神谷社長がここにいるということは、ことはの後ろ盾になっているに違いない。病院でのあの時を思い出し、典明は素早く自分お感情を抑え込んだ。何と言っても、ことはは篠原家によって育てられた。自分はよくことはのことを理解しているから、ことはが理由もなく自分たちにここに来るよう脅すはずがないとわかっている。それもわざわざこの場所に。この花屋の被害がことはと関係していることに、典明はすでに気づいていた。そう考えると、典明は自分の血圧が驚くほどの速さで上昇しているのを感じた。しかし、典明はまだ平静を装っていた。「こんな夜遅くに、神谷社長もここにいらっしゃるとは」「俺のことは気にしないでくれ。ただの傍観者なので」隼人はそこに座り、ゆきから渡されたミルクティーを持っていた。足元には破壊された花材が散乱し、色とりどりの花が無残に散らばっていた。だが隼人は、まるで花々に囲まれた貴族のように、どこか無頓着で、高貴さと冷たさを併せ持っていた。「……」典明は呆然としていた。涼介は静かに視線をことはに向け、穏やかに尋ねた。「ことは、どうして寧々をここに呼びつけたんだ?」「寧々が私の友達のお店を破壊し、このお店の花材に毒があると悪質な告発をしたせいで、入院する人まで出した。私が寧々を呼んだ理由、まだわからない?」ことは逆に聞き返した。たちまち、典明と涼介の視線が寧々に注がれた。寧々は篠原夫人の腕をしっかりと掴み、顔をこわばらせた。篠原夫人はことはに対し反論した。「ことは、最近どうしてそこまでして寧々にいちゃもんをつけるの?こんなデタラメなことまで寧々になすりつけるなんて。神谷社長を後ろ盾にして、ますますやりたい放題になっているんじゃないの?」「お母さん、まずは人の話を聞こう」涼介が低い声で諭した。ことはは鼻で笑った。「その通りね、物事には証拠が必要だからね」そう言うと、ことはは携帯を取り出し、花屋を襲った二人のチンピラが警察の取調室で尋問されている動画を再生した。「誰の指示でやったんだ?」「素直に白状しないと、賠償金の支払いと拘留が待ってるぞ。相手が起訴すれば、刑期はもっと長くなる」「女の人から金をもらって、メールを見たらすぐあの花屋をぶっ壊せって言われたんです。『壊すだけでいい、あとは私が責任を取るから』とも言っていました」「その
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