声が聞こえて振り向くと、教会の前にはこの村の住民と思われる10名ほどの人々が集まっていた。全員が痩せた身体にみすぼらしい身なりをしており、何処か疲れ切った表情を浮かべていた。そしてこの村の中心人物であろうと思しき高齢の女性が険しい顔でこちらを睨みつけている。「誰でしょうか……あのお婆さんは」リーシャは小声で私に問いかけてきた。「あの女性は恐らくこの村の長老か、村長だと思うわ」私も小声でそっと返事をした。すると私達の態度が気に入らなかったのか、更に女性は声を荒らげた。「質問に答えるんだよ! あんたたちは何者なんだい!? あんなところに兵士たちまで連れてきて……また私たちの村に略奪でもしにきたのかい? 言っておくがね……この村にはもう何にも残っていないんだよ!」その女性は私達を睨みつけながら怒鳴りつけているが……恐らく私達が馬車の前に立っていたからなのかもしれない。『エデル』の兵士たちは建物の陰に隠れるように荷馬車の前に立っていたので私が一番目立ったのであろう。すると先程私に嫌味を言ってきた兵士が進み出て来ると村人たちに声をかけた。「皆の者、よく聞け! ここにいる女性は『クラウディア・シューマッハ』様だ。何とこちらの御方は先の戦争で負けてしまった『レノスト』王国の王女様であらせられるのだ。クラウディア様は『エデル』国へ嫁ぐ為に旅を続けている最中で、旅の途中にこの村に我等を立ち寄らせたのである」私は立ち寄らせてなどいない。彼らが勝手にこの村を休憩地点と決めたのだ。けれど遭えて私は口を閉ざし、成り行きを見守った。すると兵士の言葉に村人たちがざわついた。「何だって? あの女が……『レノスト』王国の王女?」「戦争を起こして、我等を苦しめた……?」「一体何しにここへ来たっていうんだ?」「でも、本当に王女なのか? その割には随分みすぼらしい身なりじゃないか?」その言葉が私の耳に飛び込んできた。そう……この反応だ。私はこの言葉を待っていたのだ。そこで私は一歩前に進み出ると声を張り上げた。「はい、その通りです。この様なみすぼらしい身なりをしてはおりますが、私は紛れもない『レノスト』王国の姫であるクラウディア・シューマッハです! 勝戦国となった『エデル』王国の人質妻として嫁入りする道中に、こちらの村に立ち寄らせていただきました!」人質妻
Last Updated : 2025-07-05 Read more