All Chapters of 偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも幸せになれますか?〜: Chapter 41 - Chapter 50

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第四十一話

「そうだな。俺もそう思うよ。……俺も聖良と同じ気持ちだ」「棗さん……」棗さんは私の頬に触れると、優しくキスを落とす。「……愛してる。聖良」棗さんは私に語りかける。「聞いてくれ、聖良。俺はずっと、お前のことを愛していく自信がある。 お前のことを本当にいい妻だと思っている。……聖良がいたから、俺は今こうして幸せだと思えるんだ」棗さんのその言葉ひとつひとつが、私の胸に突き刺さっていく。 その言葉に嬉しくなって、泣きたくなる。だけどその反面、気持ちは複雑で……。棗さんがこんなにも優しくしてくれるのに、私はまだ棗さんの優しさが足りないと、そう思ってしまう時があるんだ。私に言ってくれるその「愛してる」という言葉を聞くたびに、ズキッと心が痛むのがわかる。信じたいと思うのに、その気持ちが揺れ動いてしまう。……私だって、棗さんのことを愛しているのに……。「棗さん……」そこで言葉を詰まらせてしまう。棗さんは、背中をトントンと叩きながら「ムリして話さなくてもいい」そう言ってくれた。  だけど私は、ちゃんと自分の口から言いたかった。 自分の気持ちを、ちゃんと伝えたいんだ。「私は、これからだってあなたの妻でいたいです。……あなたのそばで、ずっと幸せを感じていたい。あなたが幸せだと思えるように、一生懸命妻として、あなたを支えていきたい」私は棗さんのことが好き。大好きなの。それは夫として、パートナーとしての愛情なの。これからだって、彼のことを愛していきたい……。死ぬまでずっと、棗さんの妻として生きていきたい。「……聖良、ありがとう。 君の気持ち、とても嬉しいよ」「大好きです、棗さん……愛してるの……。これからもずっと、あなたを愛したいの」私は棗さんという家族がいるだけで、幸せだ。 棗さんがいれば、もう何もいらない……そう思っている。「……俺もだよ、聖良。 俺は世界で一番、君を愛している」「私も……あなたのことを愛してる。ずっとずっと、愛してる」そのためには、私はもっといい妻にならないといけない。 彼の隣に立つのに、相応しい妻にならないと……。「棗さん、すみません……。私もっといい妻になれるように、頑張りますから」「何を言ってる。聖良はいつも頑張っているだろ?……だからそれ以上、無理に頑張らなくていい。君らしく、いつも通りにやればいい」「棗……
last updateLast Updated : 2026-01-20
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第四十ニ話

「やっ、んっ……」棗さんの鼓動が、その瞳が、その表情が、その体温が。私の身体の中の体温を上げていく。もう棗さんに抱かれるのがこんなにも愛おしいんだなと、思った。「……はぁっ、棗さん……っ」棗さんが私の胸や首筋に唇を這わせていくと、甘い声が我慢出来ずに漏れる。「ん、気持ちい、いっ……」「もうこんなに濡れてる。そんなに俺がほしいのか?」「ん……ほしいっ……」私の入口が充分すぎるほど濡れたのを確認した棗さんは「聖良……俺ももう我慢出来ない」とその欲望をぶつけるかのように私の中にいっぱいになったその質量をぶつけてくる。「あぁっ……はぁっ、んっ」その欲望をぶつけられるたびに、私は甘く激しくベッドの中で乱れていく。でも棗さんが両手を握ってくれると、安心する。 そうして私はいつの間にか、棗さんの虜になっている。「な、つめ……さん……いや、激しっ……」激しさから漏れる甘く熱い熱情と、吐息がさらに激しさを増していく。「これくらい激しいのも、好きなんだろ?」「待ってっ……イッちゃう、から、ダメッ……」心地よいリズムで私の身体が揺らされるだけで、意識が気持ち良さで飛びそうになる。 「イッていいよ、聖良。俺が受け止めるから」「はぁっ、あっ……っ」私が棗さんの背中にしがみつくと、私の理性を棗さんは受け止めてくれた。「大丈夫か?」「ん……大丈夫……」棗さんとこうして身体を重ねると、私への愛を感じるし、やっぱり愛してると思える。「……聖良、今度は優しくするからな」「うん……」棗さんの優しい行為も好きだし、激しいもの好き。 だけど、棗さんとだから好きなんだ。「っ……あ、そこは、ダメッ……」最も気持ちいい箇所を突かれて、思わず棗さんの身体にしがみつく。「聖良……愛してる……」棗さんと熱く唇を重ねながら、棗さんと身体を繋ぎ合わせていくだけで「あっ……っ、んんっ、はあっ」と声が漏れる。棗さんのその体温に溶かされながら、私は何度も体位を変えながら棗さんと身体を重ねていた。想いが通じ合うと、好きな人に抱かれるって、こんなにも幸せなんだな……。そう思うだけで、心がいっぱいになる。「ん、気持ちいい……棗さん」「俺もだ……気持ちいいよ、聖良」汗ばむその身体と身体がぶつかり合うこの厭らしい甘美な音と、甘く感じる声は夜中まで続いたーーー。✱ ✱ 
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第四十三話

【棗目線〜父親からの宣告〜】「聖良、行ってくる」「行ってらっしゃい。棗さん」いつものように、聖良に見送られる。「今日は仕事の打ち合わせで会食がある。夕飯は作らなくていい」「分かりました」「帰る時にまた連絡する。……もし出掛けるなら、ちゃんと戸締まり忘れないようにな?」聖良はクスクス笑いながら「言われなくても分かってますよ。大丈夫ですって」と言い返す。「そうか? まあ、気をつけてな。……行ってくる」「行ってらっしゃい」聖良が仕事に行くのを見送ってくれた後、俺は会社へと向かった。いつもなら自分の車で出勤するのだが、なぜか今日は家を出ると、親父の専属の運転手が迎えに来ていた。「棗様、おはようございます。 お迎えに上がりました、どうぞお乗りください」 「……笹山? なぜここに?」「社長からのご指示です。 さ、お乗りください棗様」「社長の……?」親父からの指示?一体どうしたんだろうか……。何かあったから迎えをよこしたとしか、思えないが……。親父の専属の運転手の笹山(ささやま)。運転手歴はもうかれこれ十年になる。 鷺ノ宮家の事情を詳しく知っている、唯一の人物だ。親父が昔雇った運転手だが、運転手としてはかなり有能で、親父が気に入るのも分かる。もともと笹山は、勤めていた会社が潰れてしまって途方に暮れて困っていた所を、親父が手を差し伸べてくれたのだと笹山は言っていた。そこで運転手をしないか?と持ち掛けて、笹山は今こうして鷺ノ宮家の運転手をしている。「……笹山、今日はなんでまた迎えなんだ。何かあったのか?」俺は笹山の背中を見つめながらそう言うと、笹山は静かに口を開いた。 「実は社長が、棗さんにお話したいことがあるそうなんです」 「話?それはなんだ?」「そこまでは、私にも。……ですがおそらく、今後の鷺ノ宮家の将来に関わることだと思います」「……鷺ノ宮家の将来?」 どういう意味だ?それは……。言っていることが何なのか分からないが、おそらくそれは鷺ノ宮家が大きく関わっていることなんだと推測はついた。その大きな何かが、何なのか……。まさか、鷺ノ宮家の跡取りの話か? 俺たちの間に早く子供を作れと急かしてくるということなのか……?頭の中はずっとそんなことばかり考えてしまって、会社に着くまでそれが何なのか気になって仕方なかっ
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第四十四話

「……ガン、そんなに悪いのか?」「膵臓ガンステージⅢだ。手術をしても、それでもガンは取り切れない可能性が高いと言われた」「そんな……。親父……なんでずっと、黙ってたんだよ?」ガンなら、体調不良や前兆だってあったはずだろ……?「俺もそこまで悪いとは思っていなかった。……想像以上に悪いみたいだな」親父がガン……。受け入れたくもない事実だ。そんなこと、信じられない。信じたくない……。 もし親父が死んだら、俺は二度と親父の顔を見れないのか……?せめて親父には、俺たちの子供の顔を見せてやりたい。 死ぬまでに一度くらい、待ち望んでいるかもしれない孫の顔を、見せてやりたい。「だから私は、社長の座から降りることを決めた。……次の社長は、棗。お前がやるんだ」「……でも、俺は……まだ社長になれるような器じゃない」「そんなことを言ってる時間はない。……私に残された残りの時間を、ムダにはしたくない」でも……いきなりそんなことを言われても……。「だから棗、お前が次の社長になるんだ。 鷺ノ宮グループを引っ張る、後継者になるんだ、お前が」「……親父」「俺はもう長くない。いつまで生きていられるかも分からない。 だけどお前ならやれると信じている。……お前は、私の自慢の息子だ。 鷺ノ宮家の長男として、跡継ぎとして、ちゃんとやれると信じている」親父の言葉が、想いが……胸に響く。「棗、これからはお前が、鷺ノ宮家を引っ張っていってくれ。……お前が社長となり、鷺ノ宮グループを守ってくれ」「……俺なんかで、いいのか?」正直に言うと、自信がない。ある訳もない。だけど親父の息子として、跡継ぎとして、俺は鷺ノ宮グループを引っ張る者として、親父の期待を裏切る訳にはいかない……。「お前は俺の息子だ。お前なら出来る。お前ならきっと……この会社を変えられると、私は信じている」こんなことを言われたら……もう、覚悟を決めるしかないな……。「……分かった。俺が、鷺ノ宮グループの社長になる。親父が誇りとプライドを持って守ってきたこの鷺ノ宮グループを、俺が引き継ぐよ。……親父の名に恥じないように、一生懸命頑張るから」 親父の想いを受け取った今、この決意は揺るがない。俺が守ってみせる。親父が守ってきたこの会社を、俺が守り抜いてみせるさ、必ず。「その意気だ。……期待しているぞ、棗」「
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第四十五話

「……お前がこんなに立派に育ってくれて、父さんは嬉しいよ。聖良さんという嫁さんまでもらうことができて、本当に幸せ者だな」「親父が聖良との結婚を認めてくれたから、俺は今こんなにも幸せなんだと思えるんだ。……ありがとう、親父」親父のことは、尊敬している。 愛人がいたことを除いては、だけど。「……そっか。お前が幸せなら、良かったよ」「俺はいつか、親父を超えてみせる。……親父が残してくれたこの会社を、今よりももっといいものにしてみせる。いつか親父が、鷺ノ宮グループを誇りに思えるように」「……もう十分、誇りだがな」「それにまだ、親父には孫の顔を見せてない。 かわいい孫の顔を、見たいだろ?」俺がそう話すと、親父は「ははは……。そうだな。お前たちの孫の顔、見たいな。 どんな子が生まれてくるのか、今からが楽しみだな」と笑っていた。「親父。俺はいつか、親父みたいにはなりたくないと言った。……だけど仕事の面では、親父をとても尊敬しているし、親父は俺の誇りだ。……いつまでも俺の、憧れだ」「……ありがとうな、棗」 親父のことを誇りに思っているのは、俺だけじゃない。聖良だって、そう思ってくれている。「それより親父。いつ、手術するんだ?」 「一週間後だ。しばらくはガンの治療で入院したいとならない。 いつまで入院するのかも、正直まだ分からない」「……そうか。手術、頑張れよ」どこまでガンが取りきれるかは、わからないそうだが、とりあえず手術がうまく行くことを祈るしかない。「ああ。 私の解任届はすでに受理された。 明後日にはもう、私は社長じゃなくなる」「……そうなのか」明後日で、親父は社長を退任するのか……あっと言う間だな。「これからは棗が、責任を追う番だぞ? 慣れないうちは大変だと思うし、疲れると思う。会社のことを考えるってすごく大変だ。……きっとこの先、苦しくもなるだろうしな」親父はそう話しながら俺の隣へと歩いてくる。「だけどそんな時は、いつもお前の隣にいる聖良さんを思い出すといい。聖良さんはきっと、お前の支えになってくれるはすだ。……何か迷うことがあったら、躓いて立ち止まることがあったら、聖良さんの顔を思い浮かべなさい。 そうすれば気持ちも軽くなるだろう」「……ああ、わかったよ」俺は社長のため、会社のため、跡を継いで社長になることを決めたーーー。
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第四十六話

聖良はすごく悲しそうな顔をしていた。「……そこで、親父が社長の座を退くことになった」「え……?」「こんな体で社長を続けるのは、かなり難しいからと。 いつまで入院することになるのか分からないからと、親父が言っていた」聖良は驚きながらも、「……そうですよね。そうなったら、仕事を続けるのは……ムリですよね」と呟く。「そこでだ」「……はい」「俺が親父の跡を引き継いで、社長になることになった」「……え? 棗さんが、社長に……?」聖良は驚いたような顔で俺を見つめる。「ああ。……俺が親父の跡を継いで、社長になると決めた」そんな俺の言葉に、聖良は「はい。 社長就任、おめでとうございます、棗さん」と優しく微笑む。そして聖良は、俺の手を握ってくれるから、俺も聖良の手を握り返した。 「新しい、門出ですね」「ありがとう、聖良。初めてのことばかりで不安もあるが、俺のことをこれからも支えてくれると嬉しい。……俺には今、聖良だけだ」「はい。 私に出来ることがあれば、何でも言ってください」「……ありがとう。とても心強いよ」本当に、聖良がいてくれて良かった。 妻という存在があるだけで、俺は頑張れる気がする。「私は……棗さんの妻として相応しいかどうかは分かりません。 だけど、棗さんの妻として一生懸命支えていくつもりです。 まあ、あまり役に立たないとは思いますけどね」聖良はそう言うと、ちょっとだけ笑った。「そんなことない。お前がそばにいてくれるだけで、安心するんだ」俺は聖良のことを愛している。こんなにも人を愛したことなんて、一度もなかった。だからこそ、今の俺には聖良だけが俺の支えなんだ。聖良がいるから、聖良のために頑張りたいと初めてそう思える。 今までよりもずっと、その気持ちが強い。「……はい。ありがとうございます」「社長になったらこれからきっと忙しくなると思うが、なるべく家で食事をとることを心がけるつもりだ。……聖良にももしかしたら、社長夫人として、色々と出てもらうこともあるだろう」「はい。 そうですよね」聖良もまだ、社長婦人としての違和感は取れないだろうけど、受け入れている感じはした。「早速なんだが……明後日に俺の社長就任の会見がある。それに同席してくれないか?」「同席……分かりました」 聖良は普通の一般人である以上、表舞台に立たせるわけ
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第四十七話

「本日より鷺ノ宮グループの新社長に就任致しました。鷺ノ宮棗です。……本日はお忙しい中、私たちのために、お集まりいただき誠にありがとうございます」それから二日後、棗さんの社長就任会見が鷺ノ宮グループが経営するビジネスホテルの会場を借りて、行われた。会見の様子はTVでも中継されることになり、複数の記者たちも出席していた。私は新社長、鷺ノ宮棗の妻として、その会見に出席することになった。今日から私は社長夫人ということもあり、少しの間、妻として棗さんのサポートをすることになった。 不安や緊張もあってドキドキするけど、しっかりサポート出来るように頑張っていきたい。棗さんだって不安や緊張があると思うから、そんな時に励ませるように、していきたい。 私が社長夫人だなんて、未だに信じられないけど。だけどだんだんとそれが現実味を増していく。 これから先の予定としては、TVや雑誌のインタビューなども入っていた。とりあえず……棗さんが無理をしないことを祈りたい。「社長、こっちもお願いします」「こちらにもお願いします」「はい」会見が終わると、記者たちからの質問タイムや写真撮影などが行われた。 棗さんは緊張しているのを見せることなく、淡々と社長としての初仕事をこなしていた。「会見は以上です。お疲れ様でした。本日はありがとうございました」会見が終わると、棗さんは会場から出て行く。私は棗さんの後を追いかけた。「棗さん」「お、聖良」「初仕事、お疲れ様でした」「ありがとう。……すごく緊張したよ。心臓が飛び出るかと思った」え、本当に?「そんな感じしませんでしたよ? いつも通りの棗さんでした」「そうか?すごく緊張していたんだが……」「それでも緊張を見せないのが、棗さんですよ。 お疲れ様でした」初仕事、きっと疲れただろうな……。「そういえば明日は、雑誌の取材だったな?」「はい。雑誌の取材が三件と、TVでの取材が一件入ってます。一日取材デイになりますね」   「ああ……緊張するが、頑張らないとな」棗さんは気合を入れていた。 「はい。頑張りましょう? 私がついていますから、何かあったらいつでも言ってください」「ありがとう聖良。お前がいてくれて助かってるよ」「いえ。これも妻である、私の仕事ですから。 夫を支えるのは、妻の仕事ですよ」私がそう話した
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第四十八話

「……では、先生。親父のことを、どうぞよろしくお願い致します」「はい。こちらでも、出来る限りのことはやらせていただきます。……何かありましたら、またいつでもご連絡ください」 「はい。ありがとうございます。……では、失礼致します」私たちは担当の先生に挨拶を済ませ、お父様のいる病室へと足を運んだ。 棗さんはお手洗いに行くと言っていたので、私は扉をノックして、先に中へと入った。「……お父様、失礼致します」「おお、聖良さんか。来てくれたのかい?」「はい。……お父様、先程無事に、就任会見の方が終了しました」お父様は「TVでの中継を見ていたよ。ご苦労だったね」と声を掛けてくれた。「いえ。……棗さんも、緊張していたようですが、なんとか無事に終われて良かったです」「棗のヤツ、ちゃんとやれていたか?」「はい、もちろんです。……社長として、これからきっと立派にやってくれると思いますよ」「そうか。これからも棗のこと、よろしく頼むよ」「はい、しっかりサポートさせていただきます。 お父様は、お体を治すことだけを考えてください。私たちにもし出来ることがあれば、何でも仰ってください。力になりますから」「……ありがとう、聖良さん。その気持ちだけで嬉しいよ」お父様は微笑みながらそう言うと、私の手を握って一言こう言った。「聖良さんが、鷺ノ宮家の嫁に来てくれて良かった」その言葉をもらうだけで、私は嬉しくて、鷺ノ宮家の嫁としてもっと頑張らないと、そんなふうにも思った。棗さんの妻になったことを、後悔しなくて良かったと思えるようになりたいとも思った。「……お父様、しっかり休んでください。 棗さんのことは、妻である私に任せてください。しっかりとサポート致します」「あんなバカ息子だが、自慢の息子だ。……よろしく頼むよ、聖良さん」 「はい。お任せください」お父様が今よりももっと安心できるように、私はただひたすら、棗さんのそばにいようと思った。どんな時も、一緒にいよう。辛いことも大変なことも、二人で乗り越えるんだ。 お父様が棗さんを社長にして良かったと、息子として誇りに思えるように。 私にはそれしか出来ることがないから……。「親父」「おお、棗。会見ご苦労だったな」  「ああ。 親父は、大丈夫なのか?」「なに、何てことない。……それより、お前もあまりムリする
last updateLast Updated : 2026-01-24
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第四十九話

「……親父、また来る。ちゃんと検査受けろよ?」「分かっている。お前も仕事サボるなよ」「そんなことする訳無いだろ? 俺は社長なんだ」「そうか。 頑張れよ、棗」「……ああ。親父もな」そんな会話をして、私たちは病室を出て家に帰った。新社長として、仕事に誠意を持っている棗さんは、とてもカッコイイと思った。 仕事にも真剣に向き合い、自分がこれからどうしていきたいのか、ちゃんと考えている。社長としての自覚を持てている証拠なんだなと、そんな姿を見て思った。そして私は、棗さんのサポートをする妻として、一生懸命頑張ろうと思った。「……あの、棗さん」 「ん?どうした聖良?」私には、一つ考えていることがあった。 それを棗さんに、話そうと思った。「私……これからも棗さんのそばで、棗さんのサポートしていきたいです」「もちろん、これからもよろしく頼むよ」そんな棗さんに、私は「なので……私を棗さんの秘書にしてもらえませんか?」とお願いした。 「……え、秘書?」 社長に就任した以上、これから棗さんが忙しくなるのは分かっている。だからこそ、私は棗さんのそばで一番に彼を支えていきたい。 どんな形であれ、彼のそばにいて夫のサポートするのが私の仕事なのなら、棗さんを仕事面でもサポートするのが妻としての役目だと思った。それならいっそ、彼の秘書になってはどうか? そう考えていたのだ。「聖良、何を言ってるんだ? 本気か?」私は棗さんにそう聞かれて「はい。本気です」と伝えた。棗さんは、私の唐突の言葉にかなり驚いているのようだった。 「私はあなたの妻です。妻は夫を支えるのが仕事です。 それは家庭でだけでなく、仕事面でも同じことではないかと思いました。……だったら私が、棗さんのそばで秘書として働けばいいのでは?そう思いました」私の話す言葉に、棗さんは黙って聞いてくれていた。「そうすればどんな時も、私たち夫婦は協力し合っていけます。……もしお互いに辛い時は、その辛さを半分にして分け合える。 そして嬉しい時はその嬉しさを分け合って、共有することが出来ると思います」棗さんを愛しているからこそ、私も棗さんの役に立ちたいのだ。 どんなに小さなことでも、二人で分け合って生きていきたいんだ。「……聖良、お前本気なんだな?」棗さんのその真剣な目に囚われそうになるけど、深く深
last updateLast Updated : 2026-01-25
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第五十話

「……聖良、俺からもお願いする。俺の専属秘書をやってくれるか?」私は笑顔で「はい。……私が、棗さんの専属秘書をやらせていただきます。しっかりと、サポートさせていただきます」と答えた。「では、よろしく頼む」「はい。任せてください」これから棗さんは、鷺ノ宮グループの社長として鷺ノ宮家を守る。そして社員を引っ張っていく大きな存在になるんだ。私が棗さんの妻として、よきパートナーとして、彼を支えていかないといけないなと思った。「でもまさか、聖良が秘書をしたいと言い出すとは思わなかったな」「棗さんが社長になるとわかった時点で、考えていたんです」棗さんは私を抱き寄せると、「さすが、元コンシェルジュだな。頼もしいよ」と言ってくれる。「棗さんの妻として、何か役に立ちたかったんです」「嬉しいよ、聖良」 棗さんは私の唇にそっとキスを落とす。 「やっぱり、お前は最高の女だ。 俺に相応しい、最高の妻だ」「ありがとう、棗さん」「聖良……抱きたい。抱いていいか」「……はい。抱いてください」棗さんと身体を重ねることは、私にとっては大事なことなんだ。✱ ✱ ✱「棗さん、おはようございます。……今日から棗さんの秘書として頑張りますので、何卒よろしくお願い致します」次の日から私は、棗さんの専属の秘書として、棗さんと共に一緒に仕事をすることになった。いつもは夫婦として一緒に過ごしてきたけど、これからは秘書としても彼のそばで仕事面でもサポートしていく立場になる。棗さんが仕事に集中出来るように、しっかりとサポートしていきたい。 秘書になるのは初めてで、緊張もするけど、私は私らしく頑張らないと。「おはよう、聖良。今日からよろしく頼む」「はい。仕事に出かける前に、まずは朝ご飯を食べましょう」「ああ」 朝ご飯を二人で食べながら、私は棗さんの予定を確認していた。 社長になってまだ数日しか経っていないのに、こんなにも予定がびっしりだ。た、大変すぎる。 棗さんがこんなにも忙しくなって大丈夫かは分からないけど、こんなにびっしりだと身体に負担が掛かりそうで、ちょっと心配になる。今日はこの後十一時からお父様の手術がある。……私たちは、お父様の手術が成功すると信じている。「聖良、今日の予定は?」 「はい。 今日はまず、午前十一時からお父様の手術があります」「そうだ
last updateLast Updated : 2026-01-26
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