馬車から1人で降りて外に出て見ると、既に荷馬車から降りたトマスとザカリーの姿も兵士達の中に紛れていた。 ユダはまっすぐ開門された大扉の前に立つ2人の騎士に挨拶をした。「ただいま『レノスト』国の王女様をお連れいたしました」すると1人の騎士がこちらを一瞬チラリとみると、すぐにユダに尋ねた。「おい、いい加減なことを言うな。どこに王女がいるのだ? 見たところあそこにいるのは薄汚れた身なりの2人の女しかいないじゃないか」「ああ、その通りだ。それともあそこで男に抱きかかえられている女が王女なのか? それにしても全員小汚い格好だな……。まさかお前は物乞い女でも連れて来たのか?」そして騎士は馬鹿にした表情でユダを見た。「クッ……」騎士達の言葉にスヴェンが悔しそうに唇を噛む。他の兵士やトマス、ザカリーも騎士たちの言葉に怒りを抑えているのが伝わってくる。「! いいえ! 決してそのようなことはありません。あちらにいらっしゃるお方こそが、『レノスト』王国の王女様でいらっしゃるクラウディア様です!」「嘘をつくな! 貴様は任務すらまっとうにこなせないのか!」「一生貴様のような男はただの兵士でいるんだな!」ユダ……。騎士達がユダを馬鹿にしている姿を見るのは耐え難かった。そこで私は自ら騎士達の元へ向かった。「お、おい? 姫さん?」スヴェンの狼狽えた声が聞こえたけれども私は構わず騎士達の前に立つと足を止めた。「何だ? 薄汚れた物乞い女め」「早く城の外へ出て行け」1人の騎士は煩げに手で私を払うフリをする。彼らの態度は回帰前と似て異なる。あの時は一番美しいドレスを着てはいたものの、『エデル』へ到着するまでに私の悪評が広がり、騎士から心無い言葉を投げつけられたのだった。あの時は彼らの酷い態度に激怒したけれども、今の私はそのような態度を一切取るつもりは無い。「いいえ、そこの兵士の言う通りです。このような身なりをしてはおりますが、私は間違いなく『レノスト』国の第一王女であるクラウディア・シューマッハです。疑うのであれば、これを見せましょう」メッセンジャーバッグから封筒を取り出すと、右側に立つ騎士に手渡した。その封筒には王家の封蝋が押されたアルベルトのサイン入りの『結婚同意書』が入っているのだ。「ふん、こんなもので……」騎士は封筒から手紙を抜き取り、目
Last Updated : 2025-10-28 Read more