All Chapters of 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Chapter 141 - Chapter 144

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第2章 14 夕食会に現れた人物

 その後私は部屋に鍵を掛けて、誰も自分の部屋に入れないようにした。そして部屋のカーテンを閉め切ると、テーブルの上に錬金術の道具を並べ始めた。この先、何が起こるか分からない。自分の身を……。そしてリーシャの身を守るためにも錬金術で薬を作り出しておかなければ。「やっぱりまず最初に作るのは【聖水】ね。【エリクサー】は別の日に作りましょう」どうせ、今はすることは何も無いのだ。アルベルトは私を相手にするはずもない。正式な夫婦になれば私用の予算が割り振られるはず。それが決定するまでは、恐らく私はこの城で放置状態にされるだろう。何しろ回帰前がそうだったのだから……。「とりあえず、今は2瓶だけ作りましょう」私は羊皮紙に術式を描き始めた――****「ふぅ……」気づけば目の前には【聖水】の元になる液体が出来上がっていた。今はどれくらいの時間が経過したのだろう。錬金術を駆使している間は途中からトランス状態に入ってしまう。その為に時間の経過が分からなくなってしまうのだ。出来上がった【聖水】を保存用の瓶に移すと、ドレスルームの奥に隠すように置かれたダイヤル式金庫に【聖水】を入れて鍵を掛けた。「ふふふ……。回帰前はこの中にはアクセサリーばかりだったのに、今入れるのは【聖水】なのだから、おかしなものね」今の私はアクセサリーの類など、一切興味は無い。そんなものを身に着けたところで、今の私には意味が無かった。そのような贅沢品を買い集めるくらいなら、領民達を助ける為の予算に回す方が余程有意義だ。「そうだわ。これからも少しずつ【聖水】や【エリクサー】を作って、トマスに託そうかしら……」その時、ふと私の為に『エデル』までついてきてくれたスヴェンやザカリーのことを思い出した。「皆は今頃、どうしているのかしら……」出来れば酷い扱いをうけていなければいいのだが、今の私にはもう彼らと会える手段は無い。「せめて元気で過ごしてほしいわ……」金庫を閉じると、次はカーテンを開けて外を見ると既に空はオレンジ色に染まっていた。「まぁ……もう夕方になっていたのね」部屋の壁掛け時計を見ると、時刻は16時半を過ぎていた。「それにしても疲れたわ……」ホウとため息をつくと、カウチソファに座った。いくらこの身体が20歳だとしても、疲れるのは無理もない。何しろ長旅で到着した
last updateLast Updated : 2025-11-07
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第2章 15 『聖なる巫女』カチュア

 白いローブを着た『聖なる巫女』、カチュア。背中まで届く長い黒髪のカチュアを見ていると、日本のことが少しだけ思い出された。けれど……こんなに早くカチュアが現れるとは思いもしなかった。彼女が現れるのは後半年は先の筈だったのに。けれど今の私にとって、彼女の登場は都合が良かった。いずれカチュアとアルベルトは結ばれる運命だからだ。そうなれば私は不用な存在になる。この国にとって無害な人間であれば、処刑されることは無いだろう。そして、リシュリー宰相の機嫌を損ねない限りは……。私はアルベルトにさり気なく離婚を切り出し、承諾を得て国に戻る。そして弟のヨリックを支えて生きていければそれで良い。回帰前にあれ程欲していたアルベルトの愛は、もはや私には不用なのだから。しかし、今回は何故か様子が違う。「リシュリー。何故余計なことをする? 俺はクラウディアだけを夕食に招いたのだぞ? 何故お前がここにいるのだ?」アルベルトはカチュアの存在を気にする素振りも見せず、宰相に文句を言った。「アルベルト様、落ち着いて下さい。まずは私の後ろに控えている女性を御紹介させていただけますか?」宰相はアルベルトの苛立ちを気にすることなく、カチュアを振り返った。「さぁ、陛下にご挨拶なさって下さい」リシュリーは丁寧な態度でカチュアに声をかける。「はい、リシュリー様」カチュアは頷くと、前に進み出た。「はじめまして、アルベルト様。私はカチュアと申します。本日、気付けばこちらの国の神殿の前に立っておりました。そして途方にくれているところをリシュリー様に保護していただいたのです」そして笑みを浮かべる。「……そうか、カチュアと申すのか。分かった、挨拶が済んだのなら出て行って貰おうか? リシュリー。そなたもだ」アルベルトは無表情でカチュアとリシュリーを交互に見た。するとリシュリー宰相がカチュアの隣に立つとアルベルトに語った。「申し訳ございませんでした。これは言葉足らずでしたな。陛下は不在だった為にご存知無いかも知れませんが、本日この国に虹色に光り輝く雲が現れたのでございます。我が国には言い伝えがありますよね?空に虹の雲が現れる時、この国に富と繁栄をもたらしてくれる『聖なる巫女』が現れると」「それがどうした?」アルベルトは返事をしながら、着席すると腕組みした。「そこで、私は慌
last updateLast Updated : 2025-11-08
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第2章 16 気まずい空気

「よせ、クラウディアは関係ないだろう? 何故彼女に尋ねる?」アルベルトが眉間にしわを寄せた。「関係ないことはありません。クラウディア様はいずれ王妃になられるのです。この国の重要人物である方に間違いはありません。ここはクラウディア様の考えも尊重されるべきではありませんか?」「……分かった。ならクラウディアにも尋ねるが良い」ため息をつくとアルベルトは私を見た。「どうですか? クラウディア様。私共も、食事会に参加させていただけますよね?」リシュリーは威圧するような眼差しを向けてくる。そしてカチュアも私から視線をそらない。勿論私の答えは既に決まっている。「はい、私は別に構いません」「何!?」驚きの声を上げたのはアルベルトだった。「クラウディア……本当にそれで良いのか?」私が承諾したことが余程意外に感じたのだろうか? アルベルトは目を見開いて私を見ている。「はい。この国の宰相と『聖なる巫女』である方の同席を拒絶する理由は私にはありませんので」むしろ、アルベルトにはカチュアと是非とも親交を深めて欲しいと願っている。2人が恋仲になれば、それだけ私も早く離婚を切り出すことが出来るのだから。「おお、流石は次期王妃になられるお方だ。話が早くて助かります。では早速座らていただきましょうか?」「はい、失礼いたします」そしてカチュアはアルベルトの右隣りで宰相は左隣。私はアルベルトから少し距離の離れた向かい側の席に座ることになった。この席次もリシュリー宰相が勝手に決めてしまった。「……」アルベルトは席の並びも気に入らなかったのか、忌々しげな様子を見せている。けれど彼らとは出来るだけ距離を開けたい私にとってはありがたかった。出来るだけ、存在を消すように息を潜めていよう……。そして私達が着席すると給仕によって料理が運び込まれ、何とも微妙な雰囲気の中で夕食会が始まった――****「こちらの国のお料理は本当に美味しいですね」カチュアは料理を切り分けながら、隣に座るアルベルトに親し気に話しかけている。「……そうか」一方のアルベルトはカチュアを見ることもなく、料理を口に運んでいる。そっけない態度のアルベルトの態度に困った様子のカチュアはまるで助けを求めるかの如く、リシュリー宰相を見た。すると、すぐに宰相は話し始めた。「カチュア殿、この国
last updateLast Updated : 2025-11-09
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第2章 17 悪意と言いがかり

「いいえ。私の父が一方的に宣戦布告し、敗戦したのは事実ですから。宰相の仰ることは尤もです。どうぞお気になさらないで下さい」「何? クラウディア。お前は本気でそのようなことを言っているのか?」アルベルトが驚いた様子で私に尋ねてきた。「はい、本気です。むしろ父の犯した罪を謝罪させて下さい。陛下、大変申し訳ございませんでした」私はアルベルトに頭を下げた。「クラウディア……」するとリシュリーが私に話しかけてきた。「ほう……これは驚きです。やはりクラディア様は噂とは大分かけ離れたお方のうようですな。今回の旅に同行した兵士たちは皆、口を揃えてクラウディア様のことを褒めておりましたぞ? 素晴らしい人格者だと」「え?」その言葉に思わず反応し、リシュリーを見た。まさか……ユダ達のことを話しているのだろうか?「おや? どうされましたか? クラウディア様」リシュリーは何処か面白げに口角を上げる。「いえ、皆どうしているのかと思っただけですので」「ほ〜う。クラウディア様はたかが一介の兵士たちのことを気にかけておられるのですか?」「それは当然のことです。彼らとは何日もかけて長旅を共にした仲間なのですから」「仲間……ですか? これはまた随分面白いことを仰いますな。彼らは単にクラウディア様をこの国に連れてくるという任務を果たしただけですが?」すると何故かカチュアまで口を挟んできた。「まぁ、クラウディア様はこの国の王妃となるお方なのに……随分庶民的な考えをお持ちなのですね」その時――「いい加減にしろ! これ以上クラウディアに向かって不快な発言を繰り返すなら出て行け! 俺は元々クラウディアと2人で食事をしようと思っていたのだ。それなのに何だ!? お前たちの頼みを聞き入れたクラウディアに対して……何という口を聞く!」ついに我慢の限界に達したのか、再びアルベルトは声を荒らげた。「申し訳ございません、陛下! どうぞ……お許し下さい!」するとカチュアが震えながらアルベルトに頭を下げた。「陛下、確かに少々言葉が過ぎてしまいましたが……事実、クラウディア様が個人的に親しくしておりました複数の人物達がいたのは事実なのですぞ? 実際に私が選抜した兵士たちから報告を受けておりますから」そしてリシュリーは私を見た。「!」その言葉に私はユダの言葉を思い出した。この中
last updateLast Updated : 2025-11-10
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