All Chapters of 幼なじみに裏切られた私、離婚したら大物に猛アタックされた!: Chapter 201 - Chapter 210

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第201話

隼人が撮影している間、ゆきも手を止めることなく、同じアングルでことはの顔の半分が入るように撮っていた。間もなく、隼人からセルフィーが送られてきた。ゆきは写真に目を通し、舌打ちを二度した。「まったく、ことはは本当にいい男を捕まえたな」写真を見終わると、隼人から多額の金額が銀行へ振り込まれ、備考欄には「ゆき、ご苦労様」と記されていた。ゆきは太ももを叩き、口を押さえて爆笑した。【苦労なんてしてませんよ】ゆきは手際よく2枚の画像をフォトショップで加工し、完璧に仕上がったのを確認すると、ことはの携帯を使ってその写真を涼介に送信した。ことはには少し申し訳ないが、後悔はしていない。涼介のあのクソ野郎が狂人のように怒り狂う様子が、ありありと想像できた。その頃。涼介は写真を受け取った瞬間、即座に携帯を粉々に叩きつけた。あまりの物音に、寧々が涼介がいる書斎のドアをノックした。「お兄ちゃん、大丈夫?今書斎からすごい音がしたけど、何かあった?」「出て行け!」涼介は怒鳴った。外にいた寧々は驚き、唇を噛むと、不機嫌そうに自分の部屋へ引き返した。涼介はすぐに冷静さを取り戻し、引き出しから新しい携帯を取り出して、ことはに電話をかけた。着信音は1秒で切れ、再びかけても話し中と表じされていた。涼介の怒りは再び爆発し、この新しい携帯もさっきの携帯と同じ運命をたどることになった。-今日は出勤する必要がなかったため、ことはは久しぶりに朝寝坊した。目覚めて携帯を確認すると、ことはは驚きのあまり携帯を投げ出しそうになった。何度も自分の携帯か確かめた後、例の写真をじっと見つめ、最後にゆきに電話をかけた。「ことは、起きた?」「この写真は一体どういうこと?」洗面所に立つことはは、鏡に映った紫がかったあざだらけの顔を見つめ、表情が歪んでいた。「フォトショップよ。礼はいらないわ」「ゆき、あなた図々しくなったわね。隼人の顔を別の男の写真に合成したの?!」ことはは、この写真が隼人の目に触れたらどうなるか、想像もつかなかった。何より驚いたのは、ゆきがこんな必殺技を思いついたことだ。「あ、違うよ。これは神谷社長本人の自撮り写真だよ」「???」「感謝はいらないわ、ことは。これはもう伝家の宝刀だよ!」「ゆ!き!」ことはが怒
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第202話

駿は言った。「わかったわかった、じゃあゆっくり休んで。でもことはちゃんも誤解してたみたいだね、さっきは冗談で言っただけで、別に本当に来てほしかったわけじゃないんだ。涼ちゃんから電話があって、この機会を利用して君をうまく誘い出してほしいって頼まれたんだ」それを聞いて、ことはの表情が暗くなった。駿は続けた。「涼ちゃんは最近ますます本性を隠さなくなってきて、あの手この手で君を隼人の元から引き離そうとしてる」そう聞いて、ことはは全身鳥肌が立ち、適当に会話を切り上げると電話を切った。その後また、2時間ほど図面を描くのに集中していると、インターホンが鳴った。ドアスコープで花田だと確認すると、ことはは驚いた表情でドアを開け、「花田さん、どうして来たの?」と聞いた。花田は素敵なテイクアウト専用の容器を手に持ち、優しく言った。「旦那様から、篠原さんが今療養中なので、私が昼食を届けるようにとのことです」ことはは恐縮しながら花田を中に招き入れ、申し訳なさそうに言った。「こんなに気を遣う必要はないよ、花田さん。自分で作れるから」「篠原さんは料理ができるんですか?でも旦那様はできないっておっしゃってましたよ」「……」ことははさらに気まずくなり、「水餃子なら茹でれるわ」答えた。「冷凍餃子ですか?」「うん」「栄養が足りないですよ」花田はすでに豪華な昼食をテーブルに並べ終えていた。「この2日間で手作りの水餃子やワンタンを冷凍しておきますから、次回は篠原さんもご自身で茹でて食べられますよ。手作りの方が栄養がありますから」ことはは心が温まり、「ありがとう、花田さん」と感謝した。花田を長く待たせたくないので、ことはは急いで食事を済ませ、ほぼ食べ終わる頃に、見知らぬ番号から着信があった。ことはは警戒しながら電話に出ると、なんとDNA情報庫からの連絡だった。ことはの血液型と一致する人物が見つかり、その人物はことはの母親の可能性があるというのだ。その知らせにことはは雷に打たれたような衝撃を受け、他のことには構っていられず、慌てて服を着替えると、マスクと帽子を身に着けて家を飛び出した。車が雲の塚の方にあったため、ことははタクシーで直接向かった。到着すると同時に、隼人から電話がかかってきた。「神谷社長」「君のおじさんの俊光さんは、
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第203話

涼介は怒りを抑え、言葉を途中で止めた。しかし、首筋に浮き出た青筋が、涼介がどれだけ自分の感情を抑え込んでいるかを物語っていた。ことはは上体を少し前に傾け、拳を握りしめて言った。「神谷社長は何をするにしても、私には隠す事なく打ち明けてくれる。それに、神谷社長は私が嫌悪するような、私を傷つけるようなことは絶対にしない。でもあなたはする!」「君のためだ」涼介は一語一句はっきりと区切って、真剣に言った。「私のため?」ことはは嘲笑った。「DNA情報庫から私に電話があったのは、あなたの仕組んだ罠でしょ?」「君に会いたかった」涼介は否定しなかった。「こんなこと、隼人にはできないわ」ことはは軽蔑した視線を戻し、立ち上がってお店を出た。涼介は目を瞬きさせると、ことはの後を追った。「わざと君をアシオンホールディングスに採用し、わざとマンションまで手配した。神谷社長の意図は明らかだ。それでも神谷社長が良いと思うのか?何年も前から君を狙っていた。知っていたのか!」「知ってるわ」ことはは涼介の手を振り払った。「神谷社長が私に好意を持ってるのはわかってる。でもだからって、新婚の夫をわざと罠にかけて浮気させて、私に恥をかかせて、それで最後は私から慰めを求めさせようなんて、そんなこと神谷社長がするはずがないでもあなたはそう考えたんでしょ?違うの?」心の醜い部分を指摘され、涼介は凍りついたようにその場に立ち尽くし、喉が何かにひっついたかのように詰まって声が出なかった。「だから神谷社長を非難する資格なんてあなたにはない。少なくとも神谷社長はあなたや翔真より堂々としているわ」「ことは、もう一度同じ過ちを犯すつもりか?今は確かに神谷社長は君に良くして、君も魅了されているかもしれない。でも神谷社長が君と結婚すると思うか?神谷社長は望んでも、神谷家が君を受け入れることは絶対にない。その時になって、神谷家の人たちに見下されて鼻先で罵られて、それでも平気でいられるの?」「ご心配なく」隼人の冷徹な声が響いた。ことはが振り向くと、黒い影が近づき、ことはのことを胸元へと引き寄せた。涼介は陰鬱な目で隼人を睨んだ。隼人の瞳の奥にある殺意がさらに濃くなる。「男のくせに、いつもちゃっちい煽り仕事ばかりしやがって。東凌ホールディングスからクビになって、ヒマになったから航
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第204話

ことはの顔の話になると、隼人は涼介の言葉を完全に忘れ、運転手に錦ノ台レジデンスへ戻るよう指示した。マスクを長時間つけていたうえに、たくさん話したせいで、ことはは顔が締めつけられるように感じて、特に不快だった。ひんやりする薬を塗ると、ようやく痛みも緩和された。ただ、隼人はことはの家に居座って帰ろうとしなかった。先ほどの件についても、誰も触れようとしなかった。ことはは机に向かって設計図を描き、隼人はソファでのんびりしながら、本棚から適当に取った本を手にしていたが、本当に読んでいるかどうかはわからなかった。在宅勤務なのに、上司に監視されている。頭の上にずっしりと山が乗っているようで、息が詰まりそうだわ。しかも、今はまだ昼過ぎで、神谷社長も一日中ここにいるわけにもいかない。ことはは遠回しに尋ねた。「神谷社長、会社にお戻りにならないんですか?」隼人は眉を吊り上げてことはを一瞥し、「俺の呼吸音が君の仕事の邪魔にでもなってるのか?」と聞いた。「そういうわけではありません」とことはは首を振って否定した。「なら俺を追い払うとはどういう意味だ?」「……」ことはは返す言葉がなく、降参して図面を描き続けるしかなかった。静かな空気は30分しか続かなかった。隼人の電話が鳴り出した。ことはは、今まで携帯の着信音がこんなに美しく心地よいものだと思ったことがなかった。隼人はことはの心を見透かしたようで、そのまま電話に出て浩司の話を聞き、「俺のパソコンと書類を錦ノ台レジデンスに持ってこい」と指示した。「????」ことはは呆然としていた。「そうだ、今日俺は一日ここにいる。午後2時半の会議はビデオ会議に変更だと伝えろ」電話を切ると、隼人は左腕をソファの背もたれに乗せて下顎を支え、ことはをからかうように見て、「がっかりしたか?」と聞いた。隼人がわざとやっているとわかっているから、ことははまるで空気の抜けたボールみたいにしょんぼりしていた。「神谷社長、そんなに真剣に私の在宅勤務を監視しなくてもいいですよ。サボったりしませんので、図面はきちんと期限通りに仕上げます」隼人は、ことはがわかっているくせに知らんぷりしているのを見抜き、歯を食いしばって絞り出すように言った。「そうだ、俺が直接監視しなきゃだめなんだ。君がまた騙されて勝手に出か
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第205話

隼人は膝の上にノートパソコンを乗せ、図面を見るのに集中していた。「君は自分のことをやってくれ」「ではお手洗いに行ってきます」ことははさっと書斎から出ていった。ことはは確かにお手洗いに行き、ついでにゆきが買ってきたお菓子の山からビスケットを開けて食べた。マナーモードにしていた携帯の画面が光った。登録されていない番号からの着信。ことはは警戒しながら電話に出たが、先に口は開かなかった。相手が話し始めた。「篠原ことはさんですか?私は米本権次(よねもと ごんじ)と申します。米本照義の父親です」米本家の者だと聞いて、ことはすぐに書斎に駆け込み、隼人に向かって唇の動きだけで伝えた。「米本家からです」隼人は眉をひそめ、立ち上がってことはの携帯を取り、自分の耳に当てた。電話の向こうで権次はまだ穏やかに話をしていた。「篠原さん、照義があなたにあんなことをしてしまって、父親として心から申し訳なく思っています。できる限り償わせていただきたいので、どうかお許しいただけませんか。もちろん、どんな条件でも、私にできることであれば、必ず篠原さんのご希望にお応えしますので」隼人は冷たく笑った。「それなら、照義の右腕を切り落として、俺の前に持って来い」ことはは隼人はただ権次の話をそばで聞いているだけだと思っていたが、まさか直接口を出すとは思ってもいなかった!電話の向こうにいる権次も、急に聞こえて来た隼人の声に心臓が止まりそうになった。「神、神、神谷社長……」「そんなにどもってしまって、それでも米本家の実権を握ろうとしているなんて、本当に笑えるわ」隼人の皮肉に、権次は気を失いそうになった。「神谷社長、そこまで米本家を追い詰める必要はありますか?私たち両家は姻戚関係にあるんですよ」権次は隼人の感情に訴えかけてきた。「照義が俺を攻撃しようとした時は、姻戚関係があることなんて考えてもいなかっただろう」「照義は……まだ若くて分別がつかなかったのです」権次は苦し紛れの言い訳をした。「は?」隼人は笑い声を上げた。「加恋さんにまで手を出すくらいなら、もう子供じゃないだろう、米本会長」ことははそばで聞いていて、心臓が飛び出そうになった。電話の向こうからは、権次の声ではなく、慌てた中年女性の叫び声が聞こえた。「あっ!旦那様、旦那様!どうされました?誰
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第206話

隼人とことはがやり取りをしている間に、隼人はすでに餃子を茹で始めていた。「いくつ食べる?」ことははだいぶお腹が空いていた。「12個でお願いします」隼人はことはと一緒に水餃子を食べ終え、ゆきが帰ってくるまで待ってから自宅に帰った。隼人が午後ずっとここにいたと知り、ゆきは腕を組みながら舌打ちした。「1分で数億円稼げる社長が家であんたと一緒にいたなんで。ことは、今じゃあんたの時間も高くなったわね」ことはは苦笑いし、腕でゆきの首に回しながらソファへ引き寄せた。「写真の件、まだ清算してないわよ」「ごめんごめん、確かにあのやり方はちょっとひどかったけど、でもこれが一番効果的だったでしょ。涼介さんにあんたと神谷社長が付き合ってることを完全に認識させないと、涼介さんは卑劣な考えを本当に実行に移すかもしれないんだから」「それに、写真は神谷社長が自ら撮って送ってきたのであって、私が無理矢理撮らせたわけじゃないんだからね」そう言いながら、ゆきは唇を尖らせ、声もだんだん小さくなっていった。ことははゆきが自分を助けようとしてくれたことを理解し、腕を下ろしてソファに倒れ込み、力なく言った。「だから今日、涼介は私を騙して連れ出したのね」「あの狡猾な変態野郎め」ゆきはことはの肩にもたれかかりながら詰め寄った。「何か言われた?それともまた何かされた?」「神谷社長がすぐ来てくれたから、大丈夫だった」ゆきは笑顔を見せた。「何度も褒めちぎってるけど、もう一度言わせて。神谷社長、マジで最高」ことははゆきの顔を押しのけた。「あなたの方がもっとすごいわ」「口がうまいね!今夜の夜食は私がおごるよ!」-頬に残っていた掌の痕が目立っていたため、ことははインフルエンザが悪化したと言ってさらに数日休暇を取った。その後数日間、昼食は花田が時間通りにことはの元へ届けてくれた。そして午後1時を過ぎると、隼人がことはの元へ訪ねてきた。あの日と同じように、ことはは図面を描き、隼人はソファで仕事をしていた。二人は夕食を共にし、ゆきが帰宅すると、隼人は帰っていった。毎日同じルーティンで、ことはもすっかり慣れてしまいそうだった。そこで翌日、ことはは濃いメイクをして出勤した。同僚たちの心配を前に、ことはは気まずさと申し訳なさでいっぱいだった。昼休みを待ちわびていた
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第207話

ことははまだ入り口で揉めている翔真と寧々に気づいておらず、ゆきから送られてきたゴシップネタに没頭していた。最新情報によると、数日間潜伏していた照義が警察に逮捕された。ことはは米本家の現状をよく知っておらず、ゆきが知っているのも断片的な情報だけだった。だがことはは確信していた。照義が警察に連行されたのは隼人の仕業に違いないと。ことはが返信をし終えた途端、店員が近づき、美しいグラスをテーブルに置いた。「お客様、こちらのローズウォーターは7番テーブルのお客様からです」ことはは一瞬戸惑い、店員の指す方向を見た。翔真と寧々というしつこい厄介者の二人がことはの視界に飛び込んできた。翔真は冷静にことはを見つめ、寧々は首を傾げ、挑発するように得意げに手を振って見せた。ことはは心底呆れ返っていた。寧々に翔真をしつこく追わせるつもりだったが、こんなベタベタぶりを見せつけられるとは。まったく、食べる気が失せるわ。ことはは冷たく視線を戻し、店員に言った。「私は学校の先生に、知らない人からものはもらってはいけないと教わったので、受け取れません」「……かしこまりました」と店員はちょっと困ったように応じた。お客様は神様。店員は指示通りにローズウォーターを7番テーブルに運んだ。ことはは再び下を向き、隼人にメッセージを打った。【神谷社長、あとどのくらいかかりますでしょうか?】【少し渋滞しているから、あと7分ぐらい】7という数字を見て、ことははなぜかこの数字にまで嫌悪感を抱いてしまった。【6分でも8分でもいいはずです。なぜよりによって7分なんですか?】【???】隼人は呆然としながら返事した。メッセージを送ってすぐ、ことはは自分が感情的になったことに気づいて慌てていた。ことはは急いで送り直した。【神谷社長、クライアントも7分後に到着されますか?】【うん、一緒に行く】【承知しました】ことはは返信し終わり、再び携帯を置くと、店員が戻ってきた。「お客様、7番テーブルのお客様が、『家族同士だから見知らぬ他人ではない』とおっしゃっています。なので、このローズティーウォーターは……」ことははこの二人がわざと自分に嫌がらせをしていると感じた。ことはは顔を上げて微笑んだ。「では、せっかくいただけるなら、私がどう処分しようと、皆さ
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第208話

マンゴーデザートが再びことはの前に運ばれてきた時、ことはの忍耐は限界に達し、店員への礼儀や笑顔さえも消えていた。「これ以上私を煩わせたら警察を呼ぶと伝えて」板挟みになった店員は困り果てていたが、どちらも怒らせるわけにはいかず、そのままの言葉を伝えるしかなかった。しばらくして、寧々がマンゴーデザートを持ってきて、乱暴にことはのテーブルに置いた。「ことは、あんたって本当に恩知らずね。翔真が心配して飲み物や食べ物を届けさせてくれてるのに、そんなひどい言葉で脅すなんて」「寧々、何してるんだ!」翔真が駆け寄り、寧々の腕を掴んだ。「戻れ!」「戻らないわ。こっちが悪いわけじゃないんだから!」寧々が食い下がった。「ここで騒ぐな」翔真は険しい表情で言った。「翔真のためにやってるのに」寧々は悔しそうに言った。ことはは椅子にもたれ、腕を組んだまましばらく眺めていたが、いらだたしげに顔を背け、店員に聞いた。「この人たちが私の食事の邪魔をしてるけど、何も対応しないの?」「お客様、ご自身のお席にお戻りください。他のお客様にご迷惑がかかるようでしたら、退席をお願いすることになります」店員は丁寧に諭した。「私たちだって客なのに、どうしてあいつの言うことだけ聞くのよ。これは差別よ!訴えてやるからね!」寧々が脅した。「このお店のマネージャーを呼んできなさい!」ことはは知っていた。寧々は一旦感情的になると、手が付けられなくなることを。そして今や翔真ですら寧々を抑えきれなくなっていた。お店のマネージャーが騒ぎを聞きつけてやってきた。「どうなさいました?」「どうもこうもないわ!店員にどういう教育をしてるのよ?客である私たちを追い出そうとするなんて」一連の言葉で、事実を完全に歪められた。寧々は正義感たっぷりに叫びながら、店員を指差して言った。店員は無念そうな顔をし、無実を訴えているようだった。「店員とは関係ないわ。あの人たちが先に私に嫌がらせをしてきて、今はこのように直接私のところに来ていじめてくるの。店員はただ席に戻るよう頼んだだけよ」ことはが口を開いた。「ここで言い争う必要はないわ。監視カメラを確認した方が早い」店員は感謝の涙を流した。マネージャーはこれを聞き、寧々の正気でない様子を見て、事情を理解した。翔真は顔を潰された思いで、むし
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第209話

寧々は電話の向こうで歯を噛み締めていた。ことは口元をわずかにほころばせた。「ガッツがあるじゃない、じゃあネットで会おう」「ごめんなさい!」寧々は焦って思わず叫んだ。「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!これで十分でしょ!」ことはは、「一字一句、はっきりと、ゆっくり言ってほしいの」と返事した。電話越しに、寧々が狂ったように自分を殺しに来そうな気配が伝わってきた。「ご、め!ん、な!さ、い!」「次から私の前で発狂しないで、それに私を見かけたら避けることね」そう言うと、ことはは電話を切った。一方、寧々は外の道路まで追いかけたが、翔真はすでに車で走り去ってしまい、寧々は排気ガスさえも追いかけられなかった。寧々は悔し泣きしながら、すぐに篠原夫人に電話をかけた。「ママ、あのクソ女のことはにいじめられたの」-電話を終えた後、ことは身も心もスッキリした。しかし後から、さっきのマネージャーの言葉を思い返した。いつから自分はここのブラックダイヤモンド会員になったんだろう?たぶん神谷社長の会員権だろう。そう考えていると、隼人が到着した。さらに、隼人と同行している慎之助、そして……うん?あの日偶然助けた女性じゃないかしら?よく見ると、その女性は慎之助と腕を組んでおり、とても親密そうだった。深く考えずとも、ことはは瞬時にこの女性の正体が分かった。なんというご縁。ことははさっと立ち上がり、美しい顔には抑えきれない緊張感が浮かんだ。「神谷会長、神谷社長、神谷会長夫人……」「私は神谷加恋。加恋と呼んで」加恋はことはの元に歩み寄り、ことはの手を握って親しげに言った。「篠原さん、あの日は私を助けてくれて、医療費まで立て替えてくれたんだよね。きちんとお礼も言えないうちに、あなたは帰ってしまった。病院の監視カメラで確認するまで、あなたをどこで探せばいいのか本当に分からなかったわ」「とんでもないです。医療費も大したことなかったので。お礼には及びません」ことはは照れくさそうに言った。「お礼は必要よ。しかも盛大にね」加恋は訂正した。「盛大にお礼すべきだ」慎之助も言った。「篠原さん、私たち夫婦はあなたに借りができた」「お礼が続くようなら夜食にしようか」と隼人は言いながら、椅子を引いて座った。「相変わらずまともじ
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第210話

加恋は笑いながら反論した。「そんなことないわ、慎之助はちゃんと笑うわよ。氷みたいな顔なんて全然してないわ」隼人は、「それは加恋さんに対してだけだよ」と言った。慎之助は傲慢に鼻を鳴らして言った。「ほっとけよ」慎之助と隼人の右側中央に座ることはは、水の入ったコップを両手で包み込み、自分が透明人間になったかのように存在感を消そうとしていた。その時、慎之助は顔をことはの方に向け、穏やかに言った。「篠原さん、今後隼人があなたに過酷な労働を強いることがあれば、いつでも俺に言ってね。俺たちアシオンホールディングスでは従業員を搾取することは許さないから」ことはは、そんなことはないと言おうとしたが、隼人が不満そうに聞いた。「俺がいつ過酷な労働を強いたって言うんだ?」慎之助は水を飲み、眉を吊り上げた。「あの日、お前が篠原さんを会社に残して残業させてたじゃないか。俺が来なかったら、篠原さんはいつまで残業してたんだ?」ことはは慎之助がどの日のことを言っているかのを分かっており、申し訳なさそうに口を開いた。「誤解です、神谷会長。あの日残業したのは、確かに私が急ぎである図面の設計を終えさせる必要があったからです」加恋が言った。「今は仕事の時間じゃないわ、篠原さん。神谷会長なんて呼ばなくていいのよ」「その言葉は加恋さんだから言えるんだよ。もしことはが慎之助を兄貴と呼んだら、慎之助はことはが便乗してコネを作ろうとしていると思うだろうね」と、隼人はそのチャンスを逃さず、皮肉を込めて言い返した。ことはは心の中ですでに叫び狂っていた。ことはの背中に冷や汗がにじむ。ことはは、隼人の口を塞ぎたい気持ちでいっぱいだった……自然な微笑みを保ちながら、ことはは言った。「やはり神谷会長と呼ぶのが適切だと思います。仕事の時間でなくても、上司と部下の関係ですから。それに、加恋さん。あの日のことは本当に大したことではありません。女性同士は助け合うべきですから。私ではなく他の人が加恋さんを見かけたとしても、きっと助けてくれたと思います。だからわざわざお礼を言われるようなことではありません」「そうとは限らない」慎之助は言った。「もしあの二人の男を見ていたら、おそらく誰も助けに行こうとはしなかっただろう。篠原さんの勇気は称賛に値する。否定することはない」その時、加恋は
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