を上げたものの、どこかしょんぼりした様子を見せていた。彼女の瞳は、まだ潤んでいるように見える。♢「じゃま!」の一言とレティアの拗ね レティアは影から現れる際に、ルーシーが安堵している様子を感じ取っていた。しかし、戦闘中に放たれた「じゃま!」という言葉にショックを受けていたのだ。その言葉が、彼女の心に深く刺さった。 彼女は座り込み、わざと俯きながら大きな瞳を潤ませてルーシーを見上げる。その瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんでいた。「ルーシーに『じゃま!』って言われたぁ……。」 その姿はまるで小さな子どもが拗ねているかのようで、愛らしさが漂っていた。 そんなレティアに可愛らしく訴えられたルーシーは、思わずモジモジしながら目をそらし、恥ずかしそう
last updateLast Updated : 2025-08-12
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62話 ギルドにおすそ分け

 彼は慎重にレティアの反応を見ながら言葉を選び、丁寧に提案を述べた。「レティア様の負担にならなければ……数頭を残していただいて……収納していただきギルドで食材として買い取りをいたしますけれど……どうでしょうか?」 その言葉には、ジェレミーの優しさと気遣いが込められていた。レティアの機嫌を損なわないよう、彼の言葉はあくまで控えめで慎重だった。 レティアはジェレミーの提案に耳を傾けながら、再び自分が狩った獲物の山を眺めた。そして少しだけ困ったような表情を見せつつ、可愛らしく笑って誤魔化すように答えた。「うん。ちょっと……獲りすぎちゃったねぇ。えへっ♡」 その反応にジェレミーは少し安心したようで、肩の力を抜きながらうっすらと微笑みを浮かべた。一方で、フィオとルーシーもこの光景に少し呆れたように見つめていたが、レティアの無邪気な笑顔に免じて何も言わず静かに見守っていた。♢大量の獲物とギルドの騒ぎ 翌日、レティアは大量の獲物をバッグに詰めてギルドに向かった。ギルドの扉をくぐると、その異様な重さに周りの冒険者たちが好奇の目を向ける。そして、そのバッグからシカ、ウサギ、さらには森でしか見られない珍しい獲物までが次々と引き出される光景に、ギルド職員や冒険者たちがざわつき始める。彼らの間には、驚きの声が響き渡る。「……あの、これは全部一人で仕留めたんですか?」 ギルド職員の一人が目を見開きながらレティアに尋ねた。彼の声は、驚きでわずかに上ずっていた。 レティアはニコニコ笑顔で答える。その笑顔は、何の悪気も感じさせない。「うん♪ みんなでお昼に食べようと思ってたんだけど、さすがに多すぎちゃったから持ってきたの! ギルドで使ってねぇ♡」 その無邪気な声にギルド職員はさらに困惑しながらも感心していた。周囲の冒険者たちはその規格外の活躍に驚きながらも、彼女の能力を改めて認めざるを得ない状況だった。♢料理コンテストの開催
last updateLast Updated : 2025-08-13
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63話 料理コンテストの開催

 彼女はシカ肉を前にして、包丁を握りしめながら首を小さく傾ける。「あれ? あれれぇ……どうやって切るんだろぉ……?」 その声には困惑よりも好奇心が滲み、包丁の刃先と肉を交互に見つめる瞳がくるくると揺れていた。やがて、指先を唇にちょこんと添え、考え込むようにぽつりとつぶやく。「うーん……難しいなぁ〜」 野菜を刻む段になると、レティアは肩をきゅっとすくめてから、両手で包丁を持って構える。だがすぐに「あれれ〜?」と首を傾げ、指先でくるくるとまな板の上の野菜を並び替え始める。 その動きはどこかおままごとのようで、バラバラに刻まれた野菜たちが彼女の小さな奮闘を物語っていた。 レティアは、不意に包丁をぽんっとまな板の脇に置き、ふんわりとエプロンの裾をつまみ上げる。小さな指先が布をきゅっと握るその仕草は、戸惑いの中にも女の子らしい控えめな甘さがにじんでいた。「うまくできないよぉ〜……」 小さな声でぽつりとこぼし、ふくれた頬のまま周囲を見回す。その瞳は、ほんの少し潤んだようなきらめきを浮かべながら、助けを求めるように瞬きする。「だれかぁ~……助けてほしいな?」 言葉には照れ混じりの甘えが乗っていて、見ていた者たちの心を自然とくすぐった。 額には、調理場の熱気と不慣れな作業のせいで、小さな汗がにじんでいる。その一滴が髪の間からこぼれ落ちるたびに、どこか頼りなげでいじらしく、見る者の胸にぽっと灯をともす。 その姿は、ぎこちなくも、あまりにも愛らしかった。まるで春の朝に咲いたばかりの花のように――周囲の冒険者たちは自然と足を止め、思わず微笑みを交わして集まってきた。「おいおい、そっちじゃなくてこっちに包丁入れるんだって!」  笑いをこらえきれず助け舟を出す者がいれば、 「肉を焼くタイミングはこうやるんだよ!フライパンの熱を指先で感じてみろ!」  と得意げに説明する者も現れた。 レティアは「わかんないよぉ〜」と頬をふくらませな
last updateLast Updated : 2025-08-14
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64話 料理コンテストの成功とレティアの人気

 惜しくも入賞を逃した参加者たちも、互いに料理を分け合い、「これ、美味いな!」「お前のと交換しようぜ!」と笑い合いながら声をかけ合う。ギルドの広間は、まるで盛大な宴のような賑わいを見せていた。 グラスを傾ける軽やかな音。楽しげな談笑。料理を味わう満足げな咀嚼音――それらすべてが混ざり合い、空間全体をあたたかく満たしていた。 こうして料理コンテストは大成功を収め、ギルド内は美味しそうな香りと笑い声に包まれていた。テーブルには工夫を凝らした料理が並び、冒険者たちは仲間と肩を並べながら、心からの笑顔を浮かべている。 レティアの無邪気な行動がきっかけとなって始まった、ちいさな“お祭り”のようなこのイベントは、冒険者同士の距離を縮め、普段はすれ違いがちな彼らの間に新たな交流と絆を生み出した。笑顔が交わされるたびに、ギルドは以前にも増して明るく、あたたかな雰囲気に満ちていく。 イベントが進むにつれ、冒険者たちは次々とレティアの“規格外”な行動に驚きつつも、同時にその底にある純粋な心――まっすぐで屈託のない想いに、知らず魅了されていった。 彼女の存在は、ギルドという集団の空気そのものを変えていく。職員たちもまた、彼女がもたらした賑やかさと温かさに心を和ませながら、笑顔を交わし合い、久々に心から楽しんでいる様子だった。 その日のギルドは、ただの職場でも拠点でもなく、皆の「帰る場所」になっていた。「レティアさん、次はどんな狩りをするんですか?また面白いことになりそうですね!」 一人の冒険者が、期待に満ちた瞳で興味津々に尋ねると、レティアはニコっと屈託のない笑顔を浮かべて答える。「えーっとねぇ……お魚さんとか捕まえてみたいかなぁ♡ きっと海には美味しい魚さんがいっぱいいるはずだよ! その後、スイーツ作っちゃおっかなっ! 海の幸のスイーツってできるのかなぁ~?」 そんなレティアの言葉に、ギルド職員や冒険者たちは少し苦笑しながらも、次にレティアが巻き起こすであろう愉快なイベントを心待ちにしている者が多くいた。彼らの顔には、新たな冒険への期待と、そしてわ
last updateLast Updated : 2025-08-15
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65話 レティアとシャドウパピーズの「冒険者訓練」

 あっという間の出来事だった。シャドウパピーズたちは見事に獲物を仕留め、その連携の完璧さに森の中の空気が静まり返る。ノクスは低く満足げな唸り声を上げ、群れの仕事を称えるかのようにシャドウパピーズたちを一人一人見渡した。彼の視線には、信頼と誇りが宿っている。 彼らはそれぞれの役割を終えた後、ノクスの周りに静かに集まり、影の中に潜んでいく。その姿は単なる群れを超えた、一糸乱れぬ統率のとれた存在そのものだった。森には再び静寂が訪れるが、そこにはノクスとシャドウパピーズの圧倒的な支配力が確かに刻まれていた。 しかし、シャドウパピーズの群れには意外な一面も存在する。彼らは時折、ノクスの目を盗んで森の中で遊び始めることがあるのだ。獲物の追跡をしながら無邪気にじゃれ合ったり、影の中で誰が一番うまく隠れられるか隠れんぼをしたりする姿は、恐ろしい魔物の群れとは思えないほど愛らしいものだ。彼らの小さな体が、ぴょんぴょんと跳ねるたびに、影が揺れる。 例えば、シャドウパピーズの中の一頭がノクスの影からひょっこりと飛び出し、仲間たちを軽く押して逃げる。そのお茶目な仕草に誘われるように、他のシャドウパピーズも次々と影の中に飛び込み、追いつけ追い越せとばかりに追いかけっこを始める。 そんな無邪気な姿を見たノクスは、低い唸り声を漏らしながら、まるで微笑んだかのような態度を見せる。それは、彼らの遊びが群れの団結力をさらに深めることを許しているかのように感じられる瞬間だった。ノクスの冷徹な眼差しの奥に、確かに温かい光が宿っていた。♢レティアとシャドウパピーズの「冒険者訓練」 レティアもシャドウパピーズとの絆をさらに深めるべく、定期的に彼らの「冒険者訓練」を行っている。彼女は無邪気ながらもしっかりと指揮を取り、シャドウパピーズに「冒険者としての礼儀」を教えようとしている。彼女の指導は、いつも愛とユーモアに満ちていた。 例えば、レティアが獲物を運んでくるシャドウパピーズに対して「ちゃんと並んで持ってくるんだよっ!順番だよ〜」と、まるで小さな子どもに言い聞かせるように優しく、しかし軽く叱ると、シャドウパピーズたちは途端に動きを止め、きょとんとした顔で互いを見合わせる。そして、慌て
last updateLast Updated : 2025-08-16
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66話 夢の探検隊、結成!

♢シャドウパピーズの成長と絆 その後、レティアが「よくできたねっ♪ うんうん。いい子だねー♪」とシャドウパピーズを撫でると、彼らは嬉しそうに低い唸り声を漏らしながらレティアの周りを囲む。彼らの金色の瞳は、レティアへの喜びと信頼を示している。それは、群れ全体が主であるレティアに絶対的な信頼を寄せていることを示している瞬間だった。 シャドウパピーズの活動は、森の平穏を保ちながら彼ら自身の成長をもたらしている。ノクスの指揮の下で動く彼らは、日々の経験を積みながらさらに強力な群れへと進化していく。レティアとの関係性も深まり続け、冒険者としての役割を果たしながら個性を際立たせている。 このようにして、シャドウパピーズたちは恐ろしくもどこか愛らしい存在として、レティアの側で唯一無二の役割を果たし続けている。彼らの影は、常にレティアのそばに寄り添っていた。♢お菓子の木、見つけたかも! その日の午後、ギルドの食堂はいつにも増して賑やかだった。冒険者たちの話し声とカトラリーの音がごちゃ混ぜになり、活気に満ちている。そんな喧騒の片隅で、レティアは湯気の立つミルクココアを両手で温めながら、ふと耳にした会話にぴくりと反応した。「聞いたか? 森の奥に、すげえお菓子の木があるって噂!」 屈強な戦士風の男が、隣の魔法使いに肘で小突きながら楽しそうに話している。「お菓子の木ぃ? 馬鹿言えよ。そんなもん、あるわけないだろ。疲れて幻覚でも見たんじゃねぇのか?」 魔法使いは鼻で笑うが、戦士は真剣な顔で首を振った。「いやいや、マジだって! なんでも、甘〜い香りがするらしいんだ。一口食べたら、もう病みつきになるって話だぜ?」 その言葉を聞いた瞬間、レティアの大きな瞳が、きらきらと輝きを増した。彼女の頭の中には、すでに色とりどりのお菓子がたわわに実る、夢のような木の姿が鮮明に描かれていた。ごくりと喉を鳴らし、ミルクココアを置くと、隣で静かに伏せていたノクスを揺り起こす。「ノクス、聞いた? お菓子の木だって! すごいねぇ! わたし、見つけたいなぁ!」 ノクスはレティアの興奮を感じ取り、短く
last updateLast Updated : 2025-08-17
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67話 森の迷宮とお菓子の幻

 ルーシーが慌てて駆け寄り、口元に手を伸ばしかけたレティアを間一髪で止める。ノクスも「ウゥー……」と唸り、キノコからレティアを引き離すように促した。レティアは「えぇ〜、美味しそうなのにぃ……」と不満げに口を尖らせた。 さらに奥へ進むと、今度は色とりどりのツタが絡み合った、異様な雰囲気の木を発見した。赤、青、緑、黄……まるでキャンディが絡まっているように見える。「わぁあ! キャンディの木だ! フィオ、これ食べてみたいねぇ!」 レティアは目を輝かせ、そのツタに手を伸ばそうとする。しかし、フィオの顔色が変わった。「レティーちゃん、待って! それ、魔物の触手だよ! ほら、よく見て! ギザギザしてるし、変な匂いもする!」 フィオの指差す先には、ツタのように見えた触手の先端が、わずかに蠢いている。ジェレミーが即座に剣を抜き、その触手からレティアを引き離した。「レティア様、危険です! これは擬態能力を持つ魔物です。下手に触れていたら、巻き込まれるところでした!」 魔物の存在に気づかなかったレティアは、キョトンとした顔で首を傾げた。「えぇ〜……キャンディじゃないのぉ? 残念だねぇ……。」 その純粋な落胆ぶりに、ルーシーはため息をつき、フィオは苦笑いを浮かべた。ジェレミーは額を押さえ、深いため息を漏らした。彼らはすでに、レティアのお菓子の木探しが、とんでもない珍道中になることを覚悟し始めていた。♢天然の「誤爆」と魔物の群れ 一行は休憩のために、ひらけた場所を見つけて腰を下ろした。レティアは持参したおやつ(もちろん、本物のお菓子だ)を頬張りながら、周囲をきょろきょろと見回している。その視線の先に、表面がツヤツヤとした黒い岩が見えた。「ねぇノクス! あれ、チョコレートみたいだよ! 美味しそうだねぇ!」 レティアが指差すと、ノクスは「くぅん」と返事をし、言われるがままにその岩に近づき、鋭い爪で掘り始めた。ノクスの力強い爪が岩を削る
last updateLast Updated : 2025-08-18
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68話 ギルドを覆う、甘くて奇妙な香り

「残念じゃが、その木はもう、長いこと見とらんのう。滅びてしもうたのかもしれん。」 老人の言葉に、レティアは「そっかぁ……」と、わずかに肩を落とした。ノクスが心配そうにレティアの頬を軽く突いた。「でも、みんなと一緒にお菓子探せて、楽しかったねぇ!」 しかし、レティアはすぐにいつもの笑顔を取り戻した。結果的に「お菓子の木」は見つからなかったが、彼女にとっては仲間たちと過ごしたこの時間が、何よりも大切な「お菓子」だったのだろう。その純粋な言葉に、ルーシーたちの胸にも温かい感情が広がった。ジェレミーは、レティアの背中を優しく撫でた。♢甘いご褒美と、次の物語 ギルドに戻った夜、レティアの「お菓子の木探し大冒険」の話は、瞬く間にギルド中に広まった。魔物を一瞬で蹴散らしたレティアの強さも話題になったが、それ以上に、彼女の天然な言動と、それに振り回されながらも温かく見守る仲間たちの姿が、皆の笑いを誘っていた。 そして、ルーシーが言った。「レティア、今回は付き合ってあげたんだから、ご褒美よ!」 ギルドの食堂で、レティアの前には豪華なフルーツパフェと、いくつもの可愛らしいケーキが並べられた。フィオは笑顔で「フルーツタルトもあるよ!」と言いながら、彼女の大好きなタルトを差し出した。ジェレミーもまた、今日の冒険で得た珍しい鉱石をギルドに売り、その売上の一部でレティアのために特別なマフィンを注文していた。「わぁ〜っ! た、タルトぉ〜! パフェもケーキもマフィンも〜! だいすきっ♡ ありがとうっ!!」 レティアの目が文字通りきらきらと輝き、両手でタルトを抱きかかえるように大事そうに眺める。そして満点の笑顔でぺろりと一口――「んふふぅ……しあわせぇ〜……♪」 至福そのものの表情を浮かべて頬張るその姿に、周囲の視線がほっこりと集まっていた。ノクスもレティアの足元で満足げに目を細めている。レティアがタルトの上に載っていた艶やかなイチゴを指先でつまみ、「ノクスぅ、はいっ、内緒ね♪」とそっとノクスの口元へ差し出すと、ノクスは静かに
last updateLast Updated : 2025-08-19
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69話 収まらない騒動と癒しの存在

♢キラキラキノコと「飾りつけ」 騒動の渦中、さらに別の職員が、薄暗い廊下の掲示板の裏から、怪しく発光するキノコを見つけた。それは見たことのない鮮やかな色で、まるで宝石のようにキラキラと輝いている。不気味な光を放つそのキノコに、ギルド職員は顔色を変えた。「これは危険な魔力を持つキノコでは!? 早急に隔離を!」 騒然とするギルド内で、再びレティアの声が響いた。「あ! それもわたしのだよ! キラキラしてて可愛いから、ギルドを飾ろうと思って!」 レティアは少しも悪びれることなく、満面の笑みで答える。森で採取した珍しいキノコを、「可愛い」という単純な理由でギルドの装飾に使おうとしていたのだ。その発想に、周囲の冒険者たちは呆れるやら、感心するやらで、複雑な表情を浮かべた。♢「可愛い」素材と規則違反 極めつけは、ジェレミーが自身の私物を保管している共有ロッカーを開けた時だった。本来彼の私物が入っているはずの棚から、彼は乾燥した魔物の目玉、鋭い牙、そして不気味な光沢を放つ鱗といった素材が、一つ一つ丁寧に小分けにされて保管されているのを発見した。それらはどれも珍しい魔物の素材で、通常であればギルドの買取カウンターに持ち込まれるべきものだ。「レティア様! これは一体……!」 ジェレミーは言葉を失い、手のひらに乗せた魔物の目玉をレティアに見せながら問いただした。「あ、それね! 形が可愛いから、いつかアクセサリーにしようと思って取っておいたの! 鱗もキラキラしてるでしょ?」 レティアは、全く悪びれることなく、むしろ自慢げに微笑んだ。その純粋すぎる言葉に、ジェレミーは膝から崩れ落ちそうになる。ルーシーは、ジェレミーの手から目玉をひったくるように取り上げ、レティアに向かって叫んだ。「あんたねぇ! ギルドの規則をちゃんと読みなさいよ! 危険物の持ち込み、不用意な設置、私物の放置……どれだけ違反してると思ってるのよ!?」 ルーシーは頭を抱え、フィオも困ったような笑顔を浮かべている。ギルド職員たちは、レティアの規格外な行動
last updateLast Updated : 2025-08-20
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