「うん」紗夜は頷き、涙のにじむ瞳の奥に、かすかな笑みを宿した。ほどなくして、千歳が湯気の立つ料理を買って戻ってきた。千芳は機嫌が良さそうで、先ほどよりも半椀分多く食べ、紗夜もそれを見て嬉しくなる。食事を終えると、千歳はまた率先して食器を片づけ、千芳と紗夜に水まで注いでくれた。「ありがとう」紗夜が丁寧に礼を言う。「どういたしまして。これくらい当然だよ」千歳は笑って答えた。千芳は二人を交互に眺め、何も言わずに微笑んだ。紗夜はこのまま千芳のそばに残るつもりだったが、千芳は「本当に大したことないから、付き添わなくていい」と言い、むしろ彼女に自分を大事にするよう促した。「じゃあ、数日したら迎えに来て、退院して一緒に家に帰ろう」千芳の体調もほぼ回復しており、医療院を出て普通の生活に戻れる状態だった。けれど、「家に帰る」と聞いた瞬間、千芳は少し言葉に詰まった。あの家は、当時和洋に何かあったときに差し押さえられ、すでに彼女たちのものではなくなっていたのだ。「大丈夫。私が買い戻すから」紗夜は穏やかな声でそう慰めた。千芳は何も言わず、ただ小さく頷いただけだった。その瞳の奥に、かすかな寂しさがよぎる。千歳が車を取りに行き、紗夜は名残惜しそうに千芳と別れを告げた。出発前、千芳が口を開く。「正直彼、なかなかいいと思うわ。見た目もいいし、気も利くし」「もう、冗談やめて」紗夜は手を振りながら言った。「じゃあ、もう行くね。体を大事にするんだよ」そう言って、車のほうへ向かう。車に乗ると、紗夜が口を開くより先に、千歳が切り出した。「今夜、70年に一度って言われてるペルセウス座流星群が見られるらしいよ。最高の観測スポットを知ってるんだ。一緒に行かない?」出る前に、千芳がこっそりと彼に教えていた――紗夜が流星群を見るのが好きだと。紗夜は時間を確認し、少し遅いとは思いながらも頷いた。「いいよ」千歳はハンドルを切り、山の上にある天文観景台へと車を走らせた。「でも、この時間だと、もう閉まってるんじゃない?」案の定、正門には鍵が掛かっていた。やっぱり、タイミングが悪かった。紗夜は少し残念そうにする。「閉まってても、開ければいい」千歳はそう言いながら、ポケットから鍵を取
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