ニコラスは書斎に戻る前に、一度ジョナサンのいる部屋を訪れた。「ジョナサンの様子はどうだ?」「あ、ニコラス様。はい、ジョナサン様ならよくお休みになられています」番を頼まれていたメイドが返事をする。「そうか。なら俺が戻るまでジョナサンのことを頼む。もし、目が覚めてぐずって泣くようなら、書斎に連れて来てくれ」「はい、かしこまりました」メイドの返事を聞くと、ニコラスは書斎へ向かった。書斎に戻ったニコラスは早速懐からジェニーの手紙を取り出した。封筒はかなりのあつみがあり、手紙の枚数が多いことが良く分かる。「まさか、こうして再び手紙が貰えるとは思わなかった……。君は手紙を書くのが好きだったよな」ニコラスの顔に笑みが浮かぶ。ニコラスとジェニーはボニートで再会してから結婚するまでの間、何度も手紙のやりとりをして互いの気持ちを育んできた。その時の思い出が蘇ってくる。結婚後もよく机に向かって手紙を書いている姿を見たことがある。早速ニコラスは机の引き出しからペーパーナイフを出すと、丁寧に開封して手紙を取り出した。「何て書いてあるのだろう……」はやる気持ちを抑えながら手紙を広げ、最初の一文を読んで目を見開いた。『ごめんなさい。ニコラス』手紙の書き出しは、ジェニーからの謝罪の言葉だったのだ。「ごめんなさい……? 一体どういうことなのだ?」ニコラスは食い入るように手紙を読み始めた——****ごめんなさい、ニコラス。私はずっとずっとあなたに嘘をつき続けていました。10歳の時に、『ボニート』で出会ったのは私ではありません。私の名前を名乗ったジェニーなのです。あの日、私は自分の名前を使ってジェニーに教会の献金に行かせました。そこで貴方と出会い、ジェニファーは自分の名前はジェニーだと名乗ったと話してくれました。それが全ての始まりでした。本当なら、あの時ジェニファーはジェニーだと名乗らず、自分の名前を告げても良かったのに。私のお願いを守る為に嘘をついたのです。教会から帰って来たジェニファーから素敵な出会いがあったことを聞きました。又会う約束をしてしまったと申し訳なさそうに謝ってきたので、2時間だけなら会いに行っていいと告げました。ジェニファーは私の言いつけを守って、自分の名前を明かさずに私として会っていました。私は毎日ジェニファーから
Last Updated : 2025-12-06 Read more