その後私は部屋に鍵を掛けて、誰も自分の部屋に入れないようにした。そして部屋のカーテンを閉め切ると、テーブルの上に錬金術の道具を並べ始めた。この先、何が起こるか分からない。自分の身を……。そしてリーシャの身を守るためにも錬金術で薬を作り出しておかなければ。「やっぱりまず最初に作るのは【聖水】ね。【エリクサー】は別の日に作りましょう」どうせ、今はすることは何も無いのだ。アルベルトは私を相手にするはずもない。正式な夫婦になれば私用の予算が割り振られるはず。それが決定するまでは、恐らく私はこの城で放置状態にされるだろう。何しろ回帰前がそうだったのだから……。「とりあえず、今は2瓶だけ作りましょう」私は羊皮紙に術式を描き始めた――****「ふぅ……」気づけば目の前には【聖水】の元になる液体が出来上がっていた。今はどれくらいの時間が経過したのだろう。錬金術を駆使している間は途中からトランス状態に入ってしまう。その為に時間の経過が分からなくなってしまうのだ。出来上がった【聖水】を保存用の瓶に移すと、ドレスルームの奥に隠すように置かれたダイヤル式金庫に【聖水】を入れて鍵を掛けた。「ふふふ……。回帰前はこの中にはアクセサリーばかりだったのに、今入れるのは【聖水】なのだから、おかしなものね」今の私はアクセサリーの類など、一切興味は無い。そんなものを身に着けたところで、今の私には意味が無かった。そのような贅沢品を買い集めるくらいなら、領民達を助ける為の予算に回す方が余程有意義だ。「そうだわ。これからも少しずつ【聖水】や【エリクサー】を作って、トマスに託そうかしら……」その時、ふと私の為に『エデル』までついてきてくれたスヴェンやザカリーのことを思い出した。「皆は今頃、どうしているのかしら……」出来れば酷い扱いをうけていなければいいのだが、今の私にはもう彼らと会える手段は無い。「せめて元気で過ごしてほしいわ……」金庫を閉じると、次はカーテンを開けて外を見ると既に空はオレンジ色に染まっていた。「まぁ……もう夕方になっていたのね」部屋の壁掛け時計を見ると、時刻は16時半を過ぎていた。「それにしても疲れたわ……」ホウとため息をつくと、カウチソファに座った。いくらこの身体が20歳だとしても、疲れるのは無理もない。何しろ長旅で到着した
Last Updated : 2025-11-07 Read more