ダンの姿が見えなくなると、ジェニファーは城の中へ戻っていった。「あ!」扉を開けて中へ入った途端、エントランスに佇むシドに遭遇したジェニファーは思わず声を上げてしまった。「ジェニファー様。驚かせてしまい、申し訳ございませんでした」「い、いいのよ。ただ、まさかシドがここにいるとは思わなかったから。こんなところで何をしていたの?」「いえ……ただ、ジェニファー様が戻られるのを待っていただけですから」ジェニファーの問いかけに、少しだけ目を伏せる。「え? そうだったの? まさか私の護衛騎士だから?」「ええ。そうです」まさかジェニファーとダンの様子が気になるから、この場にいたとは答えられるはずも無い。「ありがとうシド。でもニコラスが戻って来たのだから、今度からは私の護衛騎士では無くなるのじゃないかしら?」「確かにそうですが、まだニコラス様からは何も伝えられていませんので」ジェニファーの護衛騎士では無くなる……その言葉を聞くだけで、寂しい気持ちが胸に込み上げてくる。そんなシドの胸中に気付くこともなく、ジェニファーは尋ねてきた。「ジョナサンは今、どうしているのかしら?」「まだ、ニコラス様がついておられます」「え!? そうだったの? 大変、すぐに戻らなくちゃ!」ジェニファーはスカートを翻すと、急ぎ足で部屋へと向かった。そしてその後をシドは追った。誰もいない廊下を2人で歩いていると、シドはどうしてもジェニファーに尋ねたくなってしまった。「ジェニファー様……少々お尋ねしたいことがあるのですが」「何?」「先ほどの男性とは……どうなりましたか?」「え? どうなったって?」ジェニファーが少し驚いた様子でシドを見上げる。「い、いえ。変な尋ね方をしてすみません。彼から夜行列車で今朝、この地に到着したと話されていたので……本日もう旅立たれるのだろうかと気になったものですから」余計なことを口にしている自覚は十分あったが、それでも聞かずにはいられなかったのだ。「今日帰ると言って無かったわ。でもいつまでいるのかも聞いていないの。ただ、暫くは滞在すると言ってたわ。町で宿も手配しているそうよ」「宿ですか……何処の宿に宿泊するかは尋ねなかったのですか?」「ええ、別に聞かなかったわ」「そうですか」(町には宿が数えるほどしかない。調べれば、何処に宿泊して
Última atualização : 2025-10-27 Ler mais