潮待ちの夜。港の灯は落とされ、かわりに家々の窓に小さな“星灯(ほしび)”が灯った。穴の開いた蓋から星の粒がこぼれ、路地に静かな天の川ができる。貝鈴は強くは鳴らさない——“寝息枠”に配慮した、静夜運用だ。「本日の当番、A帯は『灯・巡・歌』。B帯は『休・寝・見』。」ユスティアが短く割り振る。A帯は灯の見回り・巡回・静かな子守歌。B帯は休憩・寝息枠・星灯の見守り。クレインは夜食の屋台を静かに開く。「“星見おむすび”と“塩ミルク湯”。音は出さない。香りで合図。」リビアは公開机に『静夜告示』を貼った。「大声の合図は禁止。合図は旗と手、鈴は一音。——“笑い”は半拍だけ。」そんな静けさの中、桟橋に奇妙な包みが届く。薄い星見紙に白砂が塗られ、封はなし。ミナトが首をかしげる。「……星灯の“手紙”?」ライハルトが灯をかざす。「星灯を通すと読めるタイプだ。」星灯を通すと、紙の砂が微かに浮き、文字が現れた——『北東の端、星見台(ほしみだい)の灯が二つ沈む。九つの窓に星を。歌は“寄る星”。合図は『ホイップ』。——署名:星灯司(せいとうつかさ)見習い』「星見台?」エリシアが眉を上げる。リオーネが頷いた。「外礁の向こうにある古い台だ。星と風の角度を合わせる。沈んだ灯があるなら、船は迷う。」ユスティアが即断する。「“星灯網”を組む。九窓を港の高所と路地に配置、灯台と連結。歌は“寄る星”、基音はアゼル。」「反射布が要る。」クレインが静かに言う。そこへ、黒縁の旅人が反射布の束を抱えて現れた。
Terakhir Diperbarui : 2025-08-28 Baca selengkapnya