「自分が大スターだとでも思ってるのか?」主催者はくっと笑い、露骨な軽蔑を滲ませた。「あんたの商品価値は今や右肩下がり。どれだけのブランドが契約を切ったと思ってる?それでもうちだけは見捨てずにやったんだ。でなきゃ、今回のイベントに出て露出を増やす機会すらなかったはずだろ。そんな立場で文句を言うな」海羽は唇を噛み、不快そうに彼を睨みつけた。――そうだ。一輝と決裂したせいで、彼女の持っていた仕事や人脈はすべて一輝に断ち切られた。彼は彼女を追い詰め、戻ってきて頭を下げさせるつもりなのだ。けれど、海羽は意地っ張りな人間だ。今さら引き返すはずがない。だからここしばらくは自分で仕事を取り続けてきた。ようやく掴んだこの出演の機会のために、彼女は万全の準備をしてきたのだ。最高の姿を見せるつもりで。――それなのに、主催側が用意した衣装は、衣装などではなかった。それは、明らかな侮辱だった。海羽がこの屈辱を飲み込めるはずがない。「そんな服、着たきゃあんたが着なさいよ。こっちはもう降りるから!」そう言い捨てて踵を返したが、更衣室のドアに手を掛けた瞬間、背後から声が飛んできた。「帰るのは構わないが、違約金を払うの、忘れるなよ」海羽の足が止まった。「契約を忘れたとは言わせない。宣伝義務があるんだ。今ここで帰れば契約違反。違約金は出演料の十倍。今のあんたに、その金額が払えるか?」海羽の腕が、体の横で次第に強く握り締められる。「......最初から脅すつもりだったんでしょ!」「まさか。契約書には書いてあったよ?署名したのもあんた自身だ。裁判になったところで、こちらに非はない」相手の得意げに歪んだ口元を見て、海羽は吐き気を覚えた。だが、違約金十倍――そんな大金を、今の彼女が用意できるはずもない。それに、この機会を失えば、露出は完全に途絶える。露出がなければ価値はなくなり、無期限の冷遇が待っているだけだ。「ミウさん、これもあんたのためなんだぜ?」相手は黒いレースの衣装を指で引っかけ、彼女の前に突き出した。「地味な格好で出たところで、話題になると思うか?よく考えな」バタン、と更衣室のドアが閉められた。海羽は一人、その場に立ち尽くし、テーブルの上に置かれた露出の多い衣装を見つめたま
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