「……最初から秦美羽がおかしいって気づいてたんでしょう?」美穂は突然そう問いかけた。「最初から、ずっと」電話の向こうで、呼吸がわずかに途切れた。しばらくしてから、和彦が小さく「……ああ」と答える。「じゃあ、どうして教えてくれなかったの?」美穂の声には、かすかな拗ねた響きと、抑えきれない苛立ちが混じっていた。「私、彼女に殺されかけたのよ。それでも、何も言わずに見ているだけだったの?」「ボディガードはつけていた」和彦の声には、普段は見せない微かな動揺がにじんでいた。「港市のときも、周防芽衣の人間が近くにいた。ただ……間に合わなかった」「じゃあ今回は?」美穂は彼の言葉を遮る。「陸川結愛が私に連絡してきたことも、陸川健一が薬を過剰摂取したことも、あなたの想定のうちだったの?最初から、こういう形で私をこの件に巻き込むつもりだと分かっていたんじゃないの?」和彦は答えなかった。ぽたり、と涙がこぼれた。美穂が怒っているのは、和彦が計算して動いていることではない。何も話してくれないことだった。すべてを一人で背負い込み、孤島のように周囲を遮断してしまう。自分には、説明の一言すらしてくれないかのように。「和彦……」鼻をすすり、声がかすかに震える。「私って、何もできないって思われてる?足手まといにしかならないって」「違う」すぐに返事が返ってきた。いつもより少し速い。「一度もそんなふうに思ったことはない」「じゃあ、どうして何も言ってくれないの?」美穂は言葉を重ねる。涙が次々とこぼれ落ちた。「こんなに長い付き合いだというのに……少しは私を信じてくれてもいいでしょう?」再び沈黙が落ちた。きっと今の彼は、椅子の背にもたれ、指先で眉間を押さえているのだろう。目の奥には、拭いきれない疲れが滲んでいるはずだ。「話せないこともある」長い時間を置いて、ようやく和彦が口を開いた。その声には、わずかな無力感が混じっていた。「関わっている人間が多すぎる。軽率なことはできない」「……私にも?」美穂が尋ねる。和彦は答えなかった。だが、その沈黙で十分だった。美穂は涙を拭い、深く息を吸った。「分かった。あなたはあなたの計画を続けて。私は邪魔しない」通話を切ろうとした、そのとき――「美穂」和彦が呼び止めた。「……なに?」「陸川深樹と
Read more