「え……? 逃げる……? 逃げるって……? 貴女と一緒に?」「ええ、そうです。一緒に逃げるのです。私ならクラウディア様を彼等から連れ去ることが出来ます。私と一緒に参りましょう」一体、リーシャは何を言っているのだろう?それに今私の目の前にいるのは……まるで知らない人物のように見えた。「そ、そんな……逃げられるはずはないでしょう? 私と『エデル』の国王との結婚は『レノスト』王国が属国となる証の為の結婚なのよ? それに私がもし逃げれば城に残った人達はどうなると思う? 恐らく見せしめの為に全員殺されてしまうわ」脳裏に幼い弟ヨリックの姿が浮かんだ。今の話を聞けば、流石のリーシャも逃げようなどとはもう考えないだろう。けれど、次の瞬間私はリーシャの言葉に耳を疑うことになる。「別にいいではありませんか」それは酷くそっけない口調だった。「え……?」「あの城の方たちは自分の身の保全の為にクラウディア様を『エデル』に嫁がせることにしたのですよ?要は自分たちのことしか考えない身勝手な人達なのです。そんな人達の為に、わざわざ人質となって御自分を犠牲にする必要などないじゃありませんか」「そんな……!」「あの城には……まだ10歳のヨリックがいるのよ? あの子を見捨てるなんて私には出来ないわ! この世でたった1人きりの血を分けた家族なのに……!」「そうですね。ヨリック様はまだ小さなお子様です。だとしたら……他の御家族の後を追わせてあげるのも良いとは思いませんか?」にっこり微笑むリーシャが信じられなかった。「リーシャ……貴女、本当に……本物のリーシャなの……?」「ああ、そう言えばそうでしたね。クラウディア様は私を今までリーシャだと思っていたのですよね?」「え……? あ、貴女はリーシャではないの……?」するとリーシャは片側の手でスカートの裾をつまみ、空いている手を胸の前に持ってくると頭を下げてきた。「申し遅れました、私の名はシーラと申します。今より一月程前からクラウディア様の専属メイドとしてリーシャに成り代わり、お側に仕えさせていただいておりました」「え……? ど、どういうことなの……?」するとリーシャ……基、シーラは説明を始めた。「私は錬金術師を集めているある組織に属しています。以前から、『レノスト王国』の城内に錬金術師がいるかもしれないという噂が流れ
Last Updated : 2025-10-08 Read more