All Chapters of 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Chapter 141 - Chapter 150

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第2章 14 夕食会に現れた人物

 その後私は部屋に鍵を掛けて、誰も自分の部屋に入れないようにした。そして部屋のカーテンを閉め切ると、テーブルの上に錬金術の道具を並べ始めた。この先、何が起こるか分からない。自分の身を……。そしてリーシャの身を守るためにも錬金術で薬を作り出しておかなければ。「やっぱりまず最初に作るのは【聖水】ね。【エリクサー】は別の日に作りましょう」どうせ、今はすることは何も無いのだ。アルベルトは私を相手にするはずもない。正式な夫婦になれば私用の予算が割り振られるはず。それが決定するまでは、恐らく私はこの城で放置状態にされるだろう。何しろ回帰前がそうだったのだから……。「とりあえず、今は2瓶だけ作りましょう」私は羊皮紙に術式を描き始めた――****「ふぅ……」気づけば目の前には【聖水】の元になる液体が出来上がっていた。今はどれくらいの時間が経過したのだろう。錬金術を駆使している間は途中からトランス状態に入ってしまう。その為に時間の経過が分からなくなってしまうのだ。出来上がった【聖水】を保存用の瓶に移すと、ドレスルームの奥に隠すように置かれたダイヤル式金庫に【聖水】を入れて鍵を掛けた。「ふふふ……。回帰前はこの中にはアクセサリーばかりだったのに、今入れるのは【聖水】なのだから、おかしなものね」今の私はアクセサリーの類など、一切興味は無い。そんなものを身に着けたところで、今の私には意味が無かった。そのような贅沢品を買い集めるくらいなら、領民達を助ける為の予算に回す方が余程有意義だ。「そうだわ。これからも少しずつ【聖水】や【エリクサー】を作って、トマスに託そうかしら……」その時、ふと私の為に『エデル』までついてきてくれたスヴェンやザカリーのことを思い出した。「皆は今頃、どうしているのかしら……」出来れば酷い扱いをうけていなければいいのだが、今の私にはもう彼らと会える手段は無い。「せめて元気で過ごしてほしいわ……」金庫を閉じると、次はカーテンを開けて外を見ると既に空はオレンジ色に染まっていた。「まぁ……もう夕方になっていたのね」部屋の壁掛け時計を見ると、時刻は16時半を過ぎていた。「それにしても疲れたわ……」ホウとため息をつくと、カウチソファに座った。いくらこの身体が20歳だとしても、疲れるのは無理もない。何しろ長旅で到着した
last updateLast Updated : 2025-11-07
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第2章 15 『聖なる巫女』カチュア

 白いローブを着た『聖なる巫女』、カチュア。背中まで届く長い黒髪のカチュアを見ていると、日本のことが少しだけ思い出された。けれど……こんなに早くカチュアが現れるとは思いもしなかった。彼女が現れるのは後半年は先の筈だったのに。けれど今の私にとって、彼女の登場は都合が良かった。いずれカチュアとアルベルトは結ばれる運命だからだ。そうなれば私は不用な存在になる。この国にとって無害な人間であれば、処刑されることは無いだろう。そして、リシュリー宰相の機嫌を損ねない限りは……。私はアルベルトにさり気なく離婚を切り出し、承諾を得て国に戻る。そして弟のヨリックを支えて生きていければそれで良い。回帰前にあれ程欲していたアルベルトの愛は、もはや私には不用なのだから。しかし、今回は何故か様子が違う。「リシュリー。何故余計なことをする? 俺はクラウディアだけを夕食に招いたのだぞ? 何故お前がここにいるのだ?」アルベルトはカチュアの存在を気にする素振りも見せず、宰相に文句を言った。「アルベルト様、落ち着いて下さい。まずは私の後ろに控えている女性を御紹介させていただけますか?」宰相はアルベルトの苛立ちを気にすることなく、カチュアを振り返った。「さぁ、陛下にご挨拶なさって下さい」リシュリーは丁寧な態度でカチュアに声をかける。「はい、リシュリー様」カチュアは頷くと、前に進み出た。「はじめまして、アルベルト様。私はカチュアと申します。本日、気付けばこちらの国の神殿の前に立っておりました。そして途方にくれているところをリシュリー様に保護していただいたのです」そして笑みを浮かべる。「……そうか、カチュアと申すのか。分かった、挨拶が済んだのなら出て行って貰おうか? リシュリー。そなたもだ」アルベルトは無表情でカチュアとリシュリーを交互に見た。するとリシュリー宰相がカチュアの隣に立つとアルベルトに語った。「申し訳ございませんでした。これは言葉足らずでしたな。陛下は不在だった為にご存知無いかも知れませんが、本日この国に虹色に光り輝く雲が現れたのでございます。我が国には言い伝えがありますよね?空に虹の雲が現れる時、この国に富と繁栄をもたらしてくれる『聖なる巫女』が現れると」「それがどうした?」アルベルトは返事をしながら、着席すると腕組みした。「そこで、私は慌
last updateLast Updated : 2025-11-08
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第2章 16 気まずい空気

「よせ、クラウディアは関係ないだろう? 何故彼女に尋ねる?」アルベルトが眉間にしわを寄せた。「関係ないことはありません。クラウディア様はいずれ王妃になられるのです。この国の重要人物である方に間違いはありません。ここはクラウディア様の考えも尊重されるべきではありませんか?」「……分かった。ならクラウディアにも尋ねるが良い」ため息をつくとアルベルトは私を見た。「どうですか? クラウディア様。私共も、食事会に参加させていただけますよね?」リシュリーは威圧するような眼差しを向けてくる。そしてカチュアも私から視線をそらない。勿論私の答えは既に決まっている。「はい、私は別に構いません」「何!?」驚きの声を上げたのはアルベルトだった。「クラウディア……本当にそれで良いのか?」私が承諾したことが余程意外に感じたのだろうか? アルベルトは目を見開いて私を見ている。「はい。この国の宰相と『聖なる巫女』である方の同席を拒絶する理由は私にはありませんので」むしろ、アルベルトにはカチュアと是非とも親交を深めて欲しいと願っている。2人が恋仲になれば、それだけ私も早く離婚を切り出すことが出来るのだから。「おお、流石は次期王妃になられるお方だ。話が早くて助かります。では早速座らていただきましょうか?」「はい、失礼いたします」そしてカチュアはアルベルトの右隣りで宰相は左隣。私はアルベルトから少し距離の離れた向かい側の席に座ることになった。この席次もリシュリー宰相が勝手に決めてしまった。「……」アルベルトは席の並びも気に入らなかったのか、忌々しげな様子を見せている。けれど彼らとは出来るだけ距離を開けたい私にとってはありがたかった。出来るだけ、存在を消すように息を潜めていよう……。そして私達が着席すると給仕によって料理が運び込まれ、何とも微妙な雰囲気の中で夕食会が始まった――****「こちらの国のお料理は本当に美味しいですね」カチュアは料理を切り分けながら、隣に座るアルベルトに親し気に話しかけている。「……そうか」一方のアルベルトはカチュアを見ることもなく、料理を口に運んでいる。そっけない態度のアルベルトの態度に困った様子のカチュアはまるで助けを求めるかの如く、リシュリー宰相を見た。すると、すぐに宰相は話し始めた。「カチュア殿、この国
last updateLast Updated : 2025-11-09
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第2章 17 悪意と言いがかり

「いいえ。私の父が一方的に宣戦布告し、敗戦したのは事実ですから。宰相の仰ることは尤もです。どうぞお気になさらないで下さい」「何? クラウディア。お前は本気でそのようなことを言っているのか?」アルベルトが驚いた様子で私に尋ねてきた。「はい、本気です。むしろ父の犯した罪を謝罪させて下さい。陛下、大変申し訳ございませんでした」私はアルベルトに頭を下げた。「クラウディア……」するとリシュリーが私に話しかけてきた。「ほう……これは驚きです。やはりクラディア様は噂とは大分かけ離れたお方のうようですな。今回の旅に同行した兵士たちは皆、口を揃えてクラウディア様のことを褒めておりましたぞ? 素晴らしい人格者だと」「え?」その言葉に思わず反応し、リシュリーを見た。まさか……ユダ達のことを話しているのだろうか?「おや? どうされましたか? クラウディア様」リシュリーは何処か面白げに口角を上げる。「いえ、皆どうしているのかと思っただけですので」「ほ〜う。クラウディア様はたかが一介の兵士たちのことを気にかけておられるのですか?」「それは当然のことです。彼らとは何日もかけて長旅を共にした仲間なのですから」「仲間……ですか? これはまた随分面白いことを仰いますな。彼らは単にクラウディア様をこの国に連れてくるという任務を果たしただけですが?」すると何故かカチュアまで口を挟んできた。「まぁ、クラウディア様はこの国の王妃となるお方なのに……随分庶民的な考えをお持ちなのですね」その時――「いい加減にしろ! これ以上クラウディアに向かって不快な発言を繰り返すなら出て行け! 俺は元々クラウディアと2人で食事をしようと思っていたのだ。それなのに何だ!? お前たちの頼みを聞き入れたクラウディアに対して……何という口を聞く!」ついに我慢の限界に達したのか、再びアルベルトは声を荒らげた。「申し訳ございません、陛下! どうぞ……お許し下さい!」するとカチュアが震えながらアルベルトに頭を下げた。「陛下、確かに少々言葉が過ぎてしまいましたが……事実、クラウディア様が個人的に親しくしておりました複数の人物達がいたのは事実なのですぞ? 実際に私が選抜した兵士たちから報告を受けておりますから」そしてリシュリーは私を見た。「!」その言葉に私はユダの言葉を思い出した。この中
last updateLast Updated : 2025-11-10
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第2章 18 警戒と反省

「へ、陛下……。本気で仰っているのですか? 私は前国王の代からこの国の宰相を務めていたのですよ……? それを……」リシュリーが眉間にシワを寄せてアルベルトを見た。「だから何が言いたいのだ? 今の国王はこの私だ。お前を宰相の座から降ろすことだって可能なのだぞ?」「陛下!」怒りの為か、顔を真っ赤に染めたリシュリーが大きな声を上げた。「出ていかないと言うなら、無理やり出て行かせてもいいのだぞ?」アルベルトがパチンと指を鳴らすと、いきなり扉が開かれて屈強な体躯の2人の騎士が現れた。「な!?」「キャッ!」リシュリーとカチュアは突然現れた騎士たちの姿に驚愕の表情を浮かべた。「この2人を外へ連れ出せ」「「はい」」騎士たちは返事をすると、うろたえているリシュリーとカチュアに近付く。「陛下の命令です。お立ち下さい」「それとも無理やり連れ出しましょうか?」「お、おい! 貴様ら! 私が誰か知っているのか!?」「リシュリー様!」リシュリーとカチュアが抵抗する。「早く連れ出せ」アルベルトは感情のこもらない声で命じた。「「はっ!!」」騎士たちはそれぞれリシュリーとカチュアを担ぎ上げた。「よ、よせ! やめろ!」「離して!」しかし、騎士たちの力に適うはずも無くリシュリーとカチュアはダイニングルームから強引に出されていく。――バタン扉が閉められ、たちまち部屋の中は静かになった。「……」私は信じられない気持ちで2人が連れ出されていく様子を見つめていた。一体これはどういう状況なのだろう?回帰前、アルベルトは全面的にリシュリーを信頼していた。そして『聖なる巫女』のカチュアを側に置き、大切にする代わりに私を嫌い……徹底的に無視していた。それなのに……何故アルベルトは今、笑みを浮かべて私を見つめているのだろう?「やっと静かになったな」向かい側に座る私に優しい声で話しかけてくるアルベルト。「はい」心の動揺を隠しつつ、返事をする。「これで静かに食事が出来る。苦手な料理はあるか?」「いえ、ありません。お気遣いありがとうございます」「そうか、それは良かった」アルベルトは何が嬉しいのか、私に笑顔を向けている。一体何を考えているのだろう……?ここは彼の意図を確認するべきかも知れない。「陛下」「何だ?」「よろしかったのですか? 宰相
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第2章 19 同じ轍は踏まない

「その服……よく似合っているな。サイズもぴったりだ」アルベルトは穏やかな口調で話しかけて来たので、私は感謝の言葉を述べた。「はい。このように素敵な服を頂き、感謝申し上げます」「いや、礼には及ばない。お前はこの国の王妃になるのだからな。あの服で城を歩くのは流石にまずい。まともな服を持ってきてはいないのだろう? だからこちらで用意した。メイド達に命じて置いたから今頃は部屋に運ばれているはずだ」「え……?」あまりにも意外な言葉に私は驚いて顔を上げた。「どうした? そんな顔をするなんて」不思議そうな顔で私を見つめるアルベルト。「い、いえ。お気遣い、ありがとうございます。嬉しいです。まともな服を用意してこなかったものですから」「ああ、そうだな。メイド達が驚いていた。私物が殆んど無かったと言っていたようだ」「そうですね……」何しろ、荷馬車に乗せてきたのは全て領民達の為に用意した荷物ばかりだったのだから。それにドレスやアクセサリーも全て城に置いてきた。私にはもう不用なものだったし、売れば少しでも城の収入源になると思ったからだ。「ここまでの旅はどうだった? 大変だっただろう」優雅な手付きで料理を口に運びながらアルベルトが労いの言葉をかけてくる。「そうですね……道中大変なことが色々ありましたが…とても良い経験でした」回帰前は見捨ててしまった領民たちを救うことが出来たし、大切な仲間も出来た。「信頼できる仲間たちも出来たのだろう?」先程の宰相の言葉を言っているのだろうか? やはりアルベルトは私のことを疑っているのかも知れない。「陛下、宰相の言葉は……」「ああ、分かっている」言い終わらぬ内に、アルベルトが頷いた。「え……?」「敗戦国から嫁いできたということで、周囲ではお前をよく思わない人間たちが多くいるのは確かだ。けれど今後のお前の行動1つで周囲の見る目も変わり、信頼を得ていくことが出来るだろう。俺はそう、信じている。現にここまで旅を続けていた間に、お前は人々の信頼を勝ち取ってきたのだろう?」アルベルトの言葉に思わず目を見張った。「陛下、一体それは……どういう意味でしょう?」「それはお前自身が良く知っていることだろう?」アルベルトは私の質問に答えること無く立ち上がった。「クラウディア。食事もそろそろ済んだことだし……今夜はもう部屋
last updateLast Updated : 2025-11-12
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第2章 20 戸惑いと焦り

「ここがお前の部屋だから覚えておくようにな」アルベルトは白い扉の前で足を止めると振り返った。「はい、どうもありがとうございます」「朝食と昼食は別々になるが、夕食は毎晩一緒に食べることにしよう」そしてアルベルトは私に笑いかけた。え? 毎晩一緒に?その言葉は信じ難いものだった。回帰する前は一度も一緒に食事すらしたことは無かった。今回が初めての食事だったのに、それを毎晩一緒にだなんて……。「どうかしたか?」アルベルトが怪訝そうに首を傾げる。「いえ、何でもありません。承知いたしました」「……」すると、少しの間アルベルトは私を見つめると再話しかけてきた。「やはり、専属メイドは自分が連れてきたメイドがいいだろう?」「はい、そうですね。出来れば気心の知れたメイドがいいです」「分かった。だが、あのメイドもまだこの城に来たばかりで色々勝手が分からないことも多いだろう。だからもう1人、この城のメイドとついでに侍女もつけることにしよう」「え?」その言葉に耳を疑い、思わず声が漏れてしまった。あの時のアルベルトは私には誰一人としてこの城の侍女どころかメイドすらつけることなど無かったのに……。「どうした? やはり……この城の者達は信用出来ないか?」アルベルトは私の戸惑いを別の意味で捉えたのだろう。じっと私の目を見つめてきた。「い、いえ。別に……そういうわけでは……」そう、私は警戒云々よりもアルベルトの態度があまりにも異なるので戸惑っていただけだ。すると、突然アルベルトが顔を近づけてきた。え?な、何を……?そして戸惑っている私に耳打ちをしてきたのだ。「安心しろ、お前につけるメイドと侍女は……宰相の派閥の人間ではない」「!」驚いてアルベルトの顔を見上げると、彼は口角を上げて私を見つめていた。「明日の午前中には新しいメイドと侍女が挨拶に来るはずだ。それではゆっくり休むといい」「はい……ありがとうございます」「ああ、お休み。それではまたな」そしてアルベルトは踵を返すと、足早に去って行った……。「……一体何が起きているの……?」アルベルトの背中を見守りながら、思わず疑問符が口をついて出てしまった。想定外のことばかり自分の身に起きているので、考えがおいつかない。それどころか、焦りすら感じていた。どうしよう……。このままでは私
last updateLast Updated : 2025-11-13
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第2章 21 新しい暮らしの始まり

 翌日――コンコン扉に取り付けられたドアノッカーの音が室内に響き渡り、目が覚めた。コンコン更に扉のノック音が響いた。「誰か来たのね……」目をこすりながらベッドから起き上がるとすぐに声をかけた。「どうぞー」すると……。「失礼いたします」カチャリと扉が開き、ワゴンを押してリーシャが部屋に現れた。「おはようございます。クラウディア様」笑顔でリーシャは挨拶してくる。「ええ、おはよう。リーシャ、昨夜はよく眠れたかしら?」「はい、お陰様でぐっすりです。与えられたお部屋にも満足しています」ニコニコと笑みを浮かべて返事をするあたり、おそらくリーシャが満足する部屋だったのだろう。「そうなのね? それは良かったわ」「クラウディア様もゆっくりお休み出来ましたか?」「ええ、休めたわ。久しぶりに良く眠れたわ」旅の間の環境は確かに私にとっては良いものでは無かった。常に神経を張り巡らせ、落ち着くことが出来なかった。そして城に就いてからも気を抜くことが出来ないだろうと覚悟していたのに……あまりにも以前とは違う、好待遇で拍子抜けする程だった。ここは私に取っては敵地と言っても過言ではないのに、何故かアルベルトは私に友好的だった。それ故、安心して眠ってしまったのだろう。「クラウディア様。目覚めのお茶をお持ちしましたので、まずはお着替えをされませんか?」「ええ、そうね」頷きながら昨夜のアルベルトの話を思い出した。そう言えば、アルベルトが私の服を用意した話をしていたけれども……。その時、背後でリーシャの歓喜する声が響き渡った。「まぁ! これはすごいですわ!」振り向くとクローゼットの扉が開け放たれ、ハンガーに掛けられたドレスがズラリと並べられていた。どれも落ち着いたデザインのドレスばかりで私の好みのタイプばかりだった。「素晴らしいですね……お話によると、陛下自らが仕立て屋を呼んで、クラウディア様のドレスを用意させたそうですよ? 陛下はクラウディア様を大切に思われているのですね」「まさか……そんなはずは……」私の脳裏に断頭台に登った私を冷たい瞳で見つめているアルベルトの姿が脳裏に蘇る。そう、彼は……私を処刑した人物なのだから。「クラウディア様? どうされましたか?」「い、いえ。何でもないわ」「そうですか? ではどのお召し物に着替えられ
last updateLast Updated : 2025-11-14
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第2章 22 新しい専属侍女とメイド

 穏やかな朝日が差し込む部屋でリーシャが運んでくれた料理はどれも美味しかった。懐かしい味である反面、自分が日本で暮らしていた時の素朴な料理が恋しくなった。卵料理もこのように手の混んだオムレツではなく、半熟の茹で卵や、スープにしてもコンソメ味などではなく、お出汁の効いたお味噌汁に、炊きたての白米……。どれも、随分遠い記憶に感じる。この世界では……大豆や米は作られていただろうか?もし、この国で大豆や米が作られていなくても別の国では作られているかも知れない。それらを輸入して、土地が浄化された『シセル』で育てることが出来ればいいのに……。アルベルトと交渉して、うまく話が進むかどうかは定かでは無かったが……私はまだ名目上『レノスト』国の領地である『アムル』『クリーク』『シセル』を発展させたかった。「私がこの国の王妃でいられる間に、何とかしてあげたいわ……」食後の紅茶を飲みながら、自分の考えが口をついてでてしまった。「クラウディア様。今のはどういう意味でしょうか?」食器を片付けていたリーシャの耳に私の呟きが聞こえてしまったようだった。「い、いえ。私は王妃としての役目を果たせることが出来るかしらと思っただけよ」「それならきっと大丈夫だと思います。今のクラウディア様は20歳とは思えぬほどの落ち着きと思慮深さを持ったお方ですから」リーシャは笑顔で私を見た。確かに、今の私は回帰前の年齢と日本で生きた年齢を合わせれば67歳になるのだからリーシャがそう感じるのも無理は無いだろう。しかも子育てまで経験しているのだ。落ち着きがあるのは当然だ。「ありがとう、リーシャ。紅茶、ごちそうさま。とても美味しかったわ」カチャリと静かにカップをソーサーに置いた。「はい、ではこちらもお下げしますね」「ええ、お願い」その時。――コンコン部屋にノックの音が響き渡った。「誰かしら?」「ひょっとすると新しいメイドと侍女の方かもしれませんね? 私が対応します」私の疑問にリーシャが答えた。「ええ、お願いね」「はい」そしてリーシャは扉に向かうと扉を開けた。すると扉の前には髪を結い上げ、紺色のドレス姿の20代と思しき女性に、リーシャと同じメイド服に三編みの少女が立っていた。「おはようございます。ひょっとするとクラウディア様の…」リーシャが声を掛けると、ドレス姿
last updateLast Updated : 2025-11-15
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第2章 23 アルベルトの話

「陛下はただいま、執務室でお仕事をされております。本日はクラウディア様に大切なお話があるので、朝食後すぐにお連れするように陛下から申し使っております」青いカーペットが敷き詰められた長い廊下を歩きながらマヌエラが説明する。「そう……」一体私に何の用があるのだろう。アルベルトからの呼び出しは私にとって良い記憶は何一つ無い。私が呼び出される理由はいつも決まっていた。彼による激しい叱責だった。そして、その殆どはカチュアや宰相による言いがかりのような物だった。彼は私の話には一切耳を傾けることは無かった。そして私は全てを諦め……寂しさを紛らわす為、アルベルトから愛されたい為にドレスや宝石を買い集めた。その結果、私は国費を食いつぶした悪女として裁かれることになった――「クラウディア様? どうされましたか?」前を歩くマヌエラに声をかけられ、私は現実に引き戻された。「いいえ、何でもないわ。私を呼び出すということは、さぞかし重大な要件なのでしょうね」「……どうでしょうか? 私は何も聞かされてはおりませんので……。あ、到着いたしました。こちらのお部屋が陛下の執務室になります」足を止めた扉は白いドアに、金色に輝くドアノブが取り付けられている。「それでは私はお話が終わるまで、扉の前でお待ちいたしております」マヌエラがドレスの裾をつまんで、会釈した。「いいえ、大丈夫よ。待っていなくても」「え……? ですが、それではお部屋の場所が……」怪訝そうな表情を浮かべるマヌエラ。「大丈夫よ、もう自分の部屋なら覚えているから」回帰前も今も同じ部屋なのだ。間違えるはずもない。「そうですか? では、私は一度下がらせていただきます」「ええ」頷くと、マヌエラは去っていった。回帰前の記憶が鮮明過ぎて、アルベルトと顔を合わせるのは憂鬱でしかない。「ふぅ〜」深呼吸すると、扉をノックした。――コンコンするとすぐに扉は開かれた。カチャ……扉を開けたのはグレーのスーツを着用した見知らぬ人物だった。メガネを掛け、前髪を全て上げて整えている男性は30代前半に見える。「クラウディア様ですね? 陛下がお待ちです。どうぞお入り下さい」男性は丁寧に挨拶してくる。「はい、ありがとうございます」ひょっとすると、アルベルトの執事だろうか?促されて室内に入ったると大き
last updateLast Updated : 2025-11-16
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