「ここがこの町で一番大きなアクセサリー屋さんだよ」ニコラスが案内してくれた店は赤レンガ造りの建物だった。扉には『手作りアクセサリーの店』と書かれた看板が取り付けられている。「手作りのアクセサリー屋さんなの?」「そうみたいだね。僕は一度も中へ入ったことが無いけど。それじゃ入ろうよ」アクセサリーの店へ入るのが初めてだったジェニファーは少し気後れしてしまった。(でも……私みたいな子供が入っていいのかしら……?)「どうしたの? ジェニー。中へ入ろうよ」ニコラスがジェニファーの手を引っ張る。「え、ええ。入るわ」頷くと、ニコラスは扉を開けて2人は店内に入った。「わぁ……」中に入った途端、ジェニファーは感嘆のため息をついた。店内には何台もの棚が置かれ、ネックレスや指輪等様々なアクセサリーが並べられていた。奥のカウンターにいた女性店員が2人に気付いた。「いらっしゃいませ……あら?」「こ、こんにちは」「僕たちはアクセサリーを見に来ました」子供だけで来たことに女性店員は一瞬困惑したが、2人の身なりがとても良いことにすぐに気付いた。(きっと、何処かのお金持ちか貴族に違いないわ)「何をお探しですか?」店員の質問にニコラスはジェニファーを振り返った。「ジェニー。どんなアクセサリーが欲しいの?」「ブローチが欲しいのだけど……」「ええ、ありますよ。こちらの棚にあります」女性店員の案内で、2人はブローチの棚の前にやってきた。そこには花の形をしたものや、動物の形を模したブローチ等が並べられている。「まぁ素敵!」初めて見る美しいデザインにジェニファーの目が大きく見開かれる。「ジェニー、どれがいいの?」「そうね……」どんなデザインのブローチがジェニーに似合うかと、ジェニファーは想像してみる。そして、一つのデザインブローチに目がいった。「これ……可愛くて、素敵だわ」それはウサギの形をしたブローチだった。目の部分には赤く光る小さな石が埋め込まれている。「こちらのウサギのブローチがお気に召しましたか?」「はい。とても気に入りました」女性店員の言葉に頷くジェニファー。「こちらの品は銀貨3枚になりますが、お買い上げされますか?」「銀貨3枚……」ジェニファーは毎週、伯爵家から金貨1枚を貰っている。銀貨10枚分が、金貨1枚なので今のジェニ
Last Updated : 2025-07-30 Read more