海羽は一瞬言葉を失った。どんな表情をすればいいのか分からず、胸の内には嘲りばかりが渦巻く。一輝は、彼女が唯一心を動かした女だと言うのか。「男の嘘って、ほんと口を開けばいくらでも出てくるよね」彼女は鼻で笑った。「嘘じゃない」一輝は淡々と答える。「心を動かされたのは、お前だけだ」海羽は、これまで彼の周りを取り巻いてきた女たちとはまるで違っていた。それが、何より彼を惹きつけた理由だった。あの女たちは、欲しいもののためなら自分から近づき、媚び、より多くを得ようと必死になる。だが海羽は違う。取引はあっても、彼に取り入ろうと自分から動くことはない。必要な時に淡々と応じるだけで、まるで仕事として割り切っているようだった。いや、正確にはアルバイト、というべきか。なぜなら彼女は、彼と一緒にいる時間よりも、女優という仕事をはるかに愛していたからだ。彼女のスマホは二十四時間常に繋がる状態に保たれ、いつでも仕事の連絡を受け、すぐに駆けつけられるようにしている。まったく、感心するほどの働き者だ。だから彼はふと意地の悪い想像をしたことがある。もし二人があんなことをしてる最中に突然電話が鳴ったら、彼女は自分を置いて電話に出るのか、それとも動揺して、逆に敏感になるのか。その答えは、彼女の友人から電話がかかってきた時に出た。ついさっきまで情に溺れた表情をしていたのに、着信表示を見た瞬間、彼女の顔は一変した。あまりに真面目な態度で、彼は思わず言葉に詰まりそうになった。まるでさっきまでのすべてが、彼のプライドを守るために演じていた芝居だったかのようだったからだ。彼のテックは、そこまで酷いのか。わざわざ演技で合わせてもらうほど?あれは、彼が初めて自分を疑う瞬間だった。海羽は、凛々しさと艶やかさを併せ持つ顔立ちで、ひどく人目を引く。だから彼は初めて彼女を見た時、会議まで延期して、自ら彼女を病院へ送り届けた。こんな女には、特別な配慮があって然るべきだ、そう思ったのだ。色気に惑わされたと言われれば、否定はできない。だが病院で最初に彼の手を引いたのは、彼女の方だった。彼はただ、その流れに乗っただけだ。海羽の初めての時のことも、彼はよく覚えている。恐怖で全身が震えているのに、必死に
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