警察署を出ると、京浜の陽射しはちょうどよく、強すぎもせず、柔らかな温もりを帯びていた。文翔はスーツの上着を脱ぎ、紗夜の肩にそっと掛けると、彼女を強く抱き寄せた。まるで、その体温と重みで、彼女が確かにここにいるのだと、自分に言い聞かせるかのように。紗夜は彼の胸に身を預け、乱れながらも力強く打つ心臓の鼓動を、はっきりと感じていた。彼がずっと外で、すべてを聞いていたことを、彼女は知っている。そして今この瞬間、彼の胸を満たしている緊張と後悔も。彼女は手を伸ばし、そっと彼を抱き返した。この抱擁は、かつてのような懇願や卑屈さを帯びたものではない。再会のときの探り合いと距離感とも違う。これは、対等な抱擁だった。生き延びた安堵と、言葉にできない慰めを含んだもの。腕の中の応えを感じ、文翔はさらに強く彼女を抱きしめた。「さーちゃん」彼女の髪の上から落ちてきた声は、ひどく掠れていた。「帰ろう」「うん」長沢家の別荘に戻ると、夕食後のリビングはひときわ静まり返っていた。紗夜は理久と並び、柔らかな絨毯の上で複雑な宇宙戦艦のプラモデルを組み立てていた。理久の小さな手は不器用にパーツを扱い、ときおり紗夜を見上げる。その瞳に宿る依存は、溢れそうなほどだった。「おか......ううん、ママ」彼はふいに顔を上げ、澄んだ声で言った。「これから先も、ずっと、こうして一緒にいられる?」紗夜の手が止まった。息子の澄んだ瞳に映る自分を見つめながら、彼女ははっきりとした答えを返すことができなかった。ただ身をかがめ、額にそっと口づける。声はごく小さかった。「ママは、ずっと理久を愛してるよ」少し離れたソファで、文翔は書類をめくる手を止めた。母子を見つめ、紗夜が答える一瞬に見せた、隠しきれないためらいを見逃さなかった。強烈な焦燥感が、彼の胸を掴む。これだけでは足りない。彼女を引き留めるには、まったく足りない。もっと早く動かなければならない。彼女が再び揺らぎ、去ろうとする可能性を生むものを、すべて排除しなければ。......夜が更けた。紗夜が深く眠っているのを確かめてから、文翔は音を立てないよう起き上がった。ベッドで眠るその姿を一瞥すると、瞳に浮かんだ温もりは、瞬時に冷ややかな決断
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