Semua Bab 逆ハーレム建国宣言！ ～恋したいから国を作りました～: Bab 81 - Bab 90

朝の校庭は、少しそわそわ。今日は“試しの日”。でも——重くしない。道は軽く。「やることは三つ！」ユスティアが指を三本。「一、教室と廊下に“軽い札（かるふだ）”＋開印（ひらしるし）。 　二、“試札（こころみふだ）”を公開で導入（問題と答えの“見える窓”）。 　三、“問い返し場（といがえしば）”を作る（質問・やり直し・撤回）。」『ホイップ！』◆◆◆校門に開印。三つ穴（公開・撤回・合意）。鍵糸（みんなで触れるひも）は外へ。廊下の角ごとに軽い札を一枚、教室の入口に影写灯（えいしゃとう）。ミナトが“学拍（がくびょう）”を鼻歌で敷き、ネフィラは“転ばない足—机版”。セリオは出入口の紐を公開撤回結びに直す。アゼルとシハールは“読む前の深呼吸”。黒板の横に、新しい板——試札。表：小さな四枠『見る/考える/返す/合う』。端に合図（ホイップ/パセリ/ヘルプ/セーフ）。裏：三つ穴（公開・撤回・合意）。「“返す”は答えを書くこと。」私は言う。「“撤回”はやり直し。いつでも押せる。」子どもが手を挙げる。「間違えたら？」「白砂に戻す。」私は白砂刷り板（しらすなすりいた）を示す。「——見える場所で。」父が腰台を「パタン」。「踊りは軽く、腰は厚く。」半拍の笑い。肩の力が抜けた。そこへ、黒い紙。『静止義務』『一括退席』『成績登録』カイラムが“コツ”。空気が半拍ずれ、リビアが一瞬反転。セリオのほどき印。——塩。影写灯がやわらかく明滅し、試札の『撤回』窓がすっと開いた。◆◆◆一時間目、“読む

祭りの喧騒が落ち着き、広場には夜風とパンのいい匂いだけが残っていた。私はベンチに腰かけて、焼きたてのパンを頬張る。広場の端、ひときわ目立つ背中がひとつ。金髪碧眼、王都の紋章入りのコート——レオニスだ。「もう帰ったと思ってたけど……」パンを口に運びながら声をかける。レオニスはゆっくりと振り返った。夜の灯に青い瞳がきらりと光る。「エリシア。……少しだけ、話せるか？」その声は、昔より少しだけ大人びていた。「はいはい、恋活週間・夜の延長戦だね。」私はパンを二つに割って片方を差し出す。レオニスは最初、戸惑った顔をしたけれど、受け取って小さく笑った。「こうやってパンを一緒に食べるの、久しぶりだな。」「まあ、パンを投げつけたい気分の時期もあったけど？」「……本当に、ごめん。」しばらく、無言。パンの匂いと、広場の隅から聞こえるカイラムの声（遠くで何か見張っているらしい）。「王都で、いろいろあった。正直……命が危うい場面もあった。でも、俺の家は“表向き”平穏を装うのが得意なんだ。」「誰かに助けられた？」「うん。母上と、父の古い友人。それと——エリシアのお父様。」「……うちのパパ、意外と手広い。」レオニスがパンをもぐもぐ。「本当は、ずっと謝りたかった。エリシア、俺……当時は子どもすぎて、ちゃんと自分の気持ちを伝えられなかった。」「知ってる。お互い様。あの頃、私もただ流されてただけ。」「俺は、本当に……好きだった。今も、時々夢に見る。」一瞬だけ、沈黙。遠くでクレインが夜食の仕込みをしている。小さな鍋がカタカタと音を立てる。「でも、もう遅いよね。」「遅い。私はもう、前

春の風が町を巡る。洗い立ての旗は、屋根と屋根のあいだで小さく拍手するみたいに鳴り、花屋の棚ではチューリップが背伸びをする。パン屋の煙突は、粉糖みたいな白い煙をいっすん、いっすん空に重ねていく。どうも、エリシアです。恋活週間の熱気もひと段落。グランフォードの町は、ほわほわと新しい季節の準備に追われていた。胸の中で、私の“主催帳”だけがまだ熱をもっている。「主催の余韻は？」カイラムが、日なたの猫くらい気怠い声でたずねてくる。「みんなの恋愛成績表をつけるのが忙しくて、それどころじゃない！」私が言うと、リビアがすかさず羽をばたつかせる。「成績は非公開で。匿名希望、多数。」父はパン屋の窓際で今日も“腰台”の点検中。四角い木台にどっかり腰を乗せ、背をのばしてご満悦だ。「踊りは軽く、腰は厚く。」——いつもの標語。店先の黒板にも丸文字で書いてある。母は新しいエプロンをきゅっと結び、笑っている。「あんまり厚くすると、お客さんの腰が落ちるでしょ」父はむむ、と顎をさすり、「落ちるのは士気、腰は落とさない。」とキメ顔。はいはい、今日も元気。——午前、港。ミナトとネフィラは、海沿いの“軽い道”に新しい旗を立てていた。軽い道は春の間だけ、海霧を避けるようにふわっと浮かぶ舗装路だ。足をおろすと、靴底が少し押し返される。「港に春一番が来たよ」ミナトが教える。髪が風にほどけて、目が少しだけわくわくしている。ネフィラは髪飾りの貝に触れながら「今年も魚がたくさんとれるといいな」と呟く。「小さいのは逃がす。大きいのは感謝。中くらいは相談。」——彼女の“漁の三箇条”も板についてきた。クレインは港の休憩所で「止まって食べる春パン」を配る。ふんわり、ほんのり桜色。表面に塩の結晶が小さな星みたいにきらめく。ひと口で、塩と甘さがご機嫌に握手する。「立って食べると春が逃げるから」なんて、クレインはまじめな顔をし

どうも、エリシアです。今日はグランフォードで一番にぎやかな日——“帰還祭”！外に出ていた人や旅に出ていた人が戻ってきて、町全体で「おかえり！」を言うお祭りです。広場は花で飾られ、パン屋台がずらり。父は腰台の上で「腰は船底。抜いたら沈む！」と声を張り上げ、母は「はいはい、はいはい」と人の波をさばいている。クレインは「止まって食べる帰還パン」を新作として並べ、リビアは空から旗を振り、子どもたちが「ホイップ！」「パセリ！」と叫び回る。もう、にぎやかなんてもんじゃない。——そんな中。「ただいまー！」ミナトとネフィラが港から戻ってきた。髪に潮風をまとい、土産の貝殻を子どもたちに配る。「帰還パン！帰還パン！」子どもたちの掛け声に、クレインの屋台が一瞬で空っぽになる。……人気、すごいな。その時だ。人混みの中で、黒い外套をまとった人物が立ち止まった。ヴァルターがすぐに反応して、鋭い声を放つ。「……“囁き”だ！」耳を澄ますと、人々の間に奇妙なざわめきが広がっていた。「契約を……」「力を……」「従えば救われる……」それはまるで、どこからともなく流れる呪文のよう。カイラムが前に出る。「黒い契約……もう潜り込んでいるのか！」リビアが羽を広げ、空を旋回。「声の源を探せ！」私は一歩前に出て、深呼吸。「……みんな、落ち着いて！パンを食べれば平気！」子どもたちが一斉にパンをかじる。すると確かに、ざわめきが弱まった。「なるほど、“囁き”は心の隙間に入り込む。パンで満たせば隙間はできない……！」ユスティア

どうも、エリシアです。黒い契約の笛吹きを倒した数日後。町はすっかり落ち着いて、帰還祭の余韻でまだ浮かれてる……はずだったんだけど。「エリシア様、急報です！」ユスティアが走ってきた。息を切らして手にしていたのは王都の封蝋で閉じられた書簡。「王都……？」「はい。今朝、王都で“黒い囁き”による混乱が発生しました」私は思わずパンを落としそうになった。「ちょっと！王都でも聞こえるの！？」「ええ。被害は小規模ですが、民衆が一時的に我を失い、広場で暴動寸前に……」カイラムが険しい表情で腕を組む。「やはり……あれは囁きの“試し撃ち”に過ぎなかったか」「本体が動き始めたということだな」リビアが羽を広げる。父は腰台に腰を下ろしながら、「腰は船底。沈む前に補強せねばならん」と真顔。母は「はいはい、まずは食べてから」とパンを配り始めた。……うちの家族は変わらない。——午後。王都から来た使者の話を聞くことになった。馬車から降り立ったのは、淡い紫の外套を纏った騎士だった。「お初にお目にかかります。私は王都直属の調査隊、セリオと申します」彼は礼儀正しく頭を下げ、真剣な眼差しで告げた。「王都は“影の契約者”に狙われています。あの笛吹きは前哨にすぎません。本体は……王都の中枢に潜んでいる可能性が高いのです」ざわつく一同。「つまり、内部に裏切り者が？」「はい。王族、あるいは高位貴族の中に……」エリシア＝私の心臓がどきりと跳ねた。「……レオニスは大丈夫なの？」「第一王子殿下は健在です。むしろ“囁き”の被害を防ぐため、民の前に立たれました」