Semua Bab 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Bab 61 - Bab 70

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第1章 59 ユダの説得

「ユダ……」「どうされますか? クラウディア様。今なら闇に紛れて貴女を連れてここから逃げ出すことが出来ます。幸いリーシャもスヴェンも眠っている。今がチャンスです」ユダの言葉に耳を疑う。彼は『エデル』の兵士なのに……本気で国を裏切るつもりなのだろうか?「まさか……貴方、本気でそんなことを言ってるの?」「ええ、本気です。俺はこれ以上クラウディア様が危険な目に遭うのを見たくはありません。本音を言えば、この町にも立ち寄りたくはありませんでした。『レノスト』王国の領民達は、勝手に戦争を起こした挙句に敗戦したことで王族の方々を憎んでいるのは知っていましたから。クラウディア様がまた酷く責められるのではないかと危惧しておりました」「そう……やはり知っていたのね」やはりアルベルトは私が領民達に憎まれているのを知っていた。それなのに、遭えて『アムル』『クリーク』そして、これから向かう予定の『シセル』の村に立ち寄るようにユダ達に命じたのだ。回帰前に既に身をもって、私がどれだけ領民達から憎まれ、嫌われているのか既に分かっていた。現に今回だって訪れた領地での領民達の私に対する最初のイメージは最悪だったのに。アルベルトは仮にも妻となる為に『エデル』に向かう私に、どれだけ領民達に憎まれているのか、身をもって体験させたかったのだろう。「だが、貴女は先に訪れた『アムル』の村で、救いの手を差しのべ、信頼を得ました。そして、この町でも貴女は王女という立場にありながら傷病兵たちの治療に最善を尽くし、彼らを救いました。自分のことなど顧みずに。本当にクラウディア様は素晴らしい方です……」ユダの雰囲気がいつもと違う。普段はピリピリした空気をまとい、目つきも鋭い。なのに今は随分優し気な目で私を見つめている。「ありがとうユダ。そう言ってもらえると嬉しいわ。でも、私は逃げるわけにはいかないのよ」次の村は今にも死にかけている村なのだ。その村が尤も助けを必要としているのに。回帰前、私はあの村のあまりの惨状に耐え切れずに彼等を見捨てて逃げてしまった。その結果……あの村は滅んでしまったのだ。これにより私の悪評は益々高まり、『エデル』に到着した私を迎えた人々の目は、まるで氷のように冷たいものだった。「クラウディア様は、あの村『シセル』のことを何も知らないから、そのように仰るのでしょう。いい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-21
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第1章 60 ユダとスヴェン

「お前……話を聞いていたのか?」ユダがスヴェンを睨みつけた。「ああ。聞いていた……というか、聞こえていたと言った方がいいかもな?」焦り顔のユダとは対照的にスヴェンは余裕の表情で部屋の中に入って来た。「一体いつから聞いていたんだ?」「リーシャもスヴェンも眠っている……と、お前が言ったあたりからかな?」そしてニヤリと笑った。「く……勝手に人の話を盗み聞くとは……」「だったら聞かれてまずいような話なんかするなよ」そしてスヴェンはユダに一歩近づいた。「お前、一体何考えてるんだ? 仮にも『エデル』の兵士で、しかも王命を受けて姫さんを迎えに来たんだろう? それなのに、ここまで来て姫さんを逃がすとか言って。大体普通に考えたって逃げ切れるはず無いだろう? それともお前はそんなに姫さんを危険な目に遭わせたいのか?」「違う! お前は次の村がどれだけ危険か何も知らないからそんなことが言えるんだ! いいか? あの村は死にかけてるんだぞ! そんな場所にクラウディア様を連れて……みすみす危険な目に遭わせるわけにはいかないからだ!」「ユダ……声が大きいわ。他の人達が起きてしまうかもしれないから、落ち着いてくれる?」感情をむき出しにするユダを落ち着かせる為に声をかけた。「あ……申し訳ございません……」ユダは項垂れた。「ユダ、お前、今村が死にかけてるって言っただろう? だからこそ尚更姫さんは旅を続けるんだよ。次の村だって『レノスト』国の領地なんだよ。今まで姫さんは俺たちの村や、この町を救ってくれた。だから次の村だって姫さんは救いたいんだよ。そうだろう? 姫さん」スヴェンは顔を私に向けた。「ええ、そうよ。あの村は助けを必要としているわ。だから私はどうしても行かなければならないの。折角の申し出なのに受け入れることが出来ないわ。ごめんなさい、ユダ」ユダに頭を下げた。「クラウディア様……ですが本当に旅を続けられるのですか? この先も危険が伴うかもしれないのに……?」それは…嫁いだ後のことも案じての台詞なのだろうか?だけど私の覚悟はとうに出来ている。「ええ、そのつもりよ」「そんな……」何故かユダは酷く傷ついたような表情を浮かべた。「ユダ?」「ユダ。お前、姫さんを危険な目に遭わせたくないから逃がすと言ってるが……本当はそうじゃないだろう?」「よせ……」
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第1章 61 死の大地を越えて

 『クリーク』の町を出て、2時間――ガラガラガラガラ……馬車は長年続く干ばつにより、ひび割れてしまった悪路が続く大地を走っていた。「王女様……今迄こんなに乗り心地の悪い馬車で旅を続けられていたのですか?」ガタガタと揺れる馬車の中、向かい側に座ったトマスが青ざめた顔で尋ねてきた。「ええ、そうよ。でも今迄走ってきた場所はここみたいに足元が悪い道じゃ無かったから、こんなに酷くは揺れなかったけど」「確かにそうですね。ここまで酷い揺れはありませんでした。下手に話をすると舌を噛みそうですよ。これなら馬の上に乗ってる方がマシかもしれませんね」リーシャは顔をしかめながら窓の外を見た。相変わらず馬車に乗る兵士たちに緊張感は感じられない。……本当にユダが懸念する通り、敵がいるのだろうか?するとその時、馬車の後方で馬にまたがっていたユダと目があった。しかし、何故かユダはパッと目をそらせてしまう。まただ。昨夜からユダの様子がおかしい。いつもなら出発する際、声をかけてくるのはユダだったのだが、今朝に限ってはヤコブが声をかけてきたのだ。一体ユダはどうしてしまったのだろう?それとも本当は彼が私を裏切る者なのだろうか? それでやましく感じて私から遠ざかっている……?「クラウディア様、どうされましたか?」突然リーシャに話しかけられた。「え? 何が?」「いえ……先程からいつもと様子が違うように見えましたので。もしかして気分が悪いのですか?」「い、いえ。別にそういうわけでは……」「そうですよね? この辺りはあまりにも悪路です。トマスさんも限界みたいですし、休憩を取ってもらうように言いましょう」「でも、ここは休憩する場所なんて無いわよ」窓の外から様子を伺ってもどこまでも乾いた荒野が広がっている大地には、ところどころ巨大な岩が点在するのみで、馬車を止めて休めるような場所はどこにも見当たらない。「確かにそうですよね……」リーシャはため息をついた。『クリーク』から次の村『シセル』に行くには【死の大地】と呼ばれるこの場所を通らなければならない。この辺り一帯は不思議な場所で、1年を通して雨が降ることはほとんどない。当然水脈等あるはずもなく、大地は干からびている。その為、大量の水を持って移動しなければ当然通り抜けることは不可能な場所だ。現に私達も2台の荷馬車の
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第1章 62 怪しい人物と響き渡る悲鳴

「ふぅ……ここはまるで洞窟の様に涼しくて気持ちがいいですね……」馬車酔いの為に、地面に横たわったトマスがようやく口を開いた。「良かったわ、話が出来るまでに回復したのね?」「王女様……ご心配おかけして申し訳ございませんでした」「いいのよ、馬車に不慣れなら酔っても仕方ないわ。それに私もそろそろ休憩してもらいたかったから、丁度良かったわ」「それにしても、うんざりする景色が続きますね……早く『シセル』の村に到着してもらいたいです」リーシャは木のコップで水を飲んだ。「ええ。そうね」やはりリーシャは回帰前と同様、あの村の惨状を知らないのだろう。あの村に行けば、今のこの景色のほうがどれだけマシだったかと思うに違いない。早く……『シセル』の村へ着かなければ。手遅れになる前に……。私はギュッと手を握りしめた。その時、洞窟の外に出ていたスヴェンが戻ってきた。「姫さん」「あら、スヴェン。どこへ行っていたの?」「少し外の様子を見回っていたのさ」「スヴェンは元気ね? ひょっとして他の人達も全員外に出ているの?」「ああ。食事の準備をしているんだ。」「え? 食事の準備? なら私も手伝わないと」立ち上がると、リーシャが慌てて引き止めた。「何を仰っているのですか? クラウディア様がお手伝いされるなんて。第一お料理出来るのですか?」「出来るのか? 姫さん」「まさか、料理まで作れるのですか?」回帰前の私には当然料理など作れるはずは無かった。けれども私は主婦として家族のために家事をしていたのだ。別に料理くらいどうってことはない。「ええ。大丈夫よ。行ってくるわ」それに彼らの近くにいれば、誰が私を見張っているのかヒントを得られるかもしれない。「それなら私も……」立ち上がりかけたリーシャを引き留めた。「大丈夫よ、私が行ってくるから。リーシャは休んでいて。随分疲れているようだから」「すみません……クラウディア様」「いいのよ、トマスとここで休んでいて」するとスヴェンが声をかけてきた。「俺は姫さんを手伝うぞ? いつだって俺は姫さんと一緒だからな」「フフ……まるで本物の騎士みたいね。それじゃ行きましょうか?「ああ」私とスヴェンは連れ立って、洞窟の外へと向かった。****「おや? クラウディア様、どうしましたか?」洞窟の入り口では『エデル』の兵
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-22
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第1章 63 戻らない彼等

「な、何だ!? あの悲鳴は!」ヤコブが剣に手を添えた。「向こうから聞こえたぞ!」「ライが向った方角だ!」「まさか……奴の悲鳴か!?」「スヴェン! 我らは様子を見てくるのでクラウディア様を頼む!」ヤコブがスヴェンを振り返った。「ああ、任せておけ。姫さんは俺が守る」スヴェンが頷くと、ヤコブは仲間に声をかけた。「よし! 行くぞ!」『おうっ!』ヤコブは仲間を連れて声の聞こえた方角へ駆け足で向った。「あの声……大丈夫かしら……」何だかすごく嫌な予感がする。「どうだろうな……でもただごとでは無かったな……」スヴェンはヤコブ達が向った先を睨みつけて頷く。その時、蹄の音こえてきた。振り向くと、ユダを先頭に馬にまたがった兵士たちがこちらへ向って駆けてくる。ユダは私の姿を見ると、馬を走らせる速度を上げた。「クラウディア様! 何をなさっているのですか!?」私の近くで馬を止めるとユダが尋ねてきた。「それが……」すると何故か、スヴェンが進み出てくると私の代わりに答えた。「昼飯の準備を始めるって話を姫さんが知って、手伝う為に洞窟から出てきたんだよ。そしたら何が気に入らないのか、ライと言う人物が姫さんにイチャモンをつけてきたんだ」「何だって? ライが?」ユダの顔が険しくなる。他の兵士たちは黙ってスヴェンの話を聞いていた。「ああ、それでそのまま向こうの方角へ行ってしまったのさ。それからすぐさ。ヤツの悲鳴があがったのは」「何?」ユダの顔色が変わった。「悲鳴だって?」「まさか……」「ライの悲鳴か?」「それで、俺を残して全員が様子を見に行ったんだよ」スヴェンが再び、ライが消えていった方角を指さした。「我らも行くぞ!」ユダは馬にまたがったまま、仲間たちに声をかけた。「ああ!」「分かった!」「急ごう!」そして彼等もまたヤコブ達の後を追った――**** あれから一向に誰も戻ってくる気配がない。一度洞窟にトマスとリーシャの様子を見に行ってみると、2人は疲れていたのか眠りについている。せっかく気持ちよく眠っているのに、起こすのは悪い気がしてたので2人はそのままにしておくことにした。「それにしてもユダ達が戻ってこないわ……何かあったのかしら……」洞窟の中でじっと待っているものの、不安な気持ちが拭いきれない。「確かに少し遅
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-23
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第1章 64 毒蛇事件 前編

 馬は私を前に、スヴェンを後ろに乗せてゆっくりと歩いていた。私達の前方には大きな岩がそびえ立っている。「姫さん。恐らく悲鳴はあの岩陰から聞こえたんじゃないか?」私の背後からスヴェンが話しかけてきた。「ええ、私もそう思うわ」すると…突然馬が足を止めてしまった。「おい? どうした?」スヴェンが馬を歩かせる合図を送っても、動こうとしない。「参ったな……降りるしかないか」「そうね」返事をしながら、私は益々不吉な予感を感じていた。馬は人一倍臆病だと聞いたことがある。ひょっとしてこの先に何か危険を察知して、先へ進むことを拒んでいるのだろうか。スヴェンが先に降りた後、私は彼の手を借りて馬を降りた。「スヴェン、馬はどうしておくの?」「そうだな……手綱を括り付けておく場所も無いし……とりあえず賢い馬だから何処かへ行ってしまうことは無いと思うんだよな……ん? あの岩にこぶのようなものがあるな。あそこに手綱を引っかけておくか」スヴェンは近くの岩に馬を連れて行くと、こぶの部分に手綱を引っかけた。「いい子にして待ってろよ」愛馬の身体を撫でたスヴェンは振り返った。「それじゃ、行くか。姫さん」「ええ」そして私とスヴェンは馬をその場に残し、悲鳴が聞こえたと思われる岩を目指して静かに近づいた時……岩陰から人の気配を感じた。「くそ! まだいたのか!?」それはユダの声だった。それと同時に何かが空を切る音が聞こえた。「あいつ! 何かと戦っている!」スヴェンが走った。私も慌てて彼の後を追う。スヴェンが岩陰に姿が消えたと同時にユダの声が上がる。「お前! 何故ここに……!」「それより先に奴を始末するんだ!」始末? 一体何のこと?慌てて岩陰を覗いた時……私は見た。地面にはエデルの兵士たちが倒れこんでいる。前方には頭を頭を切り落とされたり、短刀が突き刺さった蛇の死骸があちこちに散らばっていた。ま、まさか……毒蛇……!?ユダとスヴェンの前には1匹の大きな蛇が鎌首をもたげて、威嚇音を発している。「これでもくらえっ!」スヴェンは腰に差していた短刀を蛇の頭部めがけて投げつけた。ザクッ!鈍い音と同時に蛇の頭部には見事にダガーが刺さっていた。「や、やるじゃないか……」ユダが荒い息を吐きながらスヴェンを見た。「ああ、まあな。ところで蛇は他にもいる
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-24
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第1章 65 毒蛇事件 後編

 全員の毒は消したものの、まだ誰も目を覚ます者はいない。そこで私とスヴェンは、彼らが目を覚ますまでこの場で待つことにした。「どうやら、ここは毒蛇の巣窟だったみたいだな」スヴェンが前方に無数に転がっている蛇の死骸を見ながらポツリと言った。「ええ、そうね。ここに人が現れたから蛇たちは縄張りを守る為にライを襲ったのでしょうね。それで様子を見に来たヤコブ達を次々に襲ったに違いないわ」「それにしても姫さんはすごいな。あっという間に解毒してしまうんだから。あれも【エリクサー】なのか?」「いいえ、違うわ。【聖水】なの」「聖……水?」スヴェンが首を傾げる。「そうよ」「【エリクサー】とは違うのか?」「ええ、あれは怪我を治す為の薬だけど、【聖水】は解毒する水なの」「それも城から持ってきたものなんだろう?」スヴェンは笑顔で尋ねてきた。「スヴェン……」スヴェンは私が『錬金術師』であることに気付いているはずなのに、あえて触れないでいてくれているのだ。彼の気遣いがヒシヒシと伝わり……その気持ちがとても嬉しかった。だから、少しだけ話したくなった。まだ、次の村のことを何も知らないスヴェンに……。「あのね……スヴェン。この【聖水】は、絶対に次の村で必要なものなのよ。だから用意したの」「そうなのか?」「ええ、そうよ。何故ならあの村は……」そこまで話した時。「う~ん……」一番最後に毒蛇に噛まれたと思われるユダがうなり声をあげた。「ユダ! 目覚めたんだな!?」スヴェンが声をかけると、ユダは目を開けた。「あ……俺は……一体……?」「良かった。ユダ、目が覚めたのね?」「クラウディア様!? 何故ここにいらっしゃるのですか!?」ユダが驚いた様子で私を見た。「ユダ、お前毒蛇に噛まれただろう?」スヴェンがユダを覗きこむように尋ねた。「あ、ああ……噛まれた。1匹切り捨てた時、別の毒蛇に噛まれたんだ」「姫さんが毒蛇に噛まれたお前を助けたんだぜ? 解毒剤を持っていたからな」スヴェンはあえて【聖水】と言う言葉を使わずにユダに説明した。「そ、そうだったのか……? 助けていただき、ありがとうございます。クラウディア様」ユダは頭を下げてきた。「いいのよ、でも良かったわ。無事で」「クラウディア様……」すると、そこへスヴェンが倒れていた兵士たちを指さした
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-25
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第1章 66 忍び寄る恐怖

 毒蛇事件から約2時間後――私たちは遅めの昼ご飯を食べた後、再び『シセル』の村を目指して旅を続けていた。何処までも続く地平線に私達、旅の一行の影が長く伸びている。「少し日が陰ってきていますね……。夜になる前にあの村に到着するでしょうか?」トマスが心配そうに空を見上げた。「そうね、到着すればいいけれど……」だんだん日が暮れる様子を見ていると、不安な気持ちがこみあげてくる。それに気のせいか、移動する速度も遅くなっている気がする。やはりあの毒蛇事件は歩みを遅くする為に、わざと仕組まれたものだったのだろうか?何しろあの村の周辺は太陽が落ちると……。「クラウディア様」不意にリーシャに名前を呼ばれて顔を上げた。「どうかしましたか? 先ほどから浮かない顔つきをしていように見えますが?」「え? そうかしら? 気のせいじゃないかしら?」何も知らないリーシャの前で下手に、私が不安に思っていることを口にすることはできない。要は日が暮れるまでに『シセル』の村へ辿り着けばいいのだから。……尤も、あの村も決して安全な場所とは言えないのだけれども。「そうですか? ならいいですけど。それにしても驚きました。クラウディア様の作ったお料理、本当に美味しかったです。いつの間にお料理が出来る様になっていたのですか?」「え? ええ。ほら、お城から使用人の人達がどんどん減って行った頃、厨房に立って時々お手伝いしていたのよ」本当はそんなことなどしたことは無かったが、私は苦しい言い訳をした。まさか前世は日本人の主婦で、家族の為に食事を用意していたから……等とは口が裂けても言えるはずはなかった。「そうだったのですね……少しも知りませんでした。ですが、それで料理が作れるようになったのですね?納得しました。とても美味しかったです」リーシャが笑顔で私の料理を褒めてくれた。「ええ。本当に美味しかったです。まさか自分の人生の中で、王女様の手料理を頂ける日が来るとは思いもしませんでした。特に干し肉と乾燥野菜で作ったシチューはとても美味しかったです」「トマスったら大げさね。でもありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」やはり作った料理を美味しいと褒めてもらえるのは嬉しい。「あの人たちだって、美味しそうに食べていたじゃないですか。特にあのライって人はこっそり、もう1杯食べていた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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第1章 67 夜に響き渡る悲鳴 前編

 日暮れ前に【死の大地】を抜けることが出来たのは良いものの、私の中にはさらなる不安がこみ上げていた。  今や太陽は完全に沈み、辺りは青白い月明かりに照らされている。私たちは月明かりだけを頼りに『シセル』の村に向って進んでいたのである。****辺りの景色はすっかり変わり、いつの間にか霧が立ち込める林の風景へと変わっていた。「何だか不気味な場所ですね……」リーシャが少し怯えた様子を見せる。「リーシャさんもそう思いますか? 僕も先ほどから背筋がゾクゾクするんですよ」トマスもどこか不安げだった。「どうして夜にこんな不気味な場所を通るのでしょう? こんなことならあの洞窟で夜を明かした方が良かったのではないでしょうか?」リーシャは益々怯えながら、私に意見を求めてくる。確かに普通に考えれば、夜の移動は危険が伴う。外は夜行性の動物がうろつき、襲われる可能性が非常に高いのだから。「そうね、リーシャの言う通りかもしれないわね」リーシャの言葉に私は頷く。回帰前もそうだった。あの時も夜にこの場所を通り……そこで恐怖体験を……。その時――「うわぁああああっ!! な、何だあれはっ?!」「ば、化け物だっ!!」「た、戦えっ!け !、剣を……剣を構えろっ!!」先頭を進んでいた兵士たちの叫び声が不気味な林に響き渡った。「きゃああっ! な、何があったのっ!?」リーシャが叫んで頭を抱えた。「い、一体、な、何が……」トマスはガタガタ震えている。回帰前の私だったら、やはり2人のように怯えてパニックになっていただろう。けれど、今の私には一体何が現れたのか分かっている。現われたのは……。ユダの声が闇夜に響く。「全員剣を持てっ! 戦闘態勢に入るんだ!! あれは……アンデッドだ!!」アンデッド……!やはりそうだ。回帰前と同じだ!あの時も私たちはアンデッドに襲われた。「な……何だって!?」「た、大変だっ!!」馬車の後ろについていた兵士たちが慌てたように次々とアンデッドへ向かって馬を走らせて行く。アンデッドは決して強い存在では無い。動きも遅いし、力も生前と変わらない。けれど通常の武器ではダメージは与えられるものの、倒す事は出来ない恐ろしい存在なのだ。彼等はそのことを知っているのだろうか?「そんな……ア、アンテッドが現れるなんて……」「か
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-27
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第1章 68 夜に響き渡る悲鳴 後編

 本当は敵かもしれないリーシャの前で【聖水】の存在が知られることがどれほど危険なことか、理解していた。けれども、こんなに危機的状況の中ではそのようなことは言っていられない。それにまだリーシャが何者かの内通者だと決まったわけではないのだから。「姫さん……これはひょっとして……」しかし、スヴェンは私の気持ちを理解してくれていた。すぐにこれが【聖水】だと気が付いたのに、何も触れないでいてくれている。「それをスヴェンの持っている剣に少しでいいから振りかけて。アンデッドに効果絶大だから。余力が有れば、他の兵士たちの剣にもかけてあげて」「分かった……姫さん。恩に着るよ!」スヴェンは瓶を握りしめると、アンテッドの群れを目指して走り去っていった。「クラウディア様……スヴェンさんに渡したものは何ですか?」スヴェンがその場からいなくなるとすぐに、リーシャは尋ねてきた。「あれは……」どうしよう? 何と説明すればよいのだろうか?するとトマスが言った。「王女様。あれはひょっとすると濃度の濃い塩水なのではないですか?」「え?」「アンデッドは塩に弱いと聞いたことがあります。あれをアンデットが口にすると自分が死者であることを思い出し、地面に還るそうですよ」「トマス……」ひょっとするとトマスはユダからリーシャのことを忠告されていたのだろうか? それであんなことを?「え、ええ。そうなの。この辺り一帯は夜になるとアンデッドが動き回ると知っていたから『クリーク』の町で用意させて貰ったのよ」「なるほど。そうだったのですね?」リーシャは納得したかのように頷いた。遠くの方では未だに兵士達の騒ぎ声が聞こえいる。恐らくアンデッドたちと戦いを繰り広げているのだろう。「皆さん……大丈夫でしょうか……?」リーシャが震えている。「ええ。多分大丈夫よ」回帰前も、アンデッドに襲われたけれども誰一人命を落とした者はいなかった。あの時は夜明け前に近い時間だったおかげで助かったのだ。アンデッドは太陽の光に弱い。戦いの最中に夜が明け、太陽の光を恐れたアンデッドたちは土の中へ戻ったお陰で私たち全員無事でいられたのだ。「そうですか? クラウディア様がそうおっしゃると何だか本当に大丈夫な気がしてきました」震えていたリーシャが笑顔を見せる。「そうですね。王女様は不可能なことでも
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-28
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