蒼空は皮肉を言っているわけではなく、本心から話していた。彼女がそうしたのは、まず第一に、自分のせいで学校や学校関係者が巻き込まれることを避けたかったからだ。自分が退学すれば、学校としても世間や保護者に対して説明がつくし、彼女の存在が学校の立場を難しくすることもない。ここで明確に関係を切っておけば、学校側も彼女の影響を受ける心配がなくなる。そして第二に、本当にしばらくこの場所から離れたかった。もうここで生活したくなかったし、嫌な人たちに会いたくなかったし、心が擦り減るような出来事にも関わりたくなかった。彼女には新しいスタートが必要だった。だからこそ、首都で暮らすことを決めた。貯金は十分にあった。文香と小春、それから小春の祖母を連れて首都で暮らしていけるだけの蓄えが。この決断は衝動的なようでいて、実はよく考えた末の結論だった。電話の向こうは長い沈黙のあと、ようやく声を絞り出した。「......どうしてこんなことを?高校の受験はどうするつもり?ただ少し頭を下げて謝るだけじゃないか。難しいことじゃないはず。社会に出ればすぐ分かるんだぞ、謝れるうちはまだ幸せなのだってな。先生の言うことを聞いて、素直に謝りなさい。そうすれば、すべて丸く収まる。君の成績なら、全国一位も夢じゃないんだぞ。それを全部捨てる気なのか?君はまだ若い。衝動的になるのは仕方ないけど、もう少し自分の将来を考えなさい。もうすぐ受験なのに、退学になったら一生後悔するかもしれないんだ」相手の先生は諭すように、真剣に言っていた。蒼空にも、それが本心からの心配であり、学校の立場だけを考えているわけではないとわかっていた。けれど、彼女の中ではもう決意が固まっていた。「これでいいです。しばらくしたら、学籍のことを改めて相談します」電話の向こうの声が低くなる。「関水、よく考えなさい。うちは全国でも有名な学校なんだ。もし退学したら、本当に後悔することになるんだぞ」「はい、それでも結構です」「......勝手にしなさい」そのまま電話は切られた。蒼空は通話履歴とメッセージの通知を開いた。小百合と風見先生からの着信が何度も続いており、電話に出なかった彼女にメッセージが山のように届いていた。【蒼空、正気なの?今すぐあれを削除しなさい!】
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