「本当は……こんな薬を使いたくは無かったのだけど。この薬は【服従薬】と言って、必ず自分の言うことに従わせる薬なのよ」シーラから離れた場所に人を集めると、私は小声で説明した。「そうですか、それは中々恐ろしい薬ですね」セトが頷く。「ええ、これを食事に混ぜてシーラに食べさせるのよ」「だけど姫さん。シーラが素直に出された料理を食べるとは思えないけどな」「はい、クラウディア様。俺もです」「そうね。スヴェンとユダの言う通りだと思うわ」私の言葉にトマスが尋ねてきた。「だとしたら、どうするのですか?」「大丈夫よ。この薬の凄いところは無臭なのに効果があるというところよ。これを料理に混ぜてシーラに差し出すわ」そして私はスヴェン、ユダ、トマス、ザカリーの顔を順番に見渡した。「この薬は強力だから、私が1人でシーラに持って行くわ。貴方達は離れた場所で見ていて?」「だけど、クラウディア様お一人では危険なのでは?」「ああ、ユダの言う通りだ。俺は姫さんになら服従されてもいい。ついて行かせてくれ」「何だと? だったら俺もクラウディア様に服従する。お供させて下さい」スヴェンに引き続き、ユダまでとんでもないことを言ってきた。「な、何を言っているの? 私は2人を無理やり服従させるつもりはないのよ。冗談はそのくらいにして」2人はその言葉が不服だったのか、何やらブツブツ言っているが私は聞こえないふりをすると、部屋の中央に置かれたテーブルへ向かった。テーブルの上に乗せられたお椀に【服従薬】を垂らした。そして大鍋の蓋を開けるとお玉で熱々のシチューをよそい椀とサジを持ってシーラの元へ向かった。「シーラ」目隠しをされているシーラの元へ向かうと声をかけた。「その声は……クラウディア様ですね?」シーラの声はとても冷たかった。「貴女に食事を用意したの。今目隠しを外して上げるわ」近くにあった棚の上に料理を乗せ、シーラの側にしゃがみこんで目隠しを外した。「……」少しの間シーラは部屋の明かりで眩しそうに目を瞬いていたが、視線を私に合わせた。「クラウディア様。食事を用意したとのことですが、私が大人しくその料理を口にすると思いますか? 中に何が入っているかも分からないのに」それは予想通りの返事だった。「私を疑っているの? だったら私が試してみましょうか?」棚の上においた
Last Updated : 2025-10-18 Read more