背中に羽のついたウサギのキャラが真ん中に配された、可愛らしい黒い門をくぐる。 数メートルほどフレンチ風の古めかしい石畳が敷き詰められたアプローチを進んで、赤を基調としたアーチ状の屋根を仰ぎ見ながら建物へ向かう。 辿り着いた先は天使の羽がついたウサギをマスコットキャラにしていることで有名な、お菓子屋さんが母体の高級ホテル。 入り口ドアにも件のウサギキャラが描かれていて、本当に可愛いなと思っていたら、建物の中はまるでヨーロッパの町並みみたいな異国情緒あふれる空間が広がっていた。 ホテル内に入ると、足元も今までの石畳とは様相を一変。 床は光を跳ね返さんばかりにツルツルに磨き上げられた、大理石や御影石の色鮮やかなモザイクタイルに様変わりしていた。 壁面は西洋漆喰と、レンガ調のタイルがたくみに組み合わせていて、そこにも所々にさり気なく羽付きウサギがあしらわれている。 なのに全然メルヘンチックではなくて、とても愛らしいのになぜか荘厳とした趣がある風情。 「わぁー」 思わずつぶやいて、奏芽さんの腕をギュッと握る。 奏芽さんがそんな私を優しく見つめてくださって……私、すごく幸せだなって思ったの。 1階部分はお菓子屋さんが経営しているホテルらしく、ケーキ屋さんとカフェが空間を二分するように配されていて、ケーキ屋さんのほうはガラス張りのショーケースに、色とりどりの美味しそうなケーキが並んでいた。 カフェとケーキ屋さんの間を通過するように、カラフルなモザイクタイルの上、レッドカーペットが入り口から真っ直ぐ突き当たり――フロントに向かって伸びている。 それに導かれるように、奏芽さんとふたりチェックインを済ませた。 荷物を持ってくださったベルボーイさんの案内の元、エレベーターで最上階の一室へ向かう。
Terakhir Diperbarui : 2025-10-15 Baca selengkapnya