All Chapters of 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Chapter 151 - Chapter 160

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第2章 24 私の評判

「け、結婚式ですか? その件で私を呼んだのですか?」思いがけない話で、思わずうろたえてしまった。「ああ、そうだ。結婚するのだから式くらい挙げるのは当然だろう?」「で、ですが……」 回帰前は私とアルベルトは結婚式など挙げなかった。理由は簡単。それは私が『レノスト』国の王女だったからだ。私は『エデル』に嫁ぐまで知らなかったのだ。自分が人質妻であるということが。『エデル』の属国となった『レノスト』国が二度と自分たちに楯突かない為に……私が人質となって嫁がされてきたということに。挙げ句に私は道中、自分たちの国の領地である『アムル』『クリーク』『シセル』に住む人々を見捨ててきてしまった。その話がどういう経緯を辿ったかは知らないが、『エデル』に到着する頃にはすっかり悪女のレッテルを張られていたのだ。そんな悪女とアルベルトの婚姻を望む人々は誰1人としていなかった。当然、結婚式を挙げるなど……あり得ない話だった。それが、結婚式を挙げるだなんて……。「どうした? クラウディア。先程から浮かない顔で黙っているが……気分でも悪いのか?」アルベルトに声をかけられ、現実に引き戻された。「いえ、気分は大丈夫ですが……でも結婚式の話でしたら遠慮させていただきます。婚姻届にサインをするだけで構いませんから」私はアルベルトの目を真っ直ぐ見つめた。「何だって? 本気で言ってるのか? 普通、結婚式を挙げるのは女性の夢ではないのか?」アルベルトが驚きの表情を顔に浮かべて私に尋ねてきた。だけど、私は……。「いえ……。私は敗戦国から人質として嫁いできた人間です。父が勝手に起こした戦争で、多くの人々を犠牲にしてしまいました。そのような敵国の姫と陛下が結婚することを喜ぶような者は誰もいないでしょう? かえって私と結婚式をあげれば陛下のことを悪く思う人々が出てくるかもしれませんし……私自身の評判も更に悪くなるかもしれません。敗戦国の姫は自分の立場もわきまえず、強引に結婚式を挙げさせたと皆から言われてしまうでしょう」「クラウディア……」私の話を聞くアルベルトは、まるで苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべている。「誰が、お前のことを悪く言っていると言うのだ?」「そ、それは……」思わず言葉に詰まると、アルベルトは身を乗り出してきた。「お前は何も知らないかもしれないが、
last updateLast Updated : 2025-11-17
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第2章 25 城内の回廊で

「クラウディア様。このお城は本当に大きくて美しいですね」「ええ、そうね。リーシャ。私もそう思うわ」今、私はリーシャと2人だけで美しい広大な庭を挟んだ回廊を歩いていた。太陽の日差しが明るく差し込み、空には青空が広がっている。とても穏やかな時間だった。回廊を歩く人の姿は私達以外に無く、のんびりと話をしながら私達はとある場所へ向かっていた。「でも……本当によろしかったのでしょうか?」リーシャが躊躇いがちに尋ねてきた。「何が?」「新しく侍女になられたマヌエラ様です」私は先程アルベルトからマヌエラに城の案内をさせるという申し出を断っていた。そしてリーシャと2人だけで城の散策をさせて貰いたいと頼んだのであった。その話をした時は、城の案内人がいなくて大丈夫なのかと尋ねられたものの、何とかなるでしょうとアルベルトに返事をしたのだった。「リーシャだって、マヌエラが一緒だったら遠慮して話が出来ないでしょう?」笑みを浮かべてリーシャに尋ねた。「え、ええ……確かにそれは言えますが……あ、今の話はここだけにしていただけますか?」慌てた様子で頼んでくるリーシャが何となく娘の葵を思い出させる。葵……倫……今、2人はどうしているのだろう……?愛しい子どもたちの顔を脳裏に浮かべながら返事をした。「ええ、勿論よ。私達2人だけの秘密ね」「はい」2人で並んで歩いていると不意にリーシャが尋ねてきた。「ところで、クラウディア様。今どちらに向かわれているのですか?」「ええ、実はね……兵士の訓練場に行ってみようかと思っているの」「兵士の……訓練場? ですか……? 一体何故そのような場所に行かれるのですか?」「ええ。……会いたい人たちがいるのよ」「会いたい人たち……ですか?」「ええ。信頼できる人たちよ」不思議そうに首を傾げるリーシャ。確かに旅の間、ずっとシーラに身体を乗っ取られていたリーシャからしてみれば何故私が兵士の訓練場に行くのか理解出来ないだろう。リーシャと旅の思い出を共有出来ないのは寂しいことだが、あの過酷な旅の記憶が無いのはむしろ喜ぶべきことなのかもしれない。「きっと、リーシャのことも歓迎してくれるはずよ?」「そうなのですねか? 実はここだけの話ですが、『エデル』は私達からしてみれば敵国のようなものではありませんか? でも信頼できる人たちが
last updateLast Updated : 2025-11-18
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第2章 26 カチュアの頼み

「ほ……う。誰かと思えば……『レノスト』国の王女様ではありませんか?」宰相は私がアルベルトに嫁ぐ為に『エデル』へやってきたのを承知の上で、あえて私の出身国の名を口にして話しかけてきた。「こんにちは、クラウディア様」カチュアは笑みを浮かべながら私に声をかけるが、その目は笑っていなかった。そして彼らの後ろに控えている側近たちは、ただ私に頭を下げるだけだった。「こんにちは……。リシュリー宰相、そしてカチュアさん」ドレスの裾をつまみ、2人に挨拶をした。「これは光栄ですな。クラウディア様にもう私の名前を覚えていただいていたとは。それに『聖なる巫女』カチュアのことも覚えて下さっていたとは」宰相は自慢の顎髭を撫でながら私を無遠慮に見つめてくる。「いえ、この国の重鎮となるお方ですから当然のことです。それでは私達はこれで失礼いたします」一礼して宰相達の脇を通り過ぎて立ち去ろうとした時、再び声をかけられた。「お待ち下さい、クラウディア様」「はい、何でしょうか?」立ち止まり、振り返る。「確か、そこにいるメイドはクラウディア様が国から連れてきたメイドでしたな? 名は何と申すのです?」いきなり自分のことを尋ねられたリーシャはピクリと肩を動かした。「はい、彼女はリーシャと言います。私の大切なメイドです」リーシャを背中に庇うように前に立つと宰相に紹介した。「まぁ、リーシャさんと言うのね? 可愛らしい方だわ。今おいくつなのかしら?」するとカチュアが笑みを浮かべてリーシャに話しかける。「は、はい……19歳……です……」「19歳? 私と同じ年齢ね、よろしく。お友達になってもらえると嬉しいわ」カチュアはリーシャを困らせるようなことを言ってきた。「い、いえ……私はクラウディア様にお使えするただのメイドですから……お友達になるなんて、恐れ多いです……」リーシャは何とか返事をする。「あら? でも……」もうこれ以上黙って見ている事は出来なかった。「あの、申し訳ございませんが私もリーシャもまだ慣れない場所に来たばかりなのです。どうか少しの間、そっとしておいていただけないでしょうか?」私は2人に頭を下げた。「「……!」」宰相とカチュアが驚いて息を飲む気配を感じた。恐らく王女でありながら、頭を下げた私が奇怪な姿に映ったのだろう。回帰前の私ならプライドが
last updateLast Updated : 2025-11-19
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第2章 27 不吉な予感

「あの、クラウディア様……」リーシャの手を引いて歩いていると、不意に声をかけられた。「何? リーシャ」足を止めて振り向くと、そこには申し訳無さそうな表情を浮かべたリーシャの姿があった。「ど、どうしたの? リーシャ」「申し訳ございません……私のせいで、陛下にお願い事をしなくてはならなくなって……」今にもその声は泣きそうである。「何を言ってるの? 貴女は何もそんなことは気にしなくていいのよ? 自分のメイドを守るのは主である私の務めなのだから」「クラウディア様……」「ほら、そんな顔しないの。可愛い顔が台無しになるわよ?」まるで我が子をあやすかの如く、リーシャの頭を撫でた。「そ、そんな……わ、私なんて……別に可愛くは……」「いいえ、とっても可愛いわよ。もっと自信を持ちなさい? それじゃ行きましょう」「はい!」ようやくリーシャは笑顔を見せてくれた――**** 兵士達の訓練場は城内に3箇所あった。一番メインの訓練場は、回廊に囲まれた中央に位置する場所にあった。恐らく、そこに行けば今の時間誰かしら人がいるはずだ。「本当に兵士の方たちはいるでしょうか……?」リーシャが心配そうに尋ねてくる。「ええ、大丈夫。きっといるはずよ」たとえ、そこにユダや知っている兵士がいなくても尋ねてみれば誰かしら分かるはずだ。やがて、回廊に響き渡るように掛け声と何かが激しく打ち合うような音が聞こえてきた。「クラウディア様、あの音は…?」「ええ。間違いないわ。兵士たちが訓練する音よ。行きましょう」少し歩く速度を早めながら私達は訓練場へ向かった――まるで開けた広場のような場所にやってくると、隊長と思しき兵士が指示を出していた。「よし! 素振り100回だ!」『はいっ!!』その言葉に合わせて、20名程の兵士たちが剣を持って素振りをしている。「クラウディア様。あの人達が……?」リーシャが小声で尋ねてくる。「ええ、あの人達はこの城の兵士たちよ。貴女はここにいてくれる? 私は彼に尋ねたいことがあるから」指示を下している人物から目をそらせること無くリーシャに声をかけた。「は、はい……あの、クラウディア様。どうぞお気をつけ下さい」「ええ。大丈夫よ」心配そうに見つめるリーシャを安心させる為に笑みを浮かべると、私は目的の人物に近づいて行った。「ん? 誰
last updateLast Updated : 2025-11-20
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第2章 28 宰相からの挑発 1

「そうですか。宰相とカチュアさんがこちらにいらしたのですね」「ええ、そうですよ。ついでに預かった物もありますので」兵士はこれみよがしにニヤリと笑った。預かった物……。敢えて私にその話をしたということは、何かそこに重要な意味があるのかもしれない。彼の挑発に乗ってはいけない……。「ところで、貴方は知っていますか?私を『エデル』迄連れてきてくれた兵士たちのことを。リーダーを務めていた人物の名はユダといいますが」心を落ち着かせ、何の期待も込めずに尋ねた。「ええ。よく知っていますよ?」「え? 本当に?」兵士の予想外の言葉に驚いた。てっきり知らないと言われると思っていたのに……。「勿論ですよ。彼らは我らの仲間だったのですから」仲間だった……?その過去形の言い方が気になったが、ここで動揺しては相手の思うツボだ。「では、ユダ達が何処にいるか教えて貰えますか?」「ええ、いいですよ。ただし……」そして兵士はポケットから鍵束を取り出した。「この鍵がかかった何処かに奴らは閉じ込められていますよ」兵士は取り出した鍵束を指に引っ掛け、持て余すかのようにカチャカチャと振り回した。「!」背後では兵士の様子に怯えているのか、息を飲むリーシャの気配を感じた。「閉じ込められている……? ということは、ユダ達は牢屋に入れられているということですか?」「ええ、そうですね」「何故、彼らは牢屋に閉じ込められているのですか? 何か罪でも犯したのですか?」震えそうになる声を必死に押し殺し、兵士に尋ねた。「さぁ? 俺には良く分かりません。何しろ、宰相がユダ達を牢屋に入れることを決めたのですから」淡々と答える兵士。やはり、宰相がユダ達を牢屋に閉じ込めたのだ。その理由は聞かずともおおよその見当はついている。「……ユダ達に会わせて下さい」「さぁ、どうでしょうかね〜」兵士は何処までも私を馬鹿にしたいのかニヤニヤと笑みを浮かべ、態度を変えることはない。それどころか、すでに訓練を終えた兵士たちも興味深げにこちらをじっと見つめている。彼らの誰もが、この兵士を咎める気は無いようだ。「本当はユダ達に会うことは可能なのでしょう? だから貴方も鍵を取り出して私にみせているのですよね?」するとその時、初めて兵士の態度に変化が現れた。「なるほど……お見通しってわけです
last updateLast Updated : 2025-11-21
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第2章 29 宰相からの挑発 2

「クラウディア様……探すと言っても、何かあてはあるのですか?」リーシャは余程不安なのか繋いだ手が小さく震えている。「ええ、大丈夫よ。リーシャ、私を信じて? 勝算が無ければ鍵束なんか受け取らないもの」「そう……なのですか?」「ええ。だから安心して」この時ばかりは本当に処刑される寸前までの記憶を鮮明に持っていて良かったと感じたことは無かった。私が兵士から預かった鍵束についている鍵にはヘッド部分に不気味なドクロの飾りがついている。この鍵を使う牢屋は良く知っている。何故ならそこに私は処刑場へ連れていかれる寸前まで閉じ込められていたのだから……。けれど、その牢屋に向かうにはある問題があった。「リーシャ」足を止めると振り返った。「はい、何でしょうか?」「この牢屋に行く前に、やらなければならないことがあるの。だから私のお願いを聞いてくれるかしら?これはリーシャにしか出来ないことなのよ」「え? 私にしか出来ないことですか?」「ええ、そうよ。引き受けてくれるかしら?」するとリーシャは大きく頷いた。「ええ。勿論です。私のような者でもクラウディア様のお役に立てるなら、何なりとお申し付け下さい」「本当?それでは香辛料の貯蔵されている倉庫から、カゴ一杯に唐辛子を貰ってきてくれる?」「え?」リーシャが驚いて目を見開いたのは、言うまでも無かった――****  私はリーシャを連れて、城の敷地内に設けられた大きな倉庫……香辛料貯蔵庫へと足を運んでいた。幸い倉庫付近に人の気配は無く、私を見て咎めるような人は誰もいない。「本当に回帰前の記憶を鮮明に覚えていて良かったわ……」青い空を見上げながら呟いた時……。「クラウディア様」倉庫の中から、布が掛けられたカゴを手にしたリーシャが現れた。「どうだった? 唐辛子は貰えたかしら?」「はい、見て下さい。こんなに沢山頂きました」リーシャは嬉しそうに手にしていたカゴの布を取り払うと、中にはぎっしりと唐辛子が入っていた。「まぁ、これはすごいわ…」「どうですか? これくらいで足りますか?」「ええ、十分足りるわ。それでは行きましょうか?」「はい」私はリーシャを連れて、いよいよユダ達が囚われている監獄へと向かった――****  広大な敷地に建てられた『エデル』の城は美しいだけでは無かった。城の周
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第2章 30 監獄 1

「いい? リーシャ。犬が人間の何倍もの嗅覚を持っているのは知っているでしょう?」「はい、勿論です」頷くリーシャ。「犬という生き物は刺激のある匂いに弱いのよ」「あ……では、まさか……」リーシャは自分の首からまるでネックレスのように吊り下げられた唐辛子を見た。勿論、私もリーシャと動揺に麻紐で繋げた唐辛子をクビから下げている。「この唐辛子の匂いは犬が大嫌いな匂いなの。これを身につけている限り、番犬に襲われることなく、監獄へ行くことが出来るのよ」「そうだったのですね? その話を聞いて安心しました。それにしても驚きです。よくご存知でしたね?」「え、ええ。まあね」何故、知っているか……それは回帰前、私が監獄へ連行される際に宰相から聞かされていたからだった。監獄は森の中にあり、脱獄できないように獰猛な番犬を何匹も放し飼いにしてあるという話を……。実際、私を連行する兵士たちは大量の唐辛子を身につけていたからだ。「流石はクラウディア様は博識ですね」リーシャは私が何故ユダ達が捉えられている牢屋の場所や、番犬がうろついていることを知っているのか不思議でならないはずだろう。けれど、敢えて尋ねないでいてくれる。そんな彼女の思いやりの気持ちが嬉しかった。ありがとう、リーシャ。私は心の中で感謝した……。**** 森の中は1本道が続いており、監獄までの道のりはそれほど遠いものではない。私とリーシャが森の中を進み始めて程なく、突然目の前の森が開けて眼前に不気味な石造りの大きな建物が現れた。「クラウディア様……ひょ、ひょっとしてこの建物が……?」リーシャが震えながら尋ねてくる。「ええ、そうよ。これが『監獄』と呼ばれる牢屋なの。重罪を犯した罪人たちが投獄される場所と言われているわ」下唇を噛みしめるようにリーシャに説明した。「これが…『監獄』……」リーシャは青ざめながら監獄を見つめている。無機質な石造りの監獄は不気味な蔦が幾つも壁を這い、建物のてっぺんにまで届いている。等間隔にはめ込まれた小さな窓からは鉄格子がはめ込まれ、決して窓からは脱獄など出来ない造りとなっているのだ。「……行きましょう、リーシャ。ユダ達が心配だわ」ユダ達が捕らえられているという事は、私についてきてくれたスヴェンやトマス、それにザカリーも捕らえられている可能性がある。鍵
last updateLast Updated : 2025-11-23
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第2章 31 監獄 2

 この監獄は『嘆きの監獄』と呼ばれていた。何故このような名前で呼ばれていたのか……理由は2つある。 1つ目の理由は、この監獄に入れられた者達の殆どが処刑されるか死ぬまで出して貰えることはないからだ。その為囚人たちは自分たちの身を嘆き悲しみながら日々を過ごすことになるからである。 そして2つ目の理由は、この監獄から聞こえてくる『音』が理由であった。『嘆きの監獄』がある森は、夜になると冷たい風が吹きすさぶ場所に建っている。そしてこの風は、ガラスがはめられていない鉄格子の窓を風が通り抜けるときに恐ろし気な音が聞こえてくる。この音がまるで人が苦し気に呻いている声のように聞こえてくるのだ。 そこで、この監獄はこう呼ばれるようになった。『嘆きの監獄』と――。**** 軋んだ音と共に扉を開くと、早速リーシャを連れて『嘆きの監獄』の中へ足を踏み入れた。 内部はとても薄暗かったが、かろうじて窓から差し込む光のお陰で周囲の様子を伺うことが出来た。この監獄は、壁も天井も床も全て冷たい石づくりとなっている。通路を挟むように左右に並んでいる鉄格子の檻は、ますます寒々しい雰囲気を醸し出している。付近に見える牢屋には人の気配は感じられなかった。錆びついた鉄の匂いに、天井から時折垂れてくる水の音が監獄に響き渡る。リーシャは大丈夫だろうか?もしかするとこの牢屋の様子に恐怖を感じているかもしれない。そう思った矢先……。「う……」リーシャの小さく呻く声が聞こえた。彼女にとってはかなり刺激が強い場所なのかもしれない。何より、回帰前の私は初めてこの牢屋に連れて来られたときに恐怖の為に泣き叫んでしまったのだから。「大丈夫?リーシャ?」振り返り、リーシャに声をかけた。「だ、大丈夫です……す、少し……怖いですけど……」気丈に返事をするリーシャ。「そう? もし怖いなら外で……」言いかけて、ふと思った。ここは森の中。しかも外は番犬がうろついている。そんな場所で待っているよりはこの監獄の中にいたほうが余程マシかもしれない。「大丈夫そうなら一緒にユダ達を探しましょうか?」「はい、クラウディア様」そして私達は監獄の中をユダ達を探す為に進み始めた。「それにしても……何故、牢屋番がここにはいないのでしょう?」リーシャが尋ねる。「それは多分牢屋番の必要が
last updateLast Updated : 2025-11-24
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第2章 32 監獄 3

「キャアッ! あ、あの声は何でしょう!?」怯えたリーシャが私にしがみついてきた。その時……。「何だ!? 誰か来たのか!?」聞き覚えのある声が監獄内に響き渡った。あの声は……!「ユダッ!!」通路に向かって叫んだ。「そ、その声はクラウディア様!?」ユダの狼狽えた声が再び響き渡った。「何だって!」 「クラウディア様が来たのか!?」「こっちです!」「ここから出してください!」「皆! 今行くわ!」リーシャの手を握りしめると、冷たい通路の中を進んだ。この監獄はコの字型の造りの建物になっている。そしてユダ達は最初の通路を曲がったすぐ先の牢屋に押し込められていた。「皆!」リーシャを連れて牢屋の前にやってくると、ユダが真っ先に駆け寄ってきた。「クラウディア様!」他の兵士たちも次々に駆け寄ってくる。勿論、ヤコブもユダ同樣閉じ込められていた。「皆……まさかこんなところに閉じ込められているなんて思いもしなかったわ……」「クラウディア様……」ユダは冷たい鉄格子を握りしめ、私を見下ろしている。「とにかく話は後にしましょう。今すぐここから出してあげるわ」ポケットから鍵束を取り出すのを目にしたヤコブが驚いた様子で声をかけてきた。「クラウディア様、一体その鍵束はどうされたのですか?」「ある兵士から預かったのよ」鍵を探し出して解錠すると、鉄の扉を開けた。キィ〜〜……錆びついた扉の音が監獄に響き渡る。「さぁ! 皆すぐにこの監獄を出ましょう!」私は全員に声をかけた――****「まさか、クラウディア様が我らを助けに来てくれるとは思いもしませんでした。本当に…ありがとうございます」出口を目指して歩きながら声をかけるユダの声はやはりどこか熱が込められているように感じられる。リーシャもユダに何か感じたのか、警戒しながらユダに話しかけた。「あ、あの……あなた方は一体誰ですか……?」「ああ、そうか。お前は俺たちを知らなくても当然だな。何しろ魔法を使う女にこの国に到着する寸前まで身体を乗っ取られていたのだから」「そうですか……その時に出会っていたのですね……。申し訳ございません。何も分からなくて……」リーシャは頭を下げた。「別に気にすることはないさ」一方、私達の後ろをついてくる兵士たちは宰相の悪口を互いに言い合っている。「くそっ
last updateLast Updated : 2025-11-25
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第2章 33 大切な仲間

「ユダ……貴方、スヴェンを覚えていないの?」尋ねる声が震えているのが自分でも分かる。「はい。初めて聞く名前ですね。試しに全員に聞いてみますか?」「ええ……お願い……」別にユダを疑っているわけではないが、確認したかった。「分かりました」ユダは頷くと背後で宰相の悪口を言い合っている仲間たちを振り返った。「おい! 皆! スヴェンという人物を知ってるか!?」ユダは大声で尋ねた。「え? スヴェンだって?」「誰だ、それは」「聞いたことがない名前だな……」けれど、彼らの返事はユダと似たようなものだった。「……誰も知らないようですが?」ユダが申し訳なさそうに眉を潜めて私を見る。「ええ……そのようね…。分かったわ。それでは全員でここを出ましょうか?」内心の激しい動揺を押さえつつ、私は皆を促した――****「大丈夫ですか? クラウディア様」無言で森の中を歩いている私にリーシャが心配そうな様子で声をかけてきた。「え、ええ……大丈夫よ」するとユダが眉をしかめた。「何処が大丈夫なのですか? クラウディア様は今にも倒れそうなくらい顔色が青ざめていますよ。相当無理をされているのではありませんか?」「心配してくれてありがとう、ユダ。でも私はあなた達の方が心配だわ。多分宰相は私に探し出せるはずが無いと油断していたはずよ。けれど私は皆を探し出すことに成功したから、今度はどんな方法でいいがかりをつけてくるか、分かったものでは無いわ。……本当にごめんなさい」「クラウディア様、何故謝るのですか?」「そうですよ。クラウディア様は何も悪いことはされていないではありませんか?」ユダに引き続き、リーシャが声をかけてくる。「それは私が宰相に憎まれているからよ。宰相は戦争で負けてしまった『レノスト』国の領地に立ち寄らせて、領民達から私が批判を浴びるように仕向けようとしたんじゃないの?」「そうなのですか!?」リーシャが驚きの声を上げると、ユダが話し始めた。「確かに……あの宰相のことです。恐らくクラウディア様が考えていた通りだと思います。ですが宰相はクラウディア様を見誤っていたのですよ。こんなに高潔な方だとは想像もしていなかったのでしょう。……本当に貴女はご立派な方です。もし許されるならずっと、お側で仕えさせていただきたい程に」ユダの瞳は真剣だった。「ありが
last updateLast Updated : 2025-11-26
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