左右に車が並び、曲がる余地はない。雪の夜の高架道路はさらに滑りやすく、いったん追いつかれれば、回避する空間すら残されていない。背後の追っ手はますます距離を詰め、ヘッドライトの光がほとんど白いセダンの後部を包み込みそうになっている。そのとき、バックミラーに再び黒い影が映り込んだ。あのマイバッハだ。いつの間にか足止めを振り切ったらしく、猛スピードで追いついてくる。雪の路面を滑るように縫って走り、ほどなく後方の黒いセダンと並走した。マイバッハの窓がわずかに下がり、車内から骨ばった指が突き出された。指先に挟まれていた黒い物体が、正確に隣の黒いセダンへと放り込まれた。パン、と鈍い破裂音。黒いセダンの後輪が突然バーストし、車体はたちまち制御を失って雪の路面でスピンしながら路肩へ滑り込み、ガードレールに激突して黒煙を上げた。もう一台の黒いセダンはそれを見て加速し、追い越そうとする。だがマイバッハが車体を大きく横に振り、進路を塞いだ。二台のボディが擦れ合い、耳障りな金属の軋む音が響く。美穂はその隙にアクセルを踏み込み、高架道路の入口へと突き進んだ。雪片が激しくフロントガラスを打ちつけ、ワイパーが忙しなく往復しながら、かろうじて視界を切り開いていく。白いセダンが高架道路へ上がった瞬間、美穂は反射的にバックミラーへ目をやった。そこには、黒いマイバッハがぴたりと後方につき、最後の追っ手の車を高架道路入口の外へ遠ざけている姿が映っていた。高架道路の上には人影ひとつなく、雪が空一面に舞っている。前を走る白いセダン、後ろに続く黒いマイバッハ。二台のヘッドライトが重なり合い、暗闇を貫く長い光の帯を二筋描き出していた。まるで闇を越えて結び合わされた絆のように。ハンドルを握る美穂の手から、ようやく少しだけ力が抜けた。胸の鼓動はなお激しい。だが、その理由はもはや恐怖ではなかった。高架道路の出口に差しかかると、美穂は修一から渡された住所に従って進路を変えた。マイバッハは出口の脇でゆっくりと停車し、ライトを灯したまま、彼女が去るのを見送っていた。美穂は唇を引き結び、結局車を止めることはできなかった。ただ軽くクラクションを鳴らし、言葉なき感謝の代わりとした。黒いマイバッハは次第に小さな点となり、やがて雪の帳の向こうに消え
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