清霜もそれに続いた。「もし手が回らなくなったら、いつでも連絡して。私も手伝いに来るから」美穂は笑ってうなずき、持参した資料を取りに向き直った。そのとき、視界の端に例の若い研究員の姿が入る。彼は頭を下げたまま、真剣な様子でデータ整理を続けていた。特に不自然な点は見当たらず、美穂は深く気に留めることなく、再び優馬、清霜とともに今後の研究計画について話し合った。三人とも気づいていなかった。研究員の白衣のポケットに入ったスマートフォンの画面が、一瞬だけ静かに点灯し、すぐに消えたことに。議論を終えたあと、美穂はSRのオフィスへ戻った。席に着いた途端、スマートフォンが振動する。柚月からのビデオ通話だった。姿勢を軽く整え、通話をタップする。画面にはすぐに柚月の端正で冷ややかな顔が映し出された。どうやら向こうは、こんなに早くつながるとは思っていなかったらしく、まだ別の作業に集中している様子だった。十数秒ほどして、ようやく美穂に気づく。柚月はわずかに目を見開き、それから口を開いた。「峯兄さん、もう港市に着いたわ」美穂は小さくうなずく。「彼は昨日、当時の事故を担当した警察署の交通課に行って、原本の記録を閲覧しようとしたみたいだけど、時間が経ちすぎていることと、資料が非公開扱いになっていることを理由に断られたそうよ」柚月は唇を引き結ぶ。「おそらく静雄が先に手を回していたんでしょうね」美穂は眉をわずかに寄せた。「別の方法は試さなかった?例えば当時の担当警察官に直接当たるとか」「当たったわ。でもほとんどが異動していて、連絡がついた一人も、細かいことは覚えていないと言っていたそうよ」柚月は続けた。「峯兄さんは、事故現場の近所を回って聞き込みしてみるつもりみたい。何か手がかりが残っているかもしれないって」美穂は数秒黙り込んだ。視線がデスク上に表示されたSR-03ロボットの実写写真をかすめる。声の調子が少し柔らぐ。「ごめん、連休は港市に戻れそうにないわ。発表会が連休最終日の前日にあるし、キシンプロジェクトも今が山場なの。どうしても手が離せない」本来なら、今年は一緒に帰省する約束だった。柚月は眉を軽く上げ、口元に淡い笑みを浮かべた。「構わないわ。花火なんて毎年上がるものだし。美穂が落ち着いたら、一緒にヴェリシア湾へ見に行きま
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