✱ ✱ ✱ 「新郎、あなたはやめるときも、すこやかなるときも。新婦聖良(きよら)を愛しぬくことを誓いますか?」 「はい。誓います」「新婦、あなたはやめるときも、すこやかなるときも、新郎棗(なつめ)を愛し抜くことを誓いますか?」「……はい。誓います」「それでは、誓いのキスを」タキシード姿の彼が、目の前で私のヴェールを取り、顔を近付けていく。 そして私たちの家族、棗さんの家族、みんなの前で永遠の愛を誓った。だけどこの結婚式でお互いに誓ったこの愛は。……そこには愛なんて存在しない。 偽りだらけでウソばかりを重ねている。 そう、私たちの結婚は偽りなのだ。 ウソがにじみ出た、偽りの結婚。偽りの夫婦を、私たちは演じているのだ。 全然、幸せな結婚なんかではない。では、なぜこんなことになったのか……?それは遡ること三ヶ月前のことだ。偽り結婚をすることになった夫、棗(なつめ)との出会いは突然だった。私はもともと地元では有名なホテル【ホテル・トクラ】で、コンシェルジュとして働いていた。 働き始めてから二年弱だった。コンシェルジュとしての仕事の働き方が大好きで、この仕事ならずっと働いていられるかもしれないと、そう思っていた矢先のことだった。「ねぇ!聖良(きよら!)」 同期である村岡(むらおか)静音(しずね)が突然大声を出して私の所に駆け寄ってきた。 「静音? どうしたの?」「ねぇ、大変だよ!!」 「えっ、何が大変なの?」 「う、うちのホテルが……。うちのホテルが、あの鷺ノ宮(さぎのみや)グループに、買収されるんだって……!」……え? え……? う、ウソ……!?「ええ!? それ本当なの……!?」「間違いないよ!さっき鷺ノ宮(さぎのみや)グループの社長が来て、そう話してたんだからっ!」えっ、ウソでしょ……。買収って……。「えっ、じゃあ、私たちは……どうなるの?」「それが……」次の瞬間に出た静音(しずね)の言葉は、あまりにも衝撃的で……。「私たち、このホテル解雇されるんだって……。次の鷺ノ宮グループからコンシェルジュを引っ張ってくるらしいの。……私たちは、要らないってことみたい」「そんな……そんなのひどくない?」私たちは、このホテルから追い出されることがそれと同時に決まった。咄嗟に言い渡された解雇。 そんなの信じられ
Terakhir Diperbarui : 2025-06-30 Baca selengkapnya