All Chapters of 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Chapter 161 - Chapter 170

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第2章 34 彼らの為に

「クラウディア様、これからどうされるおつもりなのですか?」森の中を歩きながら隣にいるリーシャが私にそっと囁いてきた。これからどうするか……恐らくユダ達のことを尋ねているのだろう。「まずはこの鍵を渡してきた兵士の元に戻るわ」すると私の背後を歩いていたユダが声をかけてきた。「クラウディア様。後のことは自分たちで何とかしますのでどうかお気になさらないで下さい」「何とかなるって……。貴方達は宰相の命令で監獄に閉じ込められたのではないの?」「確かにそうですが……」ユダが言葉をつまらせる。「それなら、どうするおつもりですか?」ヤコブが話に入ってきた。「……陛下に直訴するわ」不本意だが、そうするしかない。「「「え!?」」」3人が声を揃えて私を見た。アルベルト……。『エデル』に来るまではアルベルトには何の期待もしていなかった。恐らく私のことは冷遇し、排除しようとしか考えていないと思ったけれども今回は違うようだ。少しは……彼を頼ってみてもいいかもしれない。そしてもし仮に却下されれば今後一切アルベルトには期待するのはやめよう。「クラウディア様、本気で仰っているのですか? 陛下がお話を聞いてくださると思っているのですか?」ユダが尋ねてきた。「ええ……何となくだけど、私の話を聞いてくれそうな気がするの」「そうですか。……つまり陛下との仲は悪くはない…ということですね?」何故かユダが面白くなさげな表情を見せる。「え? ええ。そうだけど……」「そう……なんですね。うまくいってるんですね……」どんどんユダの声が元気が無くなっていく。「ユダ? お前どうしたんだ? 陛下とクラウディア様の関係が良好なのは良いことだろう?」「黙れヤコブ!」ヤコブの言葉に、ユダはまるで自棄を起こしたかのように反論し……その後、2人は城に到着するまでの間、口論を続けた。「クラウディア様、あの方たち………一体どうしてしまったのでしょうね?」何も事情を知らないリーシャが尋ねてきた。「さ、さぁ……私には何のことだかさっぱり分からないわ」リーシャの質問に、私は曖昧に返事をすることしか出来なかった――**** 先程の訓練場に戻ると、まだ彼らは訓練を続けていた。そしてその場にいた全員が私がユダたちを連れて戻ってきたのを見て、驚きで目を見張っている。私は鍵を預
last updateLast Updated : 2025-11-27
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第2章 35 疑うリーシャ

 リーシャと一緒に部屋に戻る為に回廊を歩いていると、中庭の木々の間から声が聞こえてきた。「ほら、見て。カチュア様からこんなに素敵なリボンを頂いたのよ」女性の楽しげな声が聞こえてきた。「あら、私だって貰ったわよ? どう? このハンカチ素敵でしょう?」更に別の女性の声が聞こえる。「私なんかもっと凄いわよ? この髪飾りカチュア様から頂いたのだから」「どうやら中庭でメイド達がお話をしているようですよ?」リーシャが私に声をかけてきた。「ええ、そうね。きっと庭掃除でもしながらお話をしているのじゃないかしら?」回帰前もそうだった。カチュアは城の使用人たちに色々な品をプレゼントしていた。それらは決して高価なものではなかったが、何しろ相手は『聖なる巫女』。貰うだけで御利益があると思われていた。だから彼らは喜んでカチュアからのプレゼントを受け取った。そして、彼女は城中の皆を懐柔していったのだ。その陰で私を陥れる話をそれとなく広めながら……。「宜しいのですか? クラウディア様」不意にリーシャが真剣な顔で私に問いかけてきた。「え? 何が?」「はい。本来、城の人々に称えられるのはいずれ王妃様となられるクラウディア様ですよね? それなのに、『聖なる巫女』と名乗る女性が称賛されるなんて……」「リーシャ…」「それだけではありません。城中の人々はあの女性を『聖なる巫女』と信じて疑っていませんが、本当に彼女はそのような人物なのでしょうか?」リーシャは更に声のトーンを落とした。「そうね……。貴女が疑うのも無理ないかもしれないわね」けれど、カチュアが『聖なる巫女』であるのは多分間違いないだろう。何しろ彼女はあっという間に城中の者達だけでなく、『エデル』の国民達の心を虜にしてしまったのだから。一方の私はカチュアに嫉妬し、嫌がらせをしてしまった。そのせいで私の悪評はますます高まっていき……気付いたときには何もかもが手遅れになっていたのだ。「この国の人々が彼女を『聖なる巫女』と称えるのだから、私はその考えに従うだけよ。所詮私は『エデル』にとっては敗戦国の姫であり、人質でしかないのだから」「クラウディア様……またそのような事を仰って……」「いいのよ、本当のことだから。私はこの国で静かに暮らしていくつもりよ」そう、今度の私はカチュアには一切関わらないつもり
last updateLast Updated : 2025-11-28
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第2章 36 休息を邪魔する者

「ふぅ〜……今日は色々あって疲れたわね」日当たりの良い窓際に小さなテーブルを運び、リーシャと2人でお茶を飲みながら話をしていた。「本当ですね……。何だか精神的にも疲れてしまいました」リーシャは疲れ切った様子でお茶を飲んでいる。「そう言えば、今何時頃かしらね……」時計を見れば、もうすぐ午後の0時になろうとしていた。「あ、こんなにのんびりしていられませんでした。今、厨房にお食事を取り行ってきますね」立ち上がろうとしたリーシャを引き止めた。「まだ私なら大丈夫よ? それほどお腹は空いていないし。それよりもリーシャ。少しここで休んでいったらどうかしら?」リーシャの顔には疲労の色が滲んでいる。「ええ、でも……」「大丈夫よ。貴女は私が国から連れてきた唯一の専属メイドなのだから。貴女の主人は私なのよ? だから主人の言うことは聞きなさい?」「はい……ありがとうございます。それではお言葉に甘えてもう少しだけ休ませていただきます」「ええ、遠慮せずに休みなさい」「はい」素直に頷くリーシャ。可哀想に……余程疲れているのだろう。恐らくリーシャの疲れは単に、今日監獄へ行っただけではないだろう。今迄何ヶ月もの間、精神を支配され……最近になってようやく開放されたのだ。そのことが疲労の要因に繋がっているはずだ。リーシャをゆっくり休ませたい……。そう思った矢先。ドンドン!突然無遠慮に扉を叩く音が部屋に響き渡った。全く……この城では私達に休息も与えてくれないのだろうか?「何でしょう? あの乱暴な扉の叩き方は……」リーシャは眉をしかめながら、椅子から立ち上がると扉へ向かった。「どちら様ですか?」扉越しにリーシャが声をかけると、苛立ち紛れの声が聞こえてきた。『私です、リシュリーです』「え!?」リーシャはすぐに私の方へ視線を向けた。……その目は私に助けを求めている。「いいわ、相手はこの国の宰相なのだから扉を開けてちょうだい「はい、クラウディア様」扉を開けると、顔を赤らめて興奮した様子の宰相が立っていた。「クラウディア様にお目通り願いたい。この部屋にいらっしゃるのは分かっておるのだ」宰相は高圧的な態度でリーシャに命じた。「はい、私ならここにおります」リーシャが返事をする前に私は立ち上がった。「クラウディア様……少しお話を伺いたいので
last updateLast Updated : 2025-11-29
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第2章 37 激高する宰相

 カチュアのことはさておき、とりあえずは何やら激高している宰相を相手にする方が先だ。「リシュリー宰相、私に何か御用でしょうか?」すると宰相は眉を吊り上げた。「クラウディア様。貴女に伺いたいことがあります。一体どんな姑息な手を使って彼らの居場所を突き止めたのですか? 鍵を預けた兵士から話は聞きました。貴女はあの監獄の中に入れた者達を全員解放したそうではありませんか?」「……」宰相の言葉に呆れて二の句が継げなくなってしまった。姑息な手?何の罪も無い彼らを勝手に罪人扱いして監獄に入れておいて何という言い草だろう。宰相は私が黙っているのをいいことに、言葉を続ける。「奴らは罪人です。城の者達には奴らの居場所は明かさぬように緘口令を敷きました。なのに貴女は奴らの居場所を何なく探し当てた。一体これはどういうことですか!?」宰相は興奮のあまり、ユダ達を奴ら呼ばわりする。回帰前には気付かなかったが、この人物はちょっとしたことですぐに激高する性格のようだ。心の中でため息をつくと、宰相を見た。「その前に、まずは説明して下さい。一体ユダ達がどのような罪を犯したと言うのですか? 彼らは単に私を守りながらここまで連れてきてくれた大切な仲間達ですよ?」すると宰相がにやりと笑った。「成程……1人、クラウディア様に会わせろと叫んでいた男がおりましたが……奴の名前がユダというのですな? 全く、この私に向かってあのようなぞんざいな口を叩くとは……」大げさな態度で宰相は俯き、ため息をつくと私の方を向いた。「それこそが奴らの罪ですよ」「何ですって?」その言葉に眉をしかめた。「クラウディア様、貴女は何か勘違いしておられるかもしれませんのでこの際はっきりと申し上げておきましょう。貴女は確かに陛下に嫁いでこられた花嫁かもしれませんが、所詮は敗戦国の姫。要は『レノスト』王国の人質となる為に陛下と婚姻されるのですよ? 言うなれば貴女は戦争犯罪を犯した罪人家族の一味と言っても過言では無い」「そんな!」宰相の辛辣な言葉にリーシャは悲鳴交じりの声を上げる。「そんな罪人に……奴らが旅の間にクラウディア様に心を許すなど……これは重罪に匹敵します! しかし、それでも奴らは危険地帯を通り抜けてクラウディア様を無事に『エデル』まで連れて来た。だからチャンスを与えたのです。貴女が彼らを無
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第2章 38 とんだ茶番劇

「え……?」突然話しかけられて戸惑う私を他所に、カチュアは一体どういうつもりなのか宰相の方を向いた。「何? まさか……カチュア殿がクラウディア様に奴らの居場所を教えたのですか?」宰相が目を見開く。「ええ、そうです」「何故そのような真似をなさったのですか? 私に何の断りも無く……」「それはあまりにもクラウディア様がお気の毒だったからです」そしてカチュアはチラリと私の方を見ると、再び宰相に視線を戻した。「だが、しかし……」「良く聞いてください、リシュリー様。確かにクラウディア様の母国はこの国に宣戦布告してきました。けれど、クラウディア様には何の罪もありません。むしろ被害者の1人だと思います。敗戦国となり、領地迄奪われてしまったのですから。挙句の果てには人質としてこの国に嫌々嫁がされてしまった気の毒なお方です」「むぅ……確かに言われて見ればそうかもしれませんな……」宰相は腕を組んで考え込む素振りをしている。2人のそんな様子を見ながら私は思った。とんだ茶番劇だと。彼らは私が何も気づいていないとでも思っているのだろうか?このような見え透いた演技で私が騙されるはずがないのに。当初の宰相の筋書きでは、恐らく私は悪評をばらまきながらこの国に到着する予定だったはずだ。けれど、予想外の出来事があった。それが旅の同行者だったユダ達の存在だ。彼らは私の旅先での行動に共感し、信頼を寄せてくれるようになった。そこでやむを得ず宰相はこじつけとも思える理由でユダ達を投獄し、私を困らせることにしたのだろう。そして私を庇う役が、カチュアと言うわけだ。少しの間、宰相と話をしていたカチュアが突然私の方を振り向いた。「クラウディア様、ご安心なさって下さい。リシュリー様が許して下さいました」「え? 許す?」一体何のことだろう?「ええ、彼らを監獄から出したことですよ……本来であれば彼らはクラウディア様が御自身で見つけられなければずっと閉じ込めておくつもりでした。ですがカチュア様が彼らを許して欲しいと頼んで来たのであれば、奴らを罪に問うわけにはいかないでしょう?」そして宰相はカチュアに目を向けた。その素振りはまるで私にカチュアに礼を述べるようにと命令しているように感じられた。仕方ない……。私にはカチュアに礼を述べる義理は全く無かったが、早くこの厄介ごと
last updateLast Updated : 2025-12-01
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第2章 39 山積みの問題

「こちらの部屋をカチュアさんに……ですか?」「ええ、そうです」遠慮する素振りもなく、頷くカチュア。私としては彼女にこの部屋を譲るのは全く構わなかったが、勝手に独断で部屋を譲って良いのだろうか?仮にもこの部屋はアルベルトが用意した部屋なのだから。「どうでしょうか?ク ラウディア様」私が返事をしないので、再度カチュアが尋ねてきた。「分かりました。いいでしょう」私の言葉にカチュアが笑みを浮かべた。「本当ですか? ありがとうございます。では早速……」「陛下に尋ねて、許可を得られたらお部屋をお譲りしますね」「え……? 陛下に……ですか?」「はい。そうです」「い、いや。クラウディア様、それはいくら何でも……」宰相の顔に焦りが現れた。「陛下に尋ねるのは当然のことです。この部屋は陛下が用意して下さったものです。許可なしに勝手にお譲りするわけには参りません。陛下にお会い出来次第、すぐに聞いてみますね」「ええ、そうですね。ではそのようにお願いいたします」一方のカチュアは笑みを浮かべている。「それでは話も終わったことですし、我々はこれで失礼します。カチュア殿、行きましょうか?」「はい、リシュリー様。それではクラウディア様、失礼いたします」2人は部屋を出ていった。――パタン扉が閉じられると、リーシャがため息をついた。「はぁ〜やっと帰ってくれましたね……」「ええ、そうね」苦笑しながら返事をする。「それにしても、何て酷い人達なのでしょう。宰相は罪もない方達を監獄に入れるし、先程の女性はクラウディア様に部屋を譲るように言うなんて……」リーシャはすっかり憤慨している。「別にいいわよ、部屋を譲るくらい。ただこの部屋は陛下が用意したものだから私の一存では勝手なことは出来ないもの」「たしかにその通りですね。ですが陛下はお留守のようですし……一体どちらへ行かれたのでしょう?」「国を収める人だから色々忙しいんじゃないかしら」けれど、私はアルベルトの不在よりもスヴェンの行方が気になっていた。いや、単なる行方知れずならまだいい。それどころかユダ達の記憶からスヴェンが消え去っていたことの方が問題だった。「スヴェン……」思わず、彼の名前が口をついて出てしまった。「クラウディア様……?」リーシャが不思議そうな顔で私を見る。「いいえ、何でもな
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第2章 40 懐かしい過去と苦い過去

 リーシャが運んでくれた食事を1人で取り終えた私は部屋で窓際に置かれたソファに座り、静かにお茶を飲んでいた。時刻は午後2時を少し過ぎた頃で、リーシャは再びメイド教育を受ける為部屋を空けている。部屋の中は温かい日差しが差し込み、 眠気を誘う陽気である。「それにしても暇ね……。アルベルトは何処へ行ったか分からないし……」かと言って、別にアルベルトを探す気にはなれなかた。彼に用があるわけではなかったが、特に会いたいわけでも無い。ただカチュアの要件を彼に伝える必要があったから。それだけの話である。「前世の記憶が強すぎるから時間を持て余してしまうわね」 橋本恵だった頃の私は子育ても一段落したことで、パートで一般事務の仕事をしていた。午前10時から午後5時までの時短勤務、仕事帰りにスーパーに寄って買い物を済ませてから家事に追われていたので忙しい日常が日課になっていた。それでも毎日が充実していたし、愛する家族との暮らしに満足していた。けれど交通事故に遭い……私は全てを奪われた。次に目覚めた私を待ち受けていたのは、何故かアルベルトに嫁がなければならないという最悪な日に回帰していた。そして旅先での様々な出来事――「今、こうしてのんびり過ごしていること事態が嘘みたいだわ……」こんなに時間が余っているなら【エリクサー】を作っておきたいところだが、この部屋を狙っているカチュアや宰相がいつ現れるか分からない状況では錬金術を行うわけにはいかない。「何処か安全な場所で錬金術を行える部屋が貰えないかしら?」ポツリと呟いた時、部屋にノックの音が響き渡った。てっきりリーシャだと思い込んでいた私は扉に向かって大きな声で呼びかけた。「どうぞー」すると扉が開かれ、部屋に現れたのは新しく専属侍女になったマヌエラだった。「失礼いたします、クラウディア様」頭を下げるマヌエラ。「マヌエラ……一体どうしたのかしら?」するとマヌエラは顔を上げて笑みを浮かべた。「ありがとうございます、クラウディア様。早速私の顔と名前を覚えて下さったのですね」「ええ、そうね。何か用でもあるのかしら?」「はい。もしお暇な用でしたら王宮の図書館に御案内させていただこうかと思い、お伺いしました」「え!? 王宮の図書館に!?」驚きのあまり、思わず大きな声を上げてしまった。「はい。あの…
last updateLast Updated : 2025-12-03
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第2章 41 回帰前の気持ちの変化

 回帰前、カチュアとアルベルトは2人でよく一緒に王宮図書館で過ごしていた。図書館が見える中庭から、私は2人が仲睦まじげに本を読んでいる姿を悲しみと恨みがましい気持ちで見つめていたのが随分遠い過去に感じる。あの頃の私はアルベルトに恋い焦がれていたけれども、今にして思うと何故あれ程までに彼に執着していたのか分からない。回帰後の私は自分でも驚くほどにアルベルトに興味も無ければ、恋する気持ちを微塵も持っていないのだから。 その時、私はあることに気付いた。「ねぇ、マヌエラ」前方を歩くマヌエラに声をかけた。「はい、何でしょうか?」マヌエラは立ち止まると振り返った。「宰相は私が図書館へ入ることを許可しているのかしら?」「いいえ? 何故リシュリー様の許可が必要なのですか? クラウディア様に王宮図書館への出入り許可を出されたのは陛下なのですから」「でも……宰相は私のことを敗戦国から来た人質妻として、疑いの目を向けているのよ。私が王宮図書館へ出入りしていることを知られたら良くない気がするわ」するとマヌエラは目を見開いた。「何を仰るのですか、クラウディア様。この『エデル』で一番権力がある方は国王陛下、そしてその次が王妃殿下になられるクラウディア様なのですよ?」「え……? で、でも宰相や『聖なる巫女』の存在は……?」回帰前、宰相とカチュアは絶大な権力を握る存在だった。宰相はアルベルトの右腕として、そしてカチュアはアルベルトの恋人として……。「クラウディア様、実は先ほどリシュリー宰相に理不尽な目に遭わされたと報告を受けております」不意にマヌエラが小声になる。「え? 誰からその話を……? あ、まさか……」「はい、リーシャから話は伺いました。ですが御自身で解決されたそうですね」「ええ……」するとマヌエラは真剣な目で私を見た。「今後は困りごとがあれば、私に相談して下さい。私はクラウディア様の侍女ですから。必ずクラウディア様のお役に立ちます」「……ありがとう、マヌエラ」彼女はアルベルトが私につけた侍女ではあるけれども……信頼しても良いのかもしれない。「それでは王宮図書館へ参りましょう」「ええ」私とマヌエラは再び王宮図書館へと向かった――****「こちらが王宮図書館です」マヌエラが案内した場所は回廊の一番奥にある円形の大きな建物だった。
last updateLast Updated : 2025-12-04
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第2章 42 王宮図書館

ーーコンコンノックをすると、すぐに扉が開かれた。「あ、貴女がこの国に嫁いでこられたクラウディア様ですね?」中から現れたのは茶色い髪の毛に眼鏡をかけた黒いローブ姿の男性だった。「はい、そうです」返事をすると、男性はニコリと笑みを浮かべた。「お話は既に陛下から伺っております。どうぞ中へお入り下さい」「はい、ありがとうございます」頭を下げて図書館の中へ入ると、眼鏡の男性は首を振った。「そんな、お礼なんてしないで下さい。この図書館は王族の方は誰でも出入り自由な場所なのですから」「分かりました。では今後も私は自由にこの図書館を利用出来るのですね?」「ええ。勿論です」読書が好きな私にとっては、とても嬉しい話だった。「あ、申し遅れましたが私はここの司書を務めておりますジョゼフ・ロイドと申します。どうぞジョゼフとお気軽にお呼び下さい」ジョゼフは深々と頭を下げて来た。「ありがとう、では早速中を見させてもらうわ」「ええ、どうぞ。私は1階にあるカウンターに居りますので、何かありましたら声をお掛け下さい」「はい、分かりました」「それでは失礼致します」ジョゼフが去ったところで、私は改めて図書館を見渡した。王宮図書館は3階建てで、1階から3階まで吹き抜けの造りになっていた部屋の中央には螺旋階段があり、円筒の建物に沿うように本棚がぎっしりと並べられている。「外から見たことはあるけれど、中に入るのは初めてだわ……」回帰前、あれほど望んでいても中へ入ることが出来なかった図書館に入れるとは夢にも思っていなかった。「回帰前とは違う行動を私が取って来たから色々と事情が変わって来たのかしら?」思わずポツリと呟いた。けれど相変わらず宰相は私に敵対心を剥き出しにしているし、カチュアに至っては何を考えているのか得体がしれない。どのみち彼らとはなるべく関わらないほうが良さそうだ。アルベルトに会ったところで、すぐに部屋の交換の申し出があったことを伝えよう。尤も、アルベルトが何と返事をするかは不明だが……。「余計なことを考えるのはやめましょう。確かこの国の図書館には魔術に関する本が置かれていると聞いたことがあったわね」まずはその本を探してみることにしよう。何故なら私には知りたいことが幾つもあったからだ。ここに置かれている魔術の本を読めば、少しは謎が解ける
last updateLast Updated : 2025-12-05
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第2章 43 図書館に現れた人物

「あ! へ、陛下……!」まさかアルベルトがこの図書館に来ていたとは思わなかった。「申し訳ございませんでした。すぐに出て行きます」慌てて頭を下げ、急いで出て行こうとした矢先……。「おい、待て。何故出て行こうとする?」突然アルベルトに左手首を掴まれた。「いえ、図書館に入ってしまったので……」「何を言っている? 俺が中に入る許可を与えたことを忘れてしまったのか?」「あ……」そういえばうっかりしていた。回帰前の記憶が強すぎて、どうしても今の自分が引きずられてしまう。「そうでしたね。陛下が私に図書館に出入り出来るように計らって下さったのでしたよね?」「ああ、そうだ。何も遠慮しなくていい。だから出て行くことは無いぞ」妙に距離を詰めながらアルベルトが語りかけてくる。「わ、分かりました。どうもありがとうございます……」「分ればいい。それで目当ての本は見つかったのか?」アルベルトは私から手を離すと、再び尋ねてきた。「いえ、それがまだ……」返事をしながらアルベルトを見上げると、次に彼は耳を疑うような言葉を口にした。「そうか。ならどんな本を探しているんだ? 俺が場所を教えてやろう」「ええ!? そ、それは……!」「何故驚く? この図書館は俺が子供の頃から出入りしていたのだ。何処に何が置かれているかくらい、良く知っているぞ?」「で、ですが……」一体彼はどうしてしまったのだろう?回帰前の世界で、彼は私の存在を徹底的に無視し、カチュアとばかり過ごしていたのに。それが今のアルベルトは私の為に本を探そうとしている。「何も、遠慮することは無い。ほら、早く目当ての本を言ってみろ」けれど私はアルベルトにも自分が何の本を探しているか知られたくはなかった。魔術に関する本を探しているなどと言うことがバレてしまえば、よからぬ考えを抱いているのではないかと疑われてしまうかもしれない。「いえ、特に何の本を探しているかという訳ではありませんので。ただ何か面白い本があるのかと思って眺めていただけですから」「……」私の言葉をアルベルトは黙って聞いている。「それに陛下はお忙しいお方でしょうから、どうか私の為にお時間を割くようなことはなさらないで下さい」そう、むしろ私はアルベルトに構われたくは無かった。私は今回こそ、無事に生き残ってアルベルトと離婚をし……『レ
last updateLast Updated : 2025-12-06
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