ことはと隼人は、二人ともまさに最近不運が重なっていた。ことははニヤリと笑いながら言った。「神谷社長、今度お祓いにお寺へお供させていただけませんか?」隼人は眉を吊り上げ、視線をことはに向けた。「良い場所を知ってるのか?」こう聞かれたということは、神谷社長も本気ってことね。正直言って、意外だわ。神谷社長がまた「古臭い迷信はやめろ」とか言うかと思っていたからね。ことはは張り切って言った。「少し調べたことがありますが、帝都で一番ご利益があるのは、烏谷山(からすだにやま)にある青玄寺(せいげんじ)です」しばらく考えてから、隼人は言った。「烏谷山ならそんなに遠くないな」「ええ、車で3時間ほどです」「コンテストの第二ラウンドの結果が出てから行こう」そういえば、ことはは第二ラウンドのための作品を数日前に提出したばかりで、結果は近日中に出るはずだった。隼人はことはが黙り込むのを見て、目を細めた。「どうした、自信がないのか?」「いいえ」そう否定した後、ことはは隼人の眼球がちょっと動いただけでも、その動きが大げさに感じられてしまった。あの細くて長い針を見ていると、ことははまるで自分の顔に刺さっているような気さえしてきた。ことはは思わず念押しした。「神谷社長、目を閉じて休んだ方がいいですよ」「午後はずっと休んでいた」隼人はそう言いながらも、目を閉じた。次の瞬間、隼人は話題を変えた。「いつ慎之助の電話番号を知ったんだ?」ことはは少し驚いた。隼人が突然このことを聞いてくるとは思ってもいなかったからだ。ことはは苦笑した。「持っていませんよ。あの時はただ小田井さんを脅かしたかっただけなので」それを聞いて、隼人は目を開けた。「浩司が教えたのか?」ことはは頷いた。「安心してください神谷社長、私は一言も言いふらしませんので」隼人は澄ました顔で言った。「何を言いふらすんだ?俺が何かしたわけじゃないだろ?あの時、小田井さんが俺のボタンを解く間もなく、君がヒーローのように登場したんだから」「……」ことはの顔はなぜか火照ってきた。「ことは、君は本当に機転が利く女だな」隼人はことはをからかった。ことはは耳の付け根がほんのり熱くなるのを感じ、視線をどこに向ければいいのかわからなかった。「あのとき怖くなって逃げていましたら、今ごろ神谷社長にボロク
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